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アクセス ひまわり 創作童話


作者/山本一恵さん

公務員。絵本などのお洒落で美しい本が好きで、創作童話は過去にいくつか手がけてきたが、
今回のコンテストの初めて応募、見事最高賞に。
福井市在住。


【コメント】
 fuを見て、早速夫と訪ねました。ふもとから見える大杉の姿は、街をしっかりと見守っている
ようでした。
便利さだけを求め、皆自分勝手になりがちな時代のなかで、人は自然に生かされ
ながら、かつ人とつながっていきているんだという大切なことを思い起こさせてくれました。

 
夫とともにストーリーの案を出し合いながらの帰り道。とても楽しい夏の思い出となりました。

 むかしむかし、峠のテッペンに、おチビの杉の木さんがおりました。そしてここには、もっとおチビの小人達が暮らしていました。

 小人達は、お日様の光のほほずりで目を覚まします。葉っぱや花達がよそってくれる朝露で喉を潤し、小鳥達と語らい、ちょっとおなかがすいたらリス達と木の実取りをしてすごします。そして、お月様に「今日も素敵な一日をありがとう」とおやすみの挨拶をし、深い眠りにつくのです。夜風がほのかに涼しくなると、杉の木さんは、そんな小人達を杉の葉っぱでそっと包み込んであげるのでした。
 あらからどれくらい年月が流れたのでしょうか。小人達は、新しい生活を求めて峠を下りていきました。草木を切り、田畑を耕し、好きな食べ物をたくさん作ることを覚えました。火を炊いて、暗い夜を明るくすることも、身体を暖めることも覚えました。もっと豊かでもっと便
利な暮らしを手に入れることに

夢中な小人達には、あの峠を見上げる暇すらありません。もちろん、あの杉の木さんを思いだすことも…。一方、杉の木さんは、遠く離れた小人達のことを片時も忘れたことはありませんでした。一生懸命一生懸命背伸びをして、あの峠のテッペンから、そっと見つめていました。なんとか小人達に気付いてもらおうとずっと背伸びをしていたせいか、気が付けば、おチビの杉の木さんは、昔見上げていた周りの木達をずいぶん追い越して、この山一番の背高ノッポになっていました。
 冬がさよならしたある日、草木達は、小人達に新しい季節の訪れを伝えようと、春の花を咲かせました。「こんいちは」「ごきげんよう」といっぱいいっぱい咲きました。ところが小人達は「あーぁ、なんてことだ。僕達の大切な田畑に、役にたたない花が咲くなんてジャマなやつめ
」と微笑む花達を次から次へとひっこ抜いていきました。

 「キャー」「キャー」花達はビックリ。悲しくて悲しくて涙が止まりません。涙は、いつしか冷たい雨となり、あっという間に田畑一面を水浸しにしました。「あーぁ、なんてことだ。こんないっぱい雨が降るなんてジャマなやつめ」。
 小人達の一人よがりの態度に空は怒り、ますます雨を強め、大きなうなり声をあげて、今にも激しい雷光を落とそうとしています。
 もちろん、この様子を、あの杉の木さんは見ていました。とてもとっても、悲しい目をして…。変わってしまった小人達の心を悲しみ、目をそらそうとしたその時、杉の木の目に、必死に木の枝をだき抱え、その小さな身体で、一輪の白い花を守ろうとしている一人の小人の姿が飛び込んできました。「ゴゴゴゴゴッー、ドカーン、ピシャーン…」

 嵐の時は過ぎ、ようやく空は明るくなりました。小人達は恐る恐る顔をあげました。あんなに大切にしていた田畑は見る影もなく、小人達はその光景を嘆きました。
 そんな悲しい静けさの中、「守ってくれてありがとう」と小人達にむかって微笑む一輪の白い花がいました。
そしてその花は、遠くにむかってもう一度「ありがとう」と叫びました。その声の届く方向を見たとき、その先には、あの懐かしい峠のテッペンがありました。

 小人達は、一斉に峠に駈け上がりました。そこには、空に向ってパックリと幹が二つに割れた、大きな大きな一本の杉の木。そうです。激しい稲光が落ちた時、幹をぐーんと空に伸ばして、みんなを守ってくれたのは、あの杉の木さんだったのです。小人達は、傷つき、変わり果てた杉の木さんの身
体を、その小さな小さな手で
何度も何度もなでました。 「あっ」その瞬間、小人達のだれもが、むかし自分達を包み込んでくれた杉の木さんのあのやさしいぬくもりを思い出しました。そして、お日様やお月様、花や小鳥達そんなお山のみんなに支えられて生きてきた穏やかな営みを思い出しました。「山を下りた時、僕らはここに、大切なものをおき忘れてしまっていたんだね」。むかしと同じ微笑をやっととりもどした小人達を、「みんな一緒。私はいつもここにいるよ。」と杉の木さんは、やさしくやさしく抱きしめました。

 この峠のふもとでは、今も、穏やかな暮らしが営まれています。あたりを真っ白に覆っていた雪がとけた頃、あの時助けられたこぶしの木達が、真っ白な微笑の花をいっぱい咲かせ、この村の春の訪れを伝えてくれます。
 杉の木さんも400歳。もちろん、あの時の約束どおり、今も峠のテッペンから、みんなの暮らしをやさしく見守っています。さあ、あなたも杉の木さんに会いにきておくれ。あなたの大切なものが見つかるかもしれません…。  おしまい

平成15年11月号
ふくいの女性がつくる、生活応援マガジン 福井新聞社より

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