髄膜炎

〜 発熱、頭痛、嘔吐に注意 〜



髄膜とは頭蓋骨と脳の間にあって脳を包み込み、いわば脳を保護するクッションのような役目をしている膜です。詳しく言えば髄膜は3枚の膜、すなわち、脳に近いほうから軟膜、クモ膜、硬膜からなっていて、この軟膜とクモ膜との間にクモ膜下腔というスペースがあり、脳脊髄液という栄養たっぷりの液体がたまっています。この髄膜に細菌やウイルスがつくと髄膜炎になります。髄膜についた細菌やウイルスは居心地のよい脳脊髄液の中で、あっという間に増えて、脳脊髄液は細菌やウイルス、それを退治しようと集まってきた白血球やそれらの出すたんぱく質でどろどろになります。髄膜は脳を被っている膜ですので、まさに脳炎と紙一重の状態になっています。

@髄膜炎の原因
髄膜炎は大きく分けて無菌性(ウイルス性)髄膜炎と化膿性(細菌性)髄膜炎に分けることができます。髄液を腰からぬいて培養し、原因の細菌が見つかると化膿性髄膜炎といい、細菌が見つからないと無菌性髄膜炎と呼んでいますが、無菌性髄膜炎のほとんどがウイルス性の髄膜炎と考えてよいでしょう。
【無菌性(ウイルス性)髄膜炎】
おたふくかぜウイルスによるものと、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなど一般に夏カゼを起こすウイルスが原因のことが多いです。髄液の中の原因ウイルスが何かを調べるためには時間がかかる特殊な検査が必要で、さらに治療にはほとんど影響しないため、一般には行なわれていません。おたふくかぜウイルスによるものは、おたふくかぜの経過中におこるため、容易にそれとわかります。おたふくかぜは流行性耳下腺炎とも呼ばれているように、両側または片側の耳の直下が腫れてきます。反復性耳下腺炎や化膿性耳下腺炎と紛らわしいことも稀にありますが、回りの流行状況や血液中の抗体検査で比較的容易に診断がつきます。熱や耳下腺の腫れ自体は一週間もすれば治まり、耳下腺炎自体はそんなにやっかいなものではないのですが、耳下腺の腫れがピークになるか、ひき始めたころに突然、頭痛と吐き気が出て髄膜炎を発症することが稀ではありません。
【化膿性(細菌性)髄膜炎】
ウイルス性髄膜炎に比べてずっと頻度は少ないです。新生児、特に母親から十分な抗体をもらわないうちに生まれた未熟児ではB群溶連菌、大腸菌が原因の髄膜炎にかかることがあります。乳幼児期にはインフルエンザ菌、肺炎球菌、髄膜炎菌などが原因のことが多いです。細菌の種類にかかわらず、ウイルス性髄膜炎と比べてずっと重症となり、治療も長びき、後遺症を残す率も圧倒的に高くなります。学童期になると化膿性髄膜炎にかかることは極めて稀となります。

Aどのようにして、髄膜炎になるのでしょう?
新生児の細菌性髄膜炎はお産の時に感染することが多いので例外ですが、それ以上の年齢では細菌やウイルスが鼻、のど、気管の粘膜などに感染して、まずカゼ症状を起こし、体力が弱っていたり、特殊な体質があるとそれらが血液の中に入り、やがて頭の中の髄膜に達します。中耳炎副鼻腔炎など脳に近いところの炎症から、直接頭の中に入っていくこともあると考えられています。

B髄膜炎はうつりますか?
いいえ、髄膜炎の人と接触しても髄膜炎になることは普通ありません。ただし、上で述べたように、髄膜炎を起こした細菌やウイルスが、他の人にカゼとしてうつることはあり得ます。

C髄膜炎の診断
発熱、頭痛、嘔吐が3大症状です。また、診察すると首が硬く曲げにくくなっていることがわかります。意識が低下したり、けいれんを起こしたりすると髄膜炎からさらに脳炎を起こしていることが強く疑われます。注意しないといけないのは、新生児が髄膜炎になった場合には典型的な発熱、嘔吐がなく、なんとなく元気がなかったり、お乳の飲みが悪かったり、逆に異常に興奮していたりということだけが症状のことがあります。ですから、新生児の髄膜炎は早期発見が難しく、手遅れになる場合もあります。大泉門という前頭部の膜が硬く張っているようであれば要注意です。髄膜炎の疑いがあると入院して髄液検査を行ないます。すなわち、腰から髄液をぬいて白血球の数を数えたり、髄液の中の糖や蛋白の濃度を測ることで髄膜炎の診断がつきます。さらに、髄液を数日〜数週間培養して細菌が生えてくるかどうかみて、細菌性かウイルス性かを判定します。例外的におたふくかぜの時は、髄膜炎を起こしていることが予想されても、その頭痛と嘔吐の程度が軽く、全身の状態がよければ、あえて髄液をとって調べることはせずに、そのまま安静にしてしばらく様子を見ていただくこともあります。なぜなら、髄膜炎の原因がはっきりしており、しかも治療法は安静以外にないからです。

D髄膜炎の治療
入院にて安静にし、ウイルス性髄膜炎の場合は嘔吐や頭痛で水分がとれない場合には点滴をします。細菌培養の結果が判明するまで抗生剤を使うこともあります。細菌性髄膜炎の場合は抗生剤の点滴を中心に治療します。

E髄膜炎後の注意
純粋な髄膜炎だけで終われば後遺症はほとんどないと考えられますが、軽くても脳炎になってしまうと後遺症を残す可能性が出てきます。脳と髄膜は接しているので、脳炎になっていたという危険性は常に考えておかなければなりません。ウイルス性髄膜炎の場合でもまれに、学習障害、てんかん、難聴などの後遺症を残す場合があります。細菌性の場合はこれらの率がより高くなります。外見上完全によくなった場合でも、定期的に脳波をとったり、発達に異常がないかどうか、注意してみていった方がよろしいでしょう。


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