雑 学

 2005.1.18UP    2005.2.26 更新

 

<浜名湖花博(池田大作氏写真展)と憲法89条> 20050118

 1月17日、一件の住民訴訟が提起された。県と浜松市の出資を受け、浜名湖花博の開催目的を達成するために設立された財団法人静岡国際園芸博覧会協会が、花博会場での開催を承諾した創価学会の池田大作名誉会長写真展に便宜を図ったことが、憲法89条に違反するかどうかが問題となっている事件である。

 これに先立つ昨年(16年)12月、県監査委員が上記事件につき、憲法第89条違反にはあたらず、聖教新聞への広告掲載なども「公益上の必要性」のある補助事業であるとして住民監査請求を棄却したのを受けての訴訟提起である。

 もっとも、県監査でも次の事実が確認され、公平性など適切さへの疑問の意見が一応付されてはいる。

・にぎわい橋ギャラリーでの一般公募事業に13団体が参加しているが、協会が池田大作氏の写真展についてのみ、聖教新聞やポスター、チラシに案内を掲載した。

・ポスター、チラシを創価学会員向けだけに作成配布した。


 しかし、結論として県監査委員は棄却したのである。その理由の要旨は、

ア 創価学会の聖教新聞への広告掲載及び創価学会員向けポスター、チラシの作成は、大量誘客を目的とする団体セールスの一環で、協会が電通に委託した浜名湖花博広報宣伝実施業務の一つとして実施した広報宣伝活動であり、特定の宗教団体の便宜を図ったものではないので、この協会の事業に対して、県が補助金を交付することは地方自治法第232条の2にいう「公益上の必要性」を満たすものであることは明らか。

イ 補助金にかかる手続きは、関係法令及び交付要綱等に基づき適正に処理されている。

ウ 憲法第89条は、「公金」を宗教団体等に支出することを禁止しているが、「公金」とは、「国又は公共団体がその目的を達成するための作用を行うに当たって用いることのできる金銭を言う。」と解釈されている。しかし、協会は民法第34条に基づく公益法人であり、協会の事業に係る支出は憲法第89条にいう「公金」ではないので請求人が主張する憲法第89条違反には理由がない。

 という3つの判断によるということである。

 これを、さらに簡潔に要約すれば、

ア 大量誘客という公益目的のための補助金交付で、結果的に特定の宗教団体の便宜となろうがなるまいが地方自治法第232条の2に違反ではない。

イ 事務手続きは法令に違反してない。

ウ 「国」でも「地方公共団体」でもない協会が支出したお金は「公金」ではないので憲法違反ではない。

 ということになろうが、かなり粗い論旨である。

 まず、県が違反していないとする地方自治法第232条の2であるが、

第232条の2(寄附又は補助)
 普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。

というものである。

 これを形式的に解釈すれば、公益上の必要、すなわち本事例でいえば「大量誘客」の必要があったことは事実であり、一見、法令に沿っているかのようである。
 しかし、次の判例を見ていただきたい。

判例要旨(三省堂、模範六法)
 町が県に対してミニパトカーを寄付することは、法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について地方公共団体相互の間における経費の負担区分を乱すことにあたり、地方財政法二八条の二に違反する。(最判平8・4・26判時1566-33)


 すなわち、正の公益性判断だけで適法とするのではなく、負の公益性も含め総合的に公益性を判断すべきということである。当たり前と言えばそのとおりであるが、監査委員による前記アの理由には「特定の宗教団体の便宜を図ったものではない」との目的・意図についての記述はあるが、現実に便宜となったのか否かの検討がなされた上での結論となっておらず、またこのことから、憲法判断を先に行った上での結論となるべきであり、杜撰な論旨と言うべきであろう。

 すなわち、本事件において主要な論点というのは、ウの憲法問題であるということである。

 憲法89条は、

第89条
 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

 規定しており、前段は、信教の自由、政教分離を財政制度において補償しようとする趣旨であり基本的には憲法20条における解釈が妥当することになる。すなわち、たとえ公金であったとしても形式的なお金の流れ単体が問題となるわけではないのである。このことは、宗教法人の経営する私学法人への補助の例を見れば明らかである。

 それでは、憲法20条はどうなっているかということであるが、

第20条
 信教の自由は、何人に対してもこれを保護する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
A 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
B 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教活動もしてはならない。

 と規定されており、

 ・写真展の開催その他広報等において特権的な取り扱いを受けたといえるのか

 ・当該写真展が宗教的活動といえるのか

 が、本事案においては問題として検討されなければならないのである。(注:県は国ではないから違憲ではないなどと県監査委員のようなレベルの反論はしないように。)

 筆者は実際に写真展も広告も見ておらず具体的な事実関係も把握していないため結論に至る考察ができないが、より具体的には、前段においては宗教団体とそれ以外との間で合理的理由もなく中立・公平性を害した取り扱いをしてはいないか、後段においては当該写真展が、行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助・助長・促進又は圧迫・干渉となるようなものではなかったかが問われることになろう。

 県監査委員は違憲でない理由を、公金の解釈中の一文言を形式的に解釈して協会は地方公共団体ではなく主体が違うから公金ではないとしたのであるが、そのような単純な論旨で終わるべきものではないことは明らかである。

 なぜなら、このように本質的な問題が問われているものについて協会が公共団体か否かを形式的に論じることは意味がないからである。問われるべきは実質的に「公金の解釈」で言うところの「国又は公共団体」に含まれるかを上記本質論とからめて検討しなければ答えは出ないのである。

 今逮捕捜査中の元熱海土木事務所長による「振り込め汚職」事件においても、賄賂受け入れの口座名義が個人の口座かボランティア団体の口座かを形式的に捉えることなどナンセンスであることぐらいは理解できるであろう。迂回融資という言葉があるが、公社、財団、3セクを経由した迂回補助なら許されるのかということである。よくよくこの点について検討し答えを導き出すべきであったと思われる。

 すなわち、県監査委員は、最終的な結論の如何にかかわらず、その論点について実質的にどうなのかについて検討しなければならないにもかかわらずそれを怠っており、極めて幼稚で杜撰な監査を行ったというべきであろう。一昨年の裏金事件の虚偽報告のときの代表監査委員は退いたものの、組織としてそのレベルは変わらないようである。また、独立した委員会と言う建前と現実の県追従の実姿がよくわかる一件である。
 今後裁判所が本事件の実態をどのように捉え如何なる規範定立のもと結論を導くか、興味深く見守っていきたいものである。

 なお最後に、この事件の舞台となった浜名湖花博(入場者545万人)の収支見込みを紹介しよう。(正式な収支は今年6月ごろの予定)

項  目

収  支

収 入

175億6百万円

 

入場料収入

97億53百万円

 

場内営業収入

12億64百万円

 

駐車場収入

9億1百万円

 

協賛金収入

11億33百万円

 

補助金収入

40億円

 

その他収入

45億4千万円

支 出

172億8千万円

 

事業運営費

112億8千万円

 

会場整備費

60億円

差引収支

2億26百万円

※ 差引約2億円の黒字ということであるが、これはあくまで「協会」の収支であり、しかも淡路花博同様、県に寄付される予定のため最終の収支は0となる予定である。(ちなみに淡路花博は事業費182億円で入場者694万人、黒字分22億円を兵庫県に寄付した。)

<「法人事業税の超過課税と充当事業」に見る地震対策への取組み姿勢> 20050226

 知事は戦略的に取り組む重点分野に今年から災害を加え「4Kプラス3S」の7分野とした。また、県は2005年2月21日、公共施設の耐震化計画を発表し、2005年度から2011年度の7年度をかけて耐震化が「やや劣る」「劣る」とされた多数の住民が利用する県の公共建築物856棟(県立学校、病院、警察署など)の耐震化を完了させるとした。なお、これにかかる予算は総額492億円と見込まれている。

 地震対策先進県と言われた静岡県でなぜいまさら、なぜ今ごろこのような基本的な対策をと、多くに人が疑問に感じることだろう。
 その答えの一象徴事象として、「法人事業税の超過課税と充当事業」を挙げたい。

 超過課税とは地方税法に定める標準税率を超えて賦課するものであり、目的税のように使途が限定されるものではない。他の都道府県では法人県民税に対して超過課税するものが主流であるが、静岡県では事業税の方だけに、一億円以上の資本金の法人などを対象に超過課税を行っている上に、目的を明確にして事業充当している。

 昭和54年、当時の山本敬三郎知事は切迫する東海地震に備えるため集中的な防災対策を行うことを訴え、世論喚起の戦略と有力者への直談判などにより念願の大震法成立をついに果たし、超過課税による災害対策推進を強力に推し進めようとした。しかし石川県政誕生(平成5年)の翌年度から、超過課税の充当事業は第二東名のアクセス道路などの公共事業に変わったのである。目的とした「学校や警察等防災拠点施設の耐震補強」も終わらないうちにである。
 このときに、本県では、明確な形で「地震対策」よりも「社会資本整備」に優先順位が移ったといえるのではないか。

 近年、政府は企業に対する課税において国際競争力の強化を大義として法人負担の軽減政策を取り続けており、企業部門の資金余剰は54兆円(2003年)を越える。一方、公的部門の資金不足は36兆円(2003年)にものぼる。また、企業の経常利益は増加傾向にある反面、それが雇用者報酬の増加には結びつかず、雇用者報酬は減少している。さらに貯蓄大国と言われた日本の家計貯蓄率は昭和50年ごろの約23%が、今や5%台、いっそう国民の将来生活不安が増大しているなかで、行政は個人よりも企業の声に耳を傾け企業部門のための社会資本整備を優先しているのである。
 そのような状況の中、日本経済団体連合会の掲げる「法人実行税率の引き下げを通じ国際競争力を強化するとともに、消費税率を2007年度以降、段階的に引き上げる」との新ビジョンに添って、消費税UP、社会保障費の負担率UPなど、国民負担圧力は増すばかりである。
 すなわち、賦課段階においても、徴収された税金の使途段階においても個人より企業が優先されているのが、今の日本の姿である。企業が収益をあげ、それを個人に還元して社会全体を豊かにしていくという、企業性善説的なサイクルはもはや崩壊している中での使命感を忘れた政治・行政の愚行である。世にいう勝ち組み負け組みとは、強いものはより強く、弱いものはより弱くという世相の反映ではなかろうか。
 そのような中、先の公聴会でも示された静岡空港問題での企業経営者の税金頼みの発言などは象徴的である。

 県は、平成7年の阪神淡路大震災をうけても上辺だけの地震対策に終始していたが、新潟地震とスマトラ地震でようやく目がさめたようだ。しかし、先述の耐震化のみならず、急傾斜崩壊危険個所10,763個所、うち人家5戸以上など最優先レベルにあるもの3,749箇所、崩壊土砂流出危険地区3,266地区、山腹崩壊危険地区2,574地区(いずれも平成16年4月1日現在)など、まだまだすべきことは山積している。失われた時間を埋めるのはたやすいことではない。

 石川嘉延知事は、昨年平成16年の春、全国知事会の地震対策特別委員会委員長として、住宅再建支援制度創設の国との折衝において住宅本体への再建費用を対象とする部分を財務省に妥協し非対象とすることで取りまとめた上で地方拠出の満額を各都道府県に求め、その説明責任の無さを非難し拠出額に異議を唱えた片山鳥取県知事を名指しこそしなかったが「噴飯もの」「ちゃんちゃらおかしい」などと罵倒したが、ことの重要性の認識や住民への思いやりそして取りまとめ役としての責任感があればこのような言は出てこないはずである。結局、新潟地震だけでなく県内でも風水害による住宅被害が発生し、その不備が認識されるに至ったが、国民の生命財産にかかわることでの安易な妥協は取り返しがつかないことがあることを認識すべきであろう。

 今となっては、対策完了前に地震が起き、失われた10年(第4期から5期)の代償として死者が出ないことを祈るばかりである。

(参考資料1)
「法人事業税の超過課税と充当事業」(「県財政のあらまし第114号」から)

(1) 概要

 (第1期から第3期まで)
 本県では、予想される東海地震の災害から県民の生命や財産を守るため、様々な地震対策事業を進めています。
 これらの事業の財源とするため、法人事業税について、地方税法に定められている標準税率を超えた課税、いわゆる超過課税を昭和54年度から5年ずつ3期にわたって実施しました。

 (第4期から第6期まで)
 東西に長く、交通の不便な半島部や山間地を有している本県において、21世紀に向け産業経済の発展や県民生活の充実を図り、県土の均衡ある発展や地域相互間の一層の緊密化を目指すために緊急の課題となっている第二東名自動車道アクセス道路をはじめとする高規格幹線道路網などの社会資本整備の円滑な推進を図るため、超過課税を平成6年から10年実施し、平成16年3月をもって期限を迎えましたので、さらに5年間延長することとしました。
 第6期の概要は次のとおりです。
 (略)

(2) 充当事業

 (第1期から第3期まで)
 超過課税によって得られた収入は、3期15年間で1,561億7,000万円となりました。この収入を、予想される東海地震に備えて、学校や警察等防災拠点施設の耐震補強、防災資機材や耐震性貯水槽の整備、避難地や避難路の整備、津波対策のための防潮堤の構築などの地震対策事業(3期15年間の総事業費8,412億7,800万円、うち県負担額2,182億9,900万円)に活用し、地震災害から県民の生命や財産を守るための施設の整備が大いに発展しました。

 (第4期、第5期)
 超過課税によって得られた収入は、平成6年度から平成15年度までの10年間で647億1,100万円となりました。この収入を、第二東名自動車道アクセス道路をはじめとする高規格幹線道路網などの社会資本整備(平成6年度から平成15年度までの総事業費3,387億4,300万円、うち県負担額1,750億7,100万円)のために充当し、交通基盤整備の促進が図られました

 (第6期)
 超過課税によって得られる収入を、第4、5期に引き続き、第二東名自動車道アクセス道路をはじめとする高規格幹線道路網などの社会資本整備(平成16年度から平成20年度までの総事業費約1,800億円、うち県負担額約800億円)のために充当します。
 なお、超過課税収入は、平成16年度は58億6,300万円(見込)です。

(参考資料2)
第154回国会 災害対策特別委員会 第7号(平成14年6月7日(金曜日)) (鳥取県知事)片山善博参考人発言抜粋
(平成12年11月発生した鳥取県西部地震の際の独自の住宅再建支援制度という先進的取り組みについての発言部分)

 私は、やはり住宅再建にめどを立てるということがこの被災地の復興の一番の眼目であると思いました。そこで、何とか住宅再建支援をしたいと思いましたのが、被災直後の私の実感でありました。
 それからいろいろな制度を調べたのでありますが、さっき言いましたように、我が国には住宅再建を手助けする手だては何もありません。唯一ありましたのは、住宅金融公庫の低利融資がありますけれども、これとて借りられた人だけへの低利融資でありまして、そもそも借りることのできない人には低利融資というのは何の意味もないわけであります。したがって、お年寄りの被災者には、住宅について手を何ら差し伸べることができないということでありました。
 そこで、それならばもう単独ででもやろうということに決めたのでありますが、それからが大変でありました。それは、専ら政府との関係でありますが、当時、中央政府は住宅再建に公的資金をつぎ込んではいけないということを非常に厳しく言われておりました。個人の住宅というのはプライベートな財産だから、パブリックなものにしか使うべきでない税金をそういうプライベートな財産につぎ込んではいけない、これが財政上のルールであるということ、これをしきりに強調されておりまして、私も実はそれはそうだろうと思うのでありますが、しかし、幾らパブリックなものにしか投入できないからといって、道路や橋を一生懸命直しても、肝心かなめの被災者の皆さん方が住宅が再建できないということでその土地を去ってしまったら、その道路や橋に投じたパブリックなお金というのは一体何になるんだろうかと思いました。財政上のルールを守っても、しかし、地域を守れなかったということになってしまいかねないわけで、あえて、政府の方針には当時反したのでありますけれども、鳥取県では住宅再建支援に乗り出すことにいたしました。
 具体的にどういうことをやったかといいますと、資料の方にもつけておりますけれども、家が壊れて建てかえる人、しかもそれはもとの場所に、もとの場所というのは、もとの市町村に建てかえる人には三百万円を援助しようということにいたしました。それから、壊れたり屋根が飛んだりという家が多かったものですから、そういう家については、修繕をされる方は、百五十万円を基本にして、それの三分の二を限度にして支援しましょうということにしたわけであります。
 その際には、全壊だとか半壊、一部損壊だとか、もうそういう区分は一切なしで、とにかく地震がきっかけで建てかえる人は三百万円、修繕する人は百五十万円を限度にその三分の二ということにしたわけであります。これは、県が専ら中心になってやりましたけれども、該当の市町村とも協力をして支援を行いました。
 正直言いまして、全く新しい制度への挑戦でありますし、この制度を発表いたしましたのが地震が起きてから十一日後でありましたので、まだ被害の程度もわかりませんから、一体どれぐらいお金がかかるか、正直、不明でありました。大変不安の中で滑り出したのでありますけれども、鳥取県ではそういうことをやりました。
 おかげさまで、いろいろないいことがありまして、一つは、そこにもちょっと書いておりますけれども、住宅再建支援を発表した段階から、被災地における不安というものがどんどん解消していきました。後で精神科のお医者さんに伺いますと、住宅再建支援を発表したそのアナウンスメントが被災者にとっては最大のメンタルケアになったという話も伺いました。
 確かに、私も連日被災地に赴きまして、被災者の皆さんとお会いしていますと、あるときから本当に見る見る皆さんが元気になられまして、やはり不安というのが一番大きいわけで、その不安をどうやって解消していくのか、その不安をどうやって希望に変えていくのかということが災害のときには重要なんだなということを痛感した次第であります。
 その後、順調に復興は進みまして、公共施設の復興も順調に進みましたし、それから住宅も、この再建支援を利用していただいて、被災者の皆さんが建てかえたり修繕したりということをやられまして、今日、まだ完全ではありませんが、ほぼ回復をしております。当初恐れました、人口がぐんと減るんではないか、大きなダメージを受けて、したがって、もうその地域を捨てて、例えば遠方にいる息子さんとかそういうところに行ってしまう、そういうことが予想されたものですから、この住宅再建支援をやったんですけれども、結果として、住宅が壊れたそのことによって地域を去らなければならなかったという人はほとんどおられませんでした。
 皆無かというと、やはりそれはそうではなくて、いろいろな事情があって、数軒の方は近郊の都市とか大都市に移った方はおられますけれども、しかし、それは本当に数軒でありまして、他の大部分の皆さんは、元気を出して、元気を取り戻して、その地域で住宅を再建し、住宅を修繕し、これからも住み続けてみんなと一緒に地域を守っていこうということを選択されました。
 私は、大変ありがたかったと思いますし、今にして思えば、多少背伸びをしたかもしれませんけれども、住宅再建支援という新たな政策を打ち出したことが、地域の崩壊を免れ、地域を守ることにつながったと思っております。

(参考資料3)
昭和五十一年六月県議会山本敬三郎静岡県知事答弁抜粋
(昭和53年の「大規模地震対策特別措置法」(大震法)」成立(6月15日公布)を成し遂げ、翌年度からの超過課税による地震対策推進を推し進める以前から地震対策の必要性を説いていた)

 「地震対策につきましては、国の地震予知連絡会は、東海地方を観測強化地域に指定いたしましたが、先般、伊豆中東部に異常現象が観測されましたことから、五月二十五日、地震予知研究推進連絡会議におきまして、今後、伊豆中東部の観測をさらに強化することといたしました。しかし、現段階においては、地震発生を正確に予知することはきわめてむずかしい問題とされております。本県は過去の地震歴、地震活動空白地域のあることからして要注意地域であるので、一昨年、地震対策基礎調査を行い、従来の地震対策、災害対策計画を修正して対処することといたしております。
 また、市町村に対しても、地震災害に対処できるよう市町村地域防災計画の整備を強力に指導いたし、万一地震の発生した場合でも、県、市町村、関係機関が一体となって対処できるように措置いたしました。御案内のとおり、五月二十四日、地震予知連絡会において、伊豆中東部の異常現象について検討し、これら異常現象が観測されたことを重視して、直ちに地震活動と結びつけることには問題があるといたしましても、将来地震の発生も考えられるという前提で、情報の迅速な伝達方法、職員の動員、配置計画、関係機関の応援計画等を検討いたしますとともに、関係市町村、防災関係機関に対しまして、以下の事項について整備点検を指示いたしたところであります。一、地震が発生した場合、通信、交通の遮断が予想されるので、情報の伝達・収集手段について検討 二、山・がけ崩れ危険個所の再点検と整備 三、住民の避難場所、避難路の再点検 四、地域自主防災組織の指導育成、避難訓練の実施と住民の心構えに対する指導等、特に、地震発生直後にあっては消防、警察、自衛隊による救援、救護の初動活動を期待することは、諸情勢からして非常に困難と思われますので、地域の隣保互助精神に基づく自主防災組織を育成することによって、被害の軽減を図るよう指導をいたしているところであります。」

 「いわゆる東海地震にいたしましても、発生時期を推定できる前兆現象と思われるものは、現在のところ見い出されていないということでございます。したがって県としては、もう、明日というような差し迫った問題ではありませんけれども。次に日本列島に巨大地震があるとすれば、それは東海地方であるということがほとんど大半の研究者、学者の意見でもございますし、それは二、三年後であるかもしれないし、さらには二、三十年後であるかもしれないという点を考えまして、こういった時点においても地震対策は積極的にやっていくべきではないかと、二、三十年後の問題であってもやっておくべきではないかと、基本的にはこのように考えているわけであります。」