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<浜名湖花博(池田大作氏写真展)と憲法89条> 20050118
1月17日、一件の住民訴訟が提起された。県と浜松市の出資を受け、浜名湖花博の開催目的を達成するために設立された財団法人静岡国際園芸博覧会協会が、花博会場での開催を承諾した創価学会の池田大作名誉会長写真展に便宜を図ったことが、憲法89条に違反するかどうかが問題となっている事件である。
これに先立つ昨年(16年)12月、県監査委員が上記事件につき、憲法第89条違反にはあたらず、聖教新聞への広告掲載なども「公益上の必要性」のある補助事業であるとして住民監査請求を棄却したのを受けての訴訟提起である。
もっとも、県監査でも次の事実が確認され、公平性など適切さへの疑問の意見が一応付されてはいる。
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・にぎわい橋ギャラリーでの一般公募事業に13団体が参加しているが、協会が池田大作氏の写真展についてのみ、聖教新聞やポスター、チラシに案内を掲載した。
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・ポスター、チラシを創価学会員向けだけに作成配布した。
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しかし、結論として県監査委員は棄却したのである。その理由の要旨は、
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ア 創価学会の聖教新聞への広告掲載及び創価学会員向けポスター、チラシの作成は、大量誘客を目的とする団体セールスの一環で、協会が電通に委託した浜名湖花博広報宣伝実施業務の一つとして実施した広報宣伝活動であり、特定の宗教団体の便宜を図ったものではないので、この協会の事業に対して、県が補助金を交付することは地方自治法第232条の2にいう「公益上の必要性」を満たすものであることは明らか。
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イ 補助金にかかる手続きは、関係法令及び交付要綱等に基づき適正に処理されている。
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ウ 憲法第89条は、「公金」を宗教団体等に支出することを禁止しているが、「公金」とは、「国又は公共団体がその目的を達成するための作用を行うに当たって用いることのできる金銭を言う。」と解釈されている。しかし、協会は民法第34条に基づく公益法人であり、協会の事業に係る支出は憲法第89条にいう「公金」ではないので請求人が主張する憲法第89条違反には理由がない。
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という3つの判断によるということである。
これを、さらに簡潔に要約すれば、
ア 大量誘客という公益目的のための補助金交付で、結果的に特定の宗教団体の便宜となろうがなるまいが地方自治法第232条の2に違反ではない。
イ 事務手続きは法令に違反してない。
ウ 「国」でも「地方公共団体」でもない協会が支出したお金は「公金」ではないので憲法違反ではない。
ということになろうが、かなり粗い論旨である。
まず、県が違反していないとする地方自治法第232条の2であるが、
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第232条の2(寄附又は補助)
普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。
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というものである。
これを形式的に解釈すれば、公益上の必要、すなわち本事例でいえば「大量誘客」の必要があったことは事実であり、一見、法令に沿っているかのようである。
しかし、次の判例を見ていただきたい。
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判例要旨(三省堂、模範六法)
町が県に対してミニパトカーを寄付することは、法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について地方公共団体相互の間における経費の負担区分を乱すことにあたり、地方財政法二八条の二に違反する。(最判平8・4・26判時1566-33)
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すなわち、正の公益性判断だけで適法とするのではなく、負の公益性も含め総合的に公益性を判断すべきということである。当たり前と言えばそのとおりであるが、監査委員による前記アの理由には「特定の宗教団体の便宜を図ったものではない」との目的・意図についての記述はあるが、現実に便宜となったのか否かの検討がなされた上での結論となっておらず、またこのことから、憲法判断を先に行った上での結論となるべきであり、杜撰な論旨と言うべきであろう。
すなわち、本事件において主要な論点というのは、ウの憲法問題であるということである。
憲法89条は、
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第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
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規定しており、前段は、信教の自由、政教分離を財政制度において補償しようとする趣旨であり基本的には憲法20条における解釈が妥当することになる。すなわち、たとえ公金であったとしても形式的なお金の流れ単体が問題となるわけではないのである。このことは、宗教法人の経営する私学法人への補助の例を見れば明らかである。
それでは、憲法20条はどうなっているかということであるが、
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第20条
信教の自由は、何人に対してもこれを保護する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
A 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
B 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教活動もしてはならない。
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と規定されており、
・写真展の開催その他広報等において特権的な取り扱いを受けたといえるのか
・当該写真展が宗教的活動といえるのか
が、本事案においては問題として検討されなければならないのである。(注:県は国ではないから違憲ではないなどと県監査委員のようなレベルの反論はしないように。)
筆者は実際に写真展も広告も見ておらず具体的な事実関係も把握していないため結論に至る考察ができないが、より具体的には、前段においては宗教団体とそれ以外との間で合理的理由もなく中立・公平性を害した取り扱いをしてはいないか、後段においては当該写真展が、行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助・助長・促進又は圧迫・干渉となるようなものではなかったかが問われることになろう。
県監査委員は違憲でない理由を、公金の解釈中の一文言を形式的に解釈して協会は地方公共団体ではなく主体が違うから公金ではないとしたのであるが、そのような単純な論旨で終わるべきものではないことは明らかである。
なぜなら、このように本質的な問題が問われているものについて協会が公共団体か否かを形式的に論じることは意味がないからである。問われるべきは実質的に「公金の解釈」で言うところの「国又は公共団体」に含まれるかを上記本質論とからめて検討しなければ答えは出ないのである。
今逮捕捜査中の元熱海土木事務所長による「振り込め汚職」事件においても、賄賂受け入れの口座名義が個人の口座かボランティア団体の口座かを形式的に捉えることなどナンセンスであることぐらいは理解できるであろう。迂回融資という言葉があるが、公社、財団、3セクを経由した迂回補助なら許されるのかということである。よくよくこの点について検討し答えを導き出すべきであったと思われる。
すなわち、県監査委員は、最終的な結論の如何にかかわらず、その論点について実質的にどうなのかについて検討しなければならないにもかかわらずそれを怠っており、極めて幼稚で杜撰な監査を行ったというべきであろう。一昨年の裏金事件の虚偽報告のときの代表監査委員は退いたものの、組織としてそのレベルは変わらないようである。また、独立した委員会と言う建前と現実の県追従の実姿がよくわかる一件である。
今後裁判所が本事件の実態をどのように捉え如何なる規範定立のもと結論を導くか、興味深く見守っていきたいものである。
なお最後に、この事件の舞台となった浜名湖花博(入場者545万人)の収支見込みを紹介しよう。(正式な収支は今年6月ごろの予定)
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項 目
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収 支
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収 入
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175億6百万円
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入場料収入
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97億53百万円
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場内営業収入
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12億64百万円
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駐車場収入
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9億1百万円
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協賛金収入
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11億33百万円
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補助金収入
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40億円
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その他収入
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45億4千万円
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支 出
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172億8千万円
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事業運営費
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112億8千万円
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会場整備費
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60億円
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差引収支
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2億26百万円
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※ 差引約2億円の黒字ということであるが、これはあくまで「協会」の収支であり、しかも淡路花博同様、県に寄付される予定のため最終の収支は0となる予定である。(ちなみに淡路花博は事業費182億円で入場者694万人、黒字分22億円を兵庫県に寄付した。)
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