No.019 ミョウガの花

ミョウガ畑 2001 8/29
―冷奴が並ぶ夕餉の食卓にて―
| 夫 | 「へえ、冷奴かぁ。冷奴の季節もあと少しだなァ。」 |
| 妻 | 「うん、そう思って。」 |
| 夫 | 「今の季節なら、あれが合うんだよなァ。」 |
| 妻 | 「あれ?」 |
| 夫 | 「えーっとね、うーん・・・・。ほら、あの、ほれ、その・・・なんだ・・・。」 |
| 妻 | 「ミョウガ?」 |
| 夫 | 「おーッ!! そうそう。ミョウガ、ミョウガ。 でも、よく分かったねー。」 |
| 妻 | 「私、ミョウガ、あんまり好きじゃないから。」 |
| 夫 | 「???」 |
ミョウガを食べると物忘れするようになるといいますね。
はてさて、この夫婦、夫の『あれ』の原因はミョウガでしょうか? それとも、いつも言い当ててくれる奥さんの功でありましょうか?
ともあれ、ミョウガはミョウガの藪の中、分け入らなければ忘れ去られてしまうような日影でひっそりと花を咲かせます。よーく見てみると、その体の芯に包みこんだ、澄んだ香りがそのまま立ち上ったかのような半透明な涼しげな花であります。
ひょっとしたら夏がこれほど暑いのは、ミョウガたちが涼しげな香気を一人占めしてしまうからなのかもしれません。
・・おっと、ミョウガのお話を忘れるところだった。(笑)
ミョウガは日本の在来種とも、中国から伝来したものが野生化したものであるともいわれていますが、原産地をたどると中国中部になるようです。そして、面白いことに、ミョウガはこれほど香味を持つにもかかわらず、日本でしか栽培されていないものなのだそうです。もっとも、魏志倭人伝によれば、<倭国にはショウガ、橘、サンショウ、ミョウガといったものもあるけれど、美味しいものだということを知らないようだ。>とありますから、卑弥呼の頃にはあまり食べられていなかったみたいです。その後日本ではミョウガは栽培されるようになり、今に至るのでありますが、中国では孔子の時代には栽培されていたものの、現代では栽培されていないようです。なんだか韓国の海苔、日本の唐辛子のようであります。
さて、一般にミョウガ(花ミョウガ、ミョウガの子)といわれるものは、開花する前の蕾を含んだ包(ほう)と言われるものです。そして、ミョウガの花はたった一日で終わってしまいます。花が開ききると包も開き、味も香りも落ちてしまいます。画像のミョウガは、今咲こうとしている花の姿なのであります。
さて、ここからは、『ミョウガの物忘れ』のお話です。
ミョウガには鈍根草(どんごんそう)という別名があります。ミョウガには迷惑そうな名前ですが、そういった事柄がいったいどんなところに由来するのか、食欲とともに興味をそそられました。
ミョウガは『茗荷』と書きます。
釈迦の十大弟子の一人に周利槃特(しゅりはんどく/チューダ パンタカ)という人がいました。この人、たいへん記憶力が悪く、自分の名前すら忘れてしまうのでありました。そこで釈迦が名前を書いた名札を、いつも背負って歩いていたそうです。この人が亡くなった後、墓に見知らぬ草が生えました。そこで、槃特が名前を背負って歩いていたことにちなんで、茗荷と名が付いたのだそうです。
ちなみにこの由来はwacanは知りませんでした。掲示板で何気なく茗荷の話をしていたときに、みゆきさんに教えていただいたというわけであります。忘れたのではなく、知らなかったのでありますから、この一件に間しては、『ミョウガのせいにはできんなー。』と、タメイキしきりのwacanであります。(泣)
それからもひとつ。東海道中膝栗毛の中にミョウガの物忘れの話があるなんて、レスしてしまったんですが、これがとんだ大ボケでありまして、古典落語の『茗荷屋』という噺でありました。客が財布を忘れていくようたくらんだ宿の主人が食事に茗荷を出すが、客は財布を忘れずに勘定を忘れて行く、というものでありました。 そして、こっちのwacanの間違いの方は、ミョウガのせいということで・・・・・なーんてことをしていると、物忘れだけ身について、槃特さんのように悟りを開くまでには至らないんでしょうねー。(笑)
そうそう、この槃特さん、あまりにも物を忘れすぎて修行が全然進まないので、『難しい経は憶えなくていいから、まずはこれから始めなさい。』と、お釈迦様からホウキを一本渡されて掃除にいそしんだのだそうです。そして、最後には、《智慧をもって煩悩を払うのは、掃除と同じである》との大悟に至ったのだそうです。一意専心、大悟に至るに賢愚の別なし・・・・でありますね。
ちなみに、wacanの部屋では掃除機にホコリが積もってます。(爆)
これは、wacanのばあさんから聞いた話ですが、『ミョウガの敵討ち』というのがあるそうです。親、つまりミョウガタケをとると、子であるミョウガが続々と敵討ちに出てくる、ということだそうです。毎年ミョウガタケはとられるというのに、毎年懲りずに敵討ちに出てくる・・・・。そんなところから、ミョウガは少々頭が悪い ⇒ ミョウガは忘れっぽい ⇒ ミョウガの物忘れ ・・・という具合になったとのことであります。
ミョウガタケは12〜6月にとれる若いミョウガの茎でありまして、旬は春。一方、そのすぐ後、6、7月には夏ミョウガ、8〜10月には秋ミョウガと続きます。つまり、ミョウガというのは、一年のうち2ヶ月しかお休みをとらない、とても力強い生命力を秘めた野菜なのであります。
また、ミョウガというものにはあんまり栄養がない。香りを楽しむだけのものである。従って、そんなに大量に食べるものではない・・・・という先人の教えが形を変えたものだという説もあります。 実際、ミョウガにはビタミンなどの栄養はあまりないそうです。
その他、たいへんなミョウガ好きの人がいて、自分で一人占めしたい、と思って流したデマであるというのもありました。また、料理中にミョウガをつまみ食いした子供を料理人が『ミョウガを食べると物忘れをするようになるぞぉ。』 と言ったところ、子供が『お腹が減ってるのを忘れるから、もっと食べようよ。』って答えた、という話もありました。
これだけ並べると、どうもミョウガのイメージがわるくなりそう。・・・ということで、最後にミョウガのいいところをご紹介します。
| ミョウガの薬効 | |
| 食欲増進、消化促進 | ミョウガ独特の香りの主成分であるシネオール、α-ピネンといった精油成分に芳香健胃薬の働きがあります。夏の食欲減退には、ちょうどいい薬味といえます。 |
| 風邪 | 熱冷ましの薬効が、風邪のひきはじめに特に効果があります。 |
| 肩こり、腰痛、 リウマチ、神経痛 |
入浴剤として使います。発汗、呼吸、血液循環を促す作用があるためです。細かく刻んで布袋に入れて使うと成分がよく出てくるので、より効果的です。 |
| 喉の痛み、口内炎 | 辛味成分に、これらの症状を緩和してくれる働きがあります。 |
おおっ!! なかなかミョウガもやるもんだなー・・・なーんて思っておりましたら、ミョウガはショウガ科の多年草で、ウコンとも親戚筋にあたるとのこと。ショウガ、ウコンといえば、古くから漢方の主要な生薬でありますから、なるほど、ミョウガも素質十分といったところであります。
ショウガとミョウガは呼び方がよく似ていますが、それもそのはず、昔、同じく地下茎植物でよく似ていたため、ミョウガは女香(めか)、ショウガは兄香(せか)と言って区別されたとのこと。これが訛って、今のミョウガとショウガになったと言われています。
『・・・というすごい薬効があるミョウガ・・・奥さん、ご存知でしたか?・・・今日はどちらから?・・・』
おぉっと、みのもんたみたいにテレホンカードを配りたくなってきたぞぉ。(笑)
Special Thanks
| 岡本様 | 魏志倭人伝に関する記述の部分で、日本では当初から食べられていた・・・とwacanが書いてあった誤りについてご指摘のメールをいただき、記事を訂正することができました。ありがとうございました。 |
| 参考までに魏志倭人伝の原文と訳文とを掲げておきます。 (原文) 出真珠青玉其山有丹其木有・・・・有薑橘椒壌荷不知以為滋味 (訳文) 倭の国では真珠、青玉が産出されます。山には丹(赤い土)があり、樹木は・・・・・そして、ショウガ、橘、山椒、ミョウガもありますが、これらを美味しく食べる方法は知らないようです。 |