血 便

〜 あわてないで、よく便を観察すること 〜



血便は派手な症状ですので、たいていの人は驚いて非常に心配し、病院にかけつけてきます。 しかし、腹痛がなく全身の状態がよければ、あまり心配いりません。症状が血便だけの場合、 大人では大腸癌などの悪性腫瘍の初期のことがありますが、こどもの場合、調べてみても原因がよくわ からず、知らないうちに止まることも多いのです。原因がわかるもので一番多いものは肛門裂(切れ痔)です。 血便が出た場合、それを持って来てくださるとよくわかります。便の中に赤い色のものがあり、血便のように見えても、検査して みると血でない場合もあります。また、時間がたつと血便の性質が変わりますので、出た時の状態も よく観察しておいてください。一口に血便といってもいろんなタイプがあります。大きな原則は、 口に近いところからの出血ほど黒っぽい血で、便の中にまんべんなく混じっている ことが多く、肛門に近いところからの出血ほど赤い血で、便と血が分かれていることが多いと いうことです。また、発熱、嘔吐、腹痛など血便以外の症状、こどもの年齢も原因となる病気を考えていく上で大変重要で す。

@見かけ上だけの血便 : 生まれたばかりの赤ちゃんの血便は、お産の時の血を飲みこんでいるだけのことがあります(仮性メレナ)。大量の鼻血を飲み込んだときも翌日に黒っぽい血便が出ます。血便とは通常、消化管からの出血のことですので、これらは厳密な意味では血便ではありません。

A赤ちゃんの心配のない血便 : 1歳以下の赤ちゃんのオムツの中に、細い糸くずのような血便が時々認められることがありますが、心配いりません。赤ちゃんの腸の粘膜はまだ軟らかいので、便が通る刺激や、初めて食べる食物に対するアレルギー反応によって、僅かに傷ついて出血するものと考えられます。

B新生児メレナ : 特に母乳栄養の赤ちゃんでは出血を止める作用のあるたんぱく質(凝固因子)を作るのに欠かせない ビタミンKが不足しやすいために腸から出血することがあります。生ま れた時と1ヶ月健診でビタミンK(ケーツーシロップ)を飲ませるのは、これを予防するためです。

C胃・十二指腸潰瘍 : 特徴的なものは食前の上腹部痛ですが、 乳幼児でははっきりしないこともあります。大量に出血した場合は、黒っぽい血便となりますが、多く は、目でみただけではわからず、潜血反応でやっとわかる程度の血便です。診断を確定するためには、子どもでも内視鏡検査が必要ですが、実際は行なうことが 難しいため、症状から潰瘍を疑って治療することもよくあります。最近、ヘリコバクター・ピロリという細 菌が胃に感染して、潰瘍を起こしていることが多いことがわかってきました。血液検査(ヘリコバクター・ピロリの特異的IgG抗体)や13C-尿素呼気試験(薬をのむ前後の吐いた息を特殊な器械で分析して比較する検査)で、この菌に感染していることがわかった場合、胃酸の分泌を抑える薬(タケプロン、オメプラールなど)と抗生剤(クラリス、パセトシンなど)の内服で治療します。

D腸重積 : 乳幼児に多く、何らかの原因で、腸が腸の中にまるで伸縮式の望遠鏡のようにじわじわ滑り込んでいく病気です。腸がじわじわと滑り込む時に激しい腹痛が周期的におそってくるため、時々顔色が悪くなりギャーと泣いたり、吐いてぐったりしたりしますが、腹痛がない時にはけろっとしています。 時間がたつとだんだん全身状態が悪くなってきます。浣腸をしてイチゴジャム状の 血便が出ればほぼ確実です。しかし、ごく初期の段階では、まだ血便を認めないことがあり、一回の浣腸で 血便が無いからといって否定はできません。超音波検査も診断に有用です。 通常、発症して24時間以内であれば、造影剤や空気を肛門 から入れることによって、手術せずに治せることが多いです。

Eメッケル憩室 : 小腸の末端近くに、生まれつき、袋のように突出した部分ができている人があります。時にここから出血したり、炎症をおこして痛んだりします。腸重積の血便とよく似ていた り、虫垂炎(もうちょう)のように痛んだりすることがあります。治療は手術になります。

F細菌性腸炎発熱腹痛を伴うことが多く、膿粘血便といって、悪 臭を伴うどろっとした下痢便に赤黒い血がまんべんなく混じっています。便を培 養して、サルモネラ、キャンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O-157など)、腸炎ビブリオ、 赤痢など、原因の細菌をはっきりさせ、抗生剤の内服や点滴注射で治療します。

G食物アレルギー : 乳児のミルクアレルギーは血便となることでよく知られていますが、その他の食物によるアレルギーでも、激しい腹痛と血便を生じることがあり ます。いつも特定の食物を食べると起る場合に疑います。

H血管性(アレルギー性)紫斑病 : 全身の細い血管が障害される病気で、下肢を中心に紫の出血斑が点在しているこ とで気がつきます。腸の壁の中の細い血管が障害されると、激しい腹痛と血便が出てきます。腸重積になることもあります。

I潰瘍性大腸炎 : ごく稀な病気で、大腸に原因不明の慢性的な潰瘍ができるために、細菌性腸炎と似た血便が出ます。抗生剤でなおらない、慢性的に血便が続くことで疑い、最終的に内視鏡で診断します。

J大腸ポリープ(若年性ポリープ) : ふつうの便に赤っぽい 血便が混じっています。大腸の内視鏡で診断でき、同時に内視鏡によって摘出できることもあります。

K大腸癌、直腸癌 : こどもでは、まず考えなくてもよいと思われますが、最終的には内視鏡による診断が必要です。

L 肛門裂(切れ痔)こどもの血便で、 一番多いのが肛門裂です。正常の便や固い便の表面に小量の真っ赤な血がついていたり、排便の 後、血が肛門からぽたぽたと垂れたり、お尻をふいた紙に血がついていたりします。時に大量に 出血して、驚くこともあります。腹痛はなく、排便時にお尻(肛門)の痛みを訴えます。野菜と 水分を多くとり、便をやわらかくすると軽快してきます。どうしても便が軟らかくならない時は、下剤を使います。


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