伊藤紀子、藤城浩子、高橋祐介、菅野道夫
理化学研究所 脳科学総合研究センター
itoh@brain.riken.go.jp

「コンピュータ・ユーザとサポーターの対話におけるジャンル構造の分析:対話型ヘルプシステム構築に向けて」

本発表では、コンピュータの操作に関する対話の分析結果を提示し、自然言語対話型ヘルプシステム構築への応用方法を考察する。
従来、アプリケーションソフトに付属しているマニュアルやヘルプの類は、アプリケーション制作者側から書かれたものであり、ユーザにとっては必ずしも分かりやすいものにはなっていないことが問題視されている。それに対して、カスタマーサポートセンターの電話口などにおける人間同士の質疑応答の場合には、適切なアドバイスを受けることが出来る割合が高い。これは、サポートセンターの人間が、電話をかけてきたユーザとのやりとりを通して、ユーザのコンピュータに関する知識の程度を推測し、やりとりが進むにつれてその判断を更新し、その判断から適切な言葉遣いを選んで、ユーザに説明することが出来るからである。
これは見方を変えると、ユーザの言語使用の中に、その人のコンピュータの習熟度を示すような言葉遣いが含まれていることを示唆しており、我々の目指すところは、ユーザの言語使用から、その人の習熟度を推定し、それに応じて適切な操作や説明を提供することにある。
この目的を達成するために、我々は、コンピュータ・ユーザ役とサポート役の2人による対話を収録し、選択体系機能言語学の枠組みを用いて分析を行った。
本発表では、サポート役の発話に焦点を当てる。特に、操作方法を説明する際のジャンル構造とコンピュータ用語の代替として使用される日常的な言葉を調べた。例えば、初心者ユーザに向けて説明する時には、質問に直接答える前に、画面やキーボード上のどの部分に着目すればよいのかを日常的な語彙を使って示したり、画面上にあるアイコンやメニューの名前や機能を説明したり、今までにどのような操作を行ったかを質問する、などの段階を添える場合が多くみられた。
Fujishiro et al (2001)で提示されたジャンル構造を、質問の内容別にさらに綿密に記述することにより、対話システムのテキスト生成に利用できるようなものを提案する。

参考文献

Fujishiro, Hiroko, Noriko Ito, Yusuke Takahashi, and Michio Sugeno. 2001. How difference in mode influences conversations in Japanese: toward everyday language computing. Paper presented at ISFC 2001, Carleton University, Ottawa, Canada.