こころとからだ
「野口整体にいってみた」
第3回:初体験
当日はいつものごとく寝不足で、
腰はもう痛くないけれども肩が少々凝り気味の状態でした。
でも気分は悪くなく、なにより初めての体験を前にして張りきっています。
先生はほとんど白髪なのにお顔はつやつや若々しく、
なんだか年齢不祥の方でした。
余分なお肉がついていないような身体とキビキビした動作で、
声だけの印象よりもさらにさっぱりしている感じです。
広さ20余帖ほどの和室に先生を含めて6人。
まず先生のお話しを聞くのにみなさん正座なさるので、
ちょっと真面目に背筋を正します。
野口整体の成り立ちやらいろいろ説明を聞いて、
ともかく「活元運動」というものが大事らしいのが解ってきました。
それは例えば寝返りや欠伸やしゃっくりのように、
からだが求めている自発的な動きとでも言うのでしょうか。
「ここではよだれを垂らしてもおならをしてもいいんですから」
なんて先生がおっしゃいます。
自分でコントロールできない動きという意味で、
そういうことも有りうるのかな??
いったいわたしはどんな風になっちゃうんでしょう。
初めてのわたしともうひとり方とで、
まず慣れている人たちの様子を見学します。
一連の呼吸法などのあとに「活元運動」は起こりました。
それは人によってさまざまで、大きく上半身で円を描くように動いている
人がいれば、小刻みに全身を震わせている人もいます。
それぞれに自分の中に浸っているようで、
同じ空間にいながらどこか別世界の人たちみたい。
なんだか取り残されてしまったような気分です。
動こうと意識せずにほんとうにこんな動きができるんでしょうか。
「今見たイメージにとらわれずにいっしょにやってみましょう。
活元運動はなかなか起こらない人もいますから。」と言われ、
次はいよいよ体験に入ります。
まず正座をし、みぞおちに両手の指先をあてて息を吸い、
ゆっくり吐きながら上半身を前に倒して行きます。
息を吐ききったらそのまま力を抜いてちょっと間をおき、
また上半身を起こして同じ動作を繰り返します。
みぞおちなんて普段は触ったりする機会がありません。
でもやってみると、最初は硬かったお肉の壁がだんだんやわやわに
なって行くような感触です。
そして息を吐ききって脱力したときのホッとする感じ。
自分がひとつのカタマリになって動いているような心地よさもあります。
次に正座のまま上半身を捻ります。
首もいっしょに斜め後方を見るように、背筋を伸ばして一瞬緊張させ
もとの正面に戻ってリラックス。
呼吸をどうするのかの指示があったかどうか忘れてしまいましたが、
息を吸いながら捻り、緊張させるところで息をため、
なおったところで吐く、のが動きとともに自然に出てきます。
肩が凝り気味だったせいか、少し捻るときに抵抗がありましたが
痛いというほどではありません。
それよりも背中が伸びるってなんて心地よいんでしょう。
縮こまっていた身体がほぐれてだんだん暖かくなって行きます。
たったこれだけの動きなのに、背中に汗をかいてきました。
それで思ったのは、たぶん普段は何もしていない時でも、
正面を向いて脱力した時ほどはリラックスできてないなあ、ってこと。
寒くなってきたせいもあるのか、常に少し肩に力が入っているようです。
そして最後は、親指を握るようにこぶしをつくり両腕を上げ、
息を吐きながら背中に力を入れるようにして腕を肩のあたりまで
下げてきます。ぐっと力を溜めて脱力して終わり。
これを3度やったあとは、手を上向きに足の上に置いて
眼をつむったままひたすらポカーンとしていればよいらしい。
「なにか頭に浮かんできても追わずに流して下さい」と先生はおっしゃいます。
瞑想にもそういう方法と、逆にストーリー性のあるイメージを辿っていく
方法とがあるけれど、実はどちらも難しかったりするのです。
わたしは早くも、さっきの光景を思い浮かべていました。
周囲の畳が擦れるような音から察するに、たぶんみんなは
すでに「活元運動」がそれぞれに出ているのでしょう。
なんだか見たものが正解みたいになって頭にあるようで、
「わたしの動き」は一体どこに??
自分の自然の呼吸に集中してみます。
さっき捻ったりした一連の動きがとても気持ち良く、
身体はとてもリラックスしているのが分かります。
その中で心臓だけが一生懸命働いているみたいに、
どくんどくんがどんどん大きくなってきます。
それを感じるに任せていると、鼓動といっしょに次第に
胸全体が振り子のように脈打ってきたのでした。
本当に徐々にですが、胸から肩へ、そして上半身全体へと
振り子の動きが広がります。
「座禅のときにこうやって揺れちゃって、ばしっとやられたんだった」
なあんて考えていると、ふいに背中に手を当てられました。
かるーく添えられているだけのような両のてのひらです。
それなのになんだか前に押されているみたい。
そしてとても暖かいのです。
振り子の動きがもっと大きくなります。
わたしがそう動きたがっているのでしょうか、
それともこれは添えられた手の指示なのでしょうか。
「安心して動いてもいいんだよ」って言われているみたいです。
このままずうっと委ねてしまいたい。
もっともっとその手の暖かさを感じていたい。
手がなくなっても動きは続きます。
前後に、そしてだんだん楕円を描くように。
どこへ行くのか判らないけれど、
もう自分の意思で急に止めてしまう方が不自然です。
どんどん動きが大きくなって、どれぐらいそうしていたでしょうか。
床に頭がついたのをきっかけに、最後はそのまま転がっていました。
そして、ずうっとじっとしていたのでした。
膝を曲げて胎児のように。
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番外編:野口整体ってなにさ?
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