2005.03.27UP
わが国の普通国債残高はバブル崩壊後右肩上がりの増加を続け、2005年度末で税収の約12年度分に相当する538兆円に増加する見込みである。これは国民1人あたりに換算して約422万円に相当するが、財政融資資金特別会計国債残高144兆円(2005年度末見込)、政府短期証券、交付税特会借入金、政府保証債務など普通国債以外の実負債額は含まれておらず、その一部を含んだ「国の借金」として先に財務省が発表した昨年12月末現在残高も751兆円(国民一人当たり588万円)が2005年度末には約888兆円(同695万円)に達する見込みと、悲惨の「実態」は不明のまま膨張の構造が続いていることだけは確かなようである。しかも、公称の国・地方の債務残高のGDP比の比較にあっても先進国中で突出した(次世代への)負担先送り状況にあるのだ。
国及び地方の債務残高(国際比較)(GDP比、%)・・・・・OECD・エコノミック・アウトルック76号 (暦年) 日本 米国 英国 ドイツ フランス イタリア カナダ
このような危機的(破滅型)財政構造にあって、財務省が試算したところによれば、現状のまま推移すれば2018年度末の普通国債残高で917兆円と2005年度末見込みの538兆円の2倍近くになるとされており、これさえも、10年もの国債で金利2%と仮置きした上での楽観的試算にすぎないのである。
もし楽観的観測と異なり、わずか1%金利が上昇し3%になったと仮定するだけで新規国債発行額が06年度で1.8兆円、07年度で3.2兆円、08年度で4.8兆円と国債費が大幅に増加していくという参考試算が示すように、金利の上昇は(利払費を大幅に引き上げ財政の硬直性を導くため)現在の財政構造下にあっては救いのインフレではなく破滅のインフレとなるのである。一刻も早く財政構造自体を改革し改善への展望を切り開かなければ円の信用は崩壊し、資源を海外に依存しているわが国の経済の崩壊は必然なものとなる。そのときは発展途上国で問題となっている飢餓も決して他人事ではなくなるであろう。
もちろん国(財務省)も手をこまねいているだけではない。民間でできることは民間でという小さな政府化や市町村合併に代表される効率化を通して歳出の抑制はもちろん、最後の牙城である人件費にも改革の手を伸ばそうとしているが、これだけで改善するほど甘い状況ではない。少子高齢化の流れの中で社会補償関係費の急増は避けられないにもかかわらず税収は伸びないからだ。
歳出と歳入、すなわち行政改革と増税という両面を改革しなければならない状況にあることは確かだが、国民から見れば増税より先に行革をというのも当然の要求である。もちろん無駄の排除は最優先であるが、道路特定財源一つをとっても、無駄を生み出す構造と税制とは決して無関係・無連動ではなく、むしろ密接な関係にあるのであって、わが国における行政構造の改革と税制の改革はこれを同時に行う必要が実はあるのである。
筆者は、国と地方の役割分担に基づいて、受益と負担の関係をできるだけ明確にした目的税と公的扶助など社会生活一般を支える(等しい税負担感の要求に基づく)担税力に配慮した一般税という役割に配慮した、簡素な税構造への再編ということを、道州制の実現とそれに伴う身近な基礎的自治体への事務移管などと同時に行うことが最善にして緊急を要する国策課題と考える。
さて、市町村の合併や政令市の誕生により、その役割の見直しを迫られている県であるが、その財政状況は国ほどではないものの厳しい状況であることに変わりはない。県債残高はいまだ増加を続け、将来世代の税を先食いしている流れは止まる兆しがない。もちろんそれら債務で築いたインフラが将来世代にそれに見合うほどの豊かさをもたらすのであれば希望も持てよう。しかしむしろ逆に、さらなる負担を地域住民に課しそうな状況で、生活水準の向上への希望を失わせ、将来に対する絶望感を広げつつある。
確かに私たち個々人の力で未来への展望は開けるものではない。しかし私たちの力がなければこれら危機的状況を克服することもできないことも事実である。このことを踏まえて、県財政の現状を見、今何をなすべきかを各々考えていただければ幸いである。
財政一般について論じる前に、今回はまず最初に知事が財源確保のための合理化例として紹介した「県と市町村の徴税一元化」を、そして今全国的な注目の的となっている静岡空港事業の現状を、そして森林整備を目的とした増税の動きを概観する。
知事は新年度予算発表の会見で財政の深刻な状況を受け「追加的社会資本投資を抑えつつ、県と市町村の徴税一元化のような合理化で当面の財源を確保する努力を続ける」としたため、これを受けて一部新聞では「有効と見られる策は今のところ、65億〜75億円の経費削減効果を見込む県・市町村税の徴税業務一元化ぐらい」などと紹介されたのだが、本当にそれほどの効果が見込めるのかについて簡単に検証しておこう。
「県と市町村の徴税一元化」とは、県税及び市町村税の賦課徴収事務の一元化を図る組織(静岡県地方税機構=地方自治法に基づく広域連合)を創設しようというもので、平成20年代初頭の設立を目論んでいる県の構想である。
そしてこの構想のメリッとしては@地方税のワンストップサービスの実現、A事務の効率化、B収納率の向上などが挙げられているが、地方自治体の財政難の折、特に強調されているのがコスト縮減効果年間最大400億円という試算なのである。
そのコスト縮減試算の内訳は、 税務職員削減効果 現行、県500人、市町村1600人体制から、県40人、市町村600〜700人の削減が可能 電算システム統合効果 初期投資に10〜40億円掛かるものの、ランニングコストにおいて40〜50億円が25〜35億円に縮減可能 収入率向上効果 収入率の低い市町村税(91.3%)が県税(96.2%)並みに上がったと仮定すれば、市町村税収入額は6033億円から6353億円に増加する。
と、経費節減効果だけを抽出すれば、報道のとおり、65億〜75億円の経費削減効果が見込まれているのだが、問題は県への効果と市町村の効果である。ご覧のとおり、税務職員数の削減効果で見れば県の経費節減効果は40人分約3億円程度でしかなく、電算システムについては経費負担割合が決まっているわけでないので、仮に経費削減効果割合で按分した効果の享受を受けるものと仮定し計算すれば、これが約1億円となり、合計で4億円程度のものである。つまり、静岡空港の維持管理費にも満たない縮減効果なのである。これでは県の財政状況改善の有効な策どころではない。
さらに、この県の試算で問題なのが、市町村と記されていることからも判るとおり、合併効果を考慮していない、すなわち上記経費節減効果の中には市町村の合併で合理化される分までもが含まれているということである。また収入率向上効果についても、収入率は市町村の規模の大きさにほぼ比例することから合併によって向上する分も当然に含まれることになる上、そもそも収入率というものは税目によって異なる上に、県税においては県税の主要税目である法人事業税の収入率の影響が全体の収入率に大きく出るため、収入率の低い個人課税税目に頼る市町村の収入率が県と同じレベルに上がるという単純な仮定にも疑問を抱かざるを得ない。
筆者は既に他のページ上でこの問題に触れ、「400億円効果のうち県の効果が約4億円、市町村効果が396億円である。市町村の大合併前との比較であり、新浜松市誕生で税務職員数の合理化・専門化が進めば同市では一元化による効果はほとんど見込めない。過大な効果と言われても仕方ないだろう。現在道州制に向けた動きが活発になっており、北海道での道州制特区の試みを通して十年以内の移行も現実的であり、本県においては名古屋圏又は関東圏編入案の外に交流実態を考慮した県2分割案も示されており、拙速な判断はかえって市町村の将来負担の増になりかねない。筆者は少なくとも伊豆東海岸地域は関東圏域に属すべきと考えるものであり、同地域では慎重に判断されることを望むものである。」と述べたとことであるが、人は機構から再び市に引き上げれば済むことであるが、電算システムの統合は大きな制約やリスクを含む決断であることを市町村は住民に十分説明する必要があると考える。
次に、今一番ホットな県政上の話題である静岡空港事業について現状を把握しておこう。
財政面から見た空港事業の進捗状況は次のとおりである。
静岡空港整備事業進捗状況(単位:億円) 空港本体整備事業 滑走路、誘導路など 空港周辺部整備事業 障害切土、空港横断トンネル、調整池など 緩衝緑地等環境対策 空港関連道路・河川整備事業 アクセス道路整備 河川改修等治水対策 生活生業地元対策事業 代替農地開発 生活生業・騒音対策 計画策定等 計画策定・広報・調査
(市町管理の道路、集会場、農業振興への助成など)
全体事業費で見て、残り23%程度であるが、道路やトンネルや河川改修といった事業は既に有効に機能しているもので、空港機能に係る予算である空港本体整備事業で見れば、その進捗率は66%である。またこれとても、土地造成が進んでいるに過ぎず、空港以外の用途転用も物理的には可能なものである(もし空港事業が頓挫しても直ちに無駄とは言えない)。
また、総事業費1900億円の財源であるが、国庫補助は約13%に当たる245億円(空港本体整備事業の半分)、一般財源が約14%、基金繰入が約21%、負担金等で3%、そして県の借金である県債で約49%が賄われる計画となっている。すなわち、静岡空港事業とは将来の税負担世代が900億円超の受益を受ける公共施設であるという前提で進められている事業であるということである。
県の需要予測で想定(前提条件と)していた以上の中部国際空港の交通の利便性と、開港時期の遅れによって開港時の需要予測に影響を与えることが確定的となった羽田の再拡張に伴う便数増加や近距離国際便就航の事情変化など、既に県の開港時の需要予測の根拠は崩壊しており、開港に漕ぎ着けても厳しい現実が待ち受けていることは容易に想像できるものである。そうなったとき、誰が責任を負うのか、といえば、財政面から見れば今そしてこれから税金を負担する人達(県民だけではない)であるということになるのである。
(注):今月25日、国土交通省は、静岡空港本体用地造成の事業費として昨年度とほぼ同額の国費11億4千万円の配分を決定した。県は国庫補助事業費として40億円を17年度予算に計上し、半分の20億円の国費を見込んでいたが、昨年同様大幅に要求額に満たなかった。この結果、県は17年度には22億8千万円の事業執行しか行えない。国の財政状況が好転しなければ、大都市圏拠点空港への投資の重点配分方針もあって、静岡空港の平成20年11月の完成も厳しい状況である。
知事は昨年の暮れに、山林保全のために県民税に超過課税の形で環境税を導入することを、(国とは別に)県独自にやりたいとの意向を示した。 事実上の増税である。
とは言っても、定率減税廃止のように万単位の話ではなく県民一人500円程度を県民税均等割(所得に無関係に賦課される分)に上乗せを想定してのことだそうだが、この問題の本質は金額の多寡ではない。
例えば、県民の医療環境向上のために、さらに1000円、食品の安全性確保のために、さらに500円というように増税が繰り返されることを想像すれば判るだろう。本来県民全体の利益となるようなものは、元々税金で賄うべきものであって、安易に増税の理由とされるべきものではないのである。
まして、県は山林保全のために今現在何も事業を行っていないというわけでもなく、増税で得られる税収以上の予算で事業を行っている。新規事業用ということだろうが、今の予算でできない事業というわけではない。まさに、増税の口実に過ぎないのである。
一方で、県は先に見た静岡空港事業では直接の受益者である空港利用者のために一般の県税を投じ、開港後も様々に補助する姿勢である。(国管理の空港は、基本的に建設費の償還まで航空会社や空港利用者からの収入で賄おうとしている)
よく言われるのが空港は道路や橋と同じ公共交通インフラであるから償還の必要も無く、公費で維持管理しても良いじゃないかという意見であるが、道路整備などは道路特定財源としてのガソリン税などを通じて利用者が実質的に負担しており、しかも無駄といわれる道路まで建設できるほど高額の負担を強いられているのである。一方の空港事業はどうかといえば、燃料税や着陸料では賄いきれず事業負債や一般会計からの繰り入れで凌いでいる状況である。その空港事業特別会計赤字の最大の原因が地方空港であり、羽田や成田の着陸料が下げられない最大の原因でもあることは全国ニュースでも取り上げられたほどである。
もちろん私は今日の財政状況にかんがみて増税一般を全否定するものではない。
しかし、増税より先に成すべきこと、考えるべきこと、があるのではないですか、と言いたいのである。空港以外の例でいえば、舞台芸術団の支援やグランシップなどの箱物管理。とても、県民一般に均等に受益が及んでいるとは言い難いこのようなものについて、どのような考え方で、県民、近隣住民、直接の利用者が分担負担すべきか、あるいは負担すべきでなく廃すべきであるというように整理を行い、その上で、行政運営と税制構造を見直す提案を打ち出す責務が、安易な増税という選択の前に「ある」と考えるのである。
次に公債費の分析を行う。公債費(県債返済のための予算)は減ったのか、減ったのならその原因は何か、増えたのならそのからくりとは、を昨年同様分析する。
なお、公債費の予算については、平成14年度予算において借換債が一般会計から特別会計に移管され、16年度予算においてはさらに県営住宅分が特別会計に移管されていることから、その間の適正な推移を把握するため、平成12年度会計ベースで平成17年度予算までの公債費の元金、利子、公債諸費別推移を見ることとする。
(単位:億円) 公債費元金 一般会計 1,083.18 1,185.00 1,107.12 1,191.79 1,208.31 1,179.41 △28.90 公債特会 481.51 1,115.97 991.85 1,341.85 350.00 住宅特会 36.72 36.04 △1.00 1,083.18 1,185.00 1,588.63 2,307.76 2,236.88 2,557.30 320.00 うち、借換債元金 141.00 193.00 328.00 885.00 795.60 1,062.64 267.00 差引純公債費元金 942.18 992.00 1,260.63 1,422.76 1,441.28 1,494.66 53.38 同利子 一般会計 615.96 608.66 571.76 550.98 497.49 457.94 △39.55 公債特会 3.83 3.89 5.01 6.48 1.07 住宅特会 10.05 8.81 △1.24 615.96 608.66 575.59 554.87 512.55 473.23 △39.32 公債諸費 一般会計 16.47 9.49 11.51 14.06 12.12 13.14 1.02 公債特会 住宅特会 0.09 0.07 △0.02 16.47 9.49 11.51 14.06 12.21 13.21 1.00 公債費計 (うち名目上の一般会計分) 1,715.61 (1,715.61) 1,803.15 (1,803.15) 2,175.73 (1690.39) 2,876.69 (1,756.83) 2,761.64 (1,717.92) 3,043.74 (1,650.49) 282.10 (△67.43)
(注) 繰出入等のダブリ分は一般会計にて計上、特会内の基金出戻分は除き、集計。
寄与度
結果は、公債費の名目上の金額のとおり、県の予算書を一見しただけでは平成17年度の公債費は67億円も前年度を下回り、県債返済費用は減ってきているような期待を抱かせますが、現実は一般会計を通さず特別会計に直接基金を繰り入れた返済や、返済期限の来た県債を特別会計内で借り直す(事実上の返済期限延長)といったことで表面上は減っているということでしかないことが昨年同様確認できました。
そして、実態としての公債費の増要因は特会への基金繰り入れ返済の増よりも返済先送りの借換え債による要因のほうが大きいことも確認できます。
(単位:億円) 公債費元金の増減 うち、借換債分 うち、通常分 公債費利子の増減
また、現在は低金利による公債費利子の減少の効果で公債費の膨張はやや緩和されているわけですが、裏を返せば、近い将来金利が上昇すれば、県債残高の多さから見ても県政運営が立ち行かなくなるほどの負担増になりかねない危険を孕んだ財政構造にあるということができます。
(単位:千円) 注:借換債=県としては本来は長期・低金利で借りたいところ、貸し手である金融機関等にとっては金利の変動リスクを考えると短期で区切りたいところ、便宜的に短期10年債としつつ、償還期に利子等を清算した上で再度同じ元金を新たな金利で借り直す際の債務。最長30年まで(2回の借換まで)可能。したがって、同じ額を借りて同じ額を返すので、借換債自体の増減が県債残高に影響することはない。もちろん、借り換えせずに償還(返済)することも可能。
一般会計上の表面的な公債費減少が財政改善を意味するものでないという証拠が県債残高の増加傾向です。
県債の新規発行額自体は4年連続で減少傾向にありますが、先に示した返済先送りともいうべき借換債の増大により県債残高は今も増え続けているのです。しかも、貯金に相当する基金が枯渇寸前であり、実負債も悪化の一途です。
この実負債を県民一人当たりに換算すれば以下のとおり一人あたりで年1万円以上の増加となっており、将来世代に負担を回さず今の県行政水準を保つには、それだけの増税を行う必要があるということになります。財政への影響はほんのわずかなどといって、将来世代が負担にふさわしい受益を受けない公共事業やイベントをぶち上げている場合ではないと言わざるを得ません。
県債発行額(億円) 688 780 905 1,390 2,126 2,190 2,605 2,563 2,192 2,793 2,209 1,804 2,102 1,941 1,862 1,514 1,248
県債残高 5,198 1兆8,790 1兆9,692 2兆519 2兆1,184 2兆1,429 2兆1,498 2兆1,516 基金残高(一般会計分) 1,142 811 874 752 821 554 55 (404億円不足) 4,056 1兆7,979 1兆8,818 1兆9,767 2兆363 2兆875 2兆1,443 2兆1,920 推計人口 3,657千人 3,767,393人 3,779,570人 3,785,811人 3,792,982人 3,799,809人 同左と仮定 同左と仮定 県民1人あたりの一般会計分実負債 (前年比増差) 110,911円 477,227円 497,887円 (+20,660) 522,134円 (+24,247) 536,860円 (+14,726) 549,370円 (+12,510) 564,318円 (+14,948) 576,871円 (+12,553) (注) 最下欄は、老人、幼児などを含むすべての県民1人あたりの実負債である。もっともこれは、静岡県という行政単位の一般会計分のみであり、国、市町村分はもちろんのこと、県の隠れ借金といわれるPFIなどの債務も含んでいない。
(見込み)
(見通し)
(見通し)
(一般会計:臨時財政対策債等含む)
億円
億円
億円
億円
億円
億円
億円
億円
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億円
億円
億円
億円
億円
億円
億円
億円
億円
億円
億円
億円
(各年.10.1)
実債務に関連して、もう一つの注意点・注目点がPFI事業です。
これは債務負担行為の一つですが、県が直接県債という借金を背負うのではなく、民間企業に背負ってもらって、それを県が委託費などの名目で年分割して民間企業に支払っていく契約を結ぶため、上表の「県債残高」には出てこない、いわゆる隠れ借金となってしまうものです。公債費か委託料かの名目の違いだけで、毎年一般会計予算で契約どおりの予算を強いられ県債同様財政の硬直化を招くわけですからこの推移についても注視する必要があります。しかも県債より悪いことに、PFI事業参入の民間企業に損をさせないためにインフレなどのリスクを県が負う契約となっているため、目先の損得だけで考えると痛い目にあうことになるのです。
そして、16年度には西遠地区新構想高校PFI分として約63億円が、17年度は総合科学技術高等学校などのPFI4事業で173億円が将来負担(実債務)として予定されています。この173億円だけで県民1人当たり4,553円に相当しますから、上表の17年度末の県民1人あたりの実負債の対前年増加額は14,948円ではなく実際は約2万円近くの増になることになります。
したがって、見た目以上に県財政は悪化の一途を辿っているということができるのです。
県自身が認める静岡県財政の財政健全化計画(中期試算)の破綻は一昨年の分析で確認していますので、昨年同様、1年前策定の見通しとそれから1年後の現在で何がどのように変わったのかを見ながら平成17年度予算を考えてみましょう。
1年前の平成17年度予算見通しと実際の平成17年度当初予算の比較(単位:億円) 歳出 義務的経費 6,328 6,241 △87 人件費 3,924 3,912 △12 扶助費 602 572 △30 公債費 1,691 1,650 △41 災害復旧費 111 107 △4 税収関連法定経費 1,181 1,153 △28 義務的経費・税収関連経費以外 4,107 4,009 △98 投資的経費 2,516 2,337 △179 公共・直轄 単独 1,308 1,208 1,206 1,131 △102 △77 その他の経費 1,591 1,672 △81 11,616 11,403 △213 歳入 県税 4,354 4,380 26 地方消費税精算金 850 778 △72 地方譲与税 113 238 125 地方交付税 うち臨時財政対策債 2,225 526 2,039 404 △186 △122 地方特例交付金 38 33 △5 財源移譲予定特例交付金 74 180 106 国庫支出金 1,830 1,577 △253 県債 919 844 △75 その他の歳入 786 835 49 427 499 72 11,616 11,403 △213
(54.5%)
(54.7%)
(33.8%)
(34.3%)
(5.2%)
(5.0%)
(14.6%)
(14.5%)
(1.0%)
(0.9%)
(10.2%)
(10.1%)
(35.4%)
(35.2%)
(21.7%)
(20.5%)
(11.3%)
(10.4%)
(10.6%)
(9.9%)
(13.7%)
(14.7%)
(100.0%)
(100.0%)
(37.5%)
(38.4%)
(7.3%)
(6.8%)
(1.0%)
(2.1%)
(19.2%)
(4.5%)
(17.9%)
(3.5%)
(0.3%)
(0.3%)
(0.6%)
(1.6%)
(15.8%)
(13.8%)
(7.9%)
(7.4%)
(6.8%)
(7.3%)
(3.7%)
(4.4%)
(100.0%)
(100.0%)
まず、一般会計のプライマリーバランスですが「公債費を除いた歳出」9,753億円に対し、「借金以外の歳入」は9,656億円であり財政支出が過大であり均衡していません。均衡していないということはこの予算が将来への付けまわしの予算であることを意味します。この現実は前節の公債費・県債分析のところで見たとおりです。
(参考:プライマリーバランスについて昨年分析から) 「たとえ均衡しても財政赤字が拡大したら意味ないわけで、デフレ下では成長率が金利より低いことにより生じる赤字を埋めるだけの財政黒字を毎年出さなければ財政は改善しないのです。
だからといって低金利で辛うじてやり繰りしているところに急激なインフレともなれば金利の上昇で一気に破錠してしまいます。地道な努力が欠かせませんが、均衡にさえ遠い現状はもう手遅れかもという見方も否定できません。しかしそうであっても、再生に備えて維持管理費等の固定費の圧縮は不可欠なはずです。無駄な箱ものは命取りです。
さて、上記表比較ですが、歳入で税収の増加が見込まれているにもかかわらず歳出はすべて「△」、すなわちマイナスとなっています。いわゆる三位一体改革による交付税・支出金・譲与税などの改変の影響が大きいことが分かります。
ただし、今回はこれ以外にも静岡市の政令市移行による県から市への事務移管の影響ということも無視できないものとなっています。
県は17年度一般会計予算について、
「一般会計予算の規模は、平成16年度当初予算と比較して237億円、2.0パーセントの減となります。なお、平成17年度から静岡市が政令指定都市へ移行することに伴う影響を除いた実質比較では、1.1パーセントの減となります。」
と説明していますが、政令市移行の影響額は113億円程度(0.9%相当)であり、結果、見通しとの相違のおよそ半分がこの影響であるということがわかります。特会移管、三位一体改革、政令市移行と特殊要因の影響がこのところ相次いでおり、一般会計総額の単純な経年比較は意味を失いつつあります。
当初予算規模 (特会移管等で 1兆3,220億円 1兆3,215億円 1兆1,920億円 1兆1,770億円 1兆1,640億円 1兆1,403億円 1兆1,466億円 当初予算税収 4,500億円 4,780億円 4,210億円 4,070億円 4,250億円 4,380億円 4,572億円 地方交付税等 地方交付税 2,015億円 1,865億円 2,115億円 1,875億円 1,615億円 1,635億円 1,567億円 臨時財政対 160億円 361億円 730億円 526億円 404億円 404億円 2,015億円 2,025億円 2,476億円 2,605億円 2,141億円 2,039億円 1,971億円
(見通し)
決算規模(下段)
単純比較不可)
1兆3,528億円
1兆3,672億円
1兆2,046億円
(特会移管あり)
1兆1,693億円
(制度改正あり)
(特会移管あり)
決算税収(下段)
4,804億円
4,676億円
4,176億円
4,254億円
上段:予算
下段:決算
2,141億円
2,070億円
2,050億円
1,918億円
策債等
172億円
417億円
737億円
2,141億円
2,242億円
2,467億円
2,655億円
さて、この節の最後として、その知事の会見で明らかにされた「財政の中期見通し」の試算結果について見ておきます。
県発表の試算結果 ケース1 経常収支比率 94.7% 93.9% 94.0% 93.1% 92.9% 起債制限比率 12.0% 11.3% 10.2% 9.8% 9.8% 県債残高 21,498億円 21,516億円 21,084億円 20,629億円 20,147億円 財源不足額 499億円 455億円 459億円 395億円 288億円 ケース2 経常収支比率 94.7% 95.5% 97.0% 96.9% 97.3% 起債制限比率 12.0% 11.3% 10.2% 9.9% 9.9% 県債残高 21,498億円 21,516億円 21,084億円 20,629億円 20,147億円 財源不足額 499億円 567億円 681億円 670億円 607億円
(特例債含む)
(特例債含む)
昨年の結果表と比べてとても分かりやすくなりました。というのも、財源不足額の欄が加わったからです。これなら一目で「ケース2」の方が悪い想定であることが分かります。
今回の想定の違いは、三位一体改革の行方に注目する意味で、経済成長率は同じとし、地方交付税の見込み額に差をつけたものとなっており、「ケース1」が「従来の地方財政運営ベース」と評される義務的経費の需要増に応じた交付税の増額を想定したケース、「ケース2」が、「17年度国予算・地方財政対策ベース」と評される一般財源総額を17年度と同額に抑制したケースです。
おそらく国の財政状況も厳しいため、地方の歳出増に伴う交付税等の増額は認めにくいと思われ、ケース2に近い規模の下、人件費を含めた歳出削減の方向に進むのが自然ですが、高度に政治的な駆け引きの世界ですから単年の予測は難しいと言った方が適切と考えますが、長期的にはより一層の歳出削減と増税などの歳入確保策が求められることは確かなように思います。
(参考) ケース1 財源不足額 499億円 455億円 459億円 395億円 288億円 基金充当額 499億円 55億円 − − − 差引純不足額 0億円 400億円 459億円 395億円 288億円 ケース2 財源不足額 499億円 569億円 681億円 670億円 607億円 基金充当額 499億円 55億円 − − − 差引純不足額 0億円 512億円 681億円 670億円 607億円 ケース1 県債残高 21,498億円 21,916億円 21,943億円 21,883億円 21,689億円 ケース2 県債残高 21,498億円 22,028億円 22,277億円 22,492億円 22,617億円
昨年同様、前年度との比較で予算を見てみましょう。
ただし、今回は先に述べたように、静岡市の政令指定都市移行に伴う県予算の減額が、額の詳細は不明ながら福祉や道路など広範に及んでいるため注意が必要であることを付記しておきます。
歳出予算款項別(目的別)前年度比較(抜粋)(単位:億円) 1 議会費 22.6 22.7 0.1 2 総務費 538.5 490.3 △48.3 減:職員給与費15億円 3 企画費 264.2 214.9 △49.3 減:国際園芸博推進事業費50億円 4 生活・文化費 77.1 95.1 18.0 増:国勢調査費16億円 5 環境森林費 186.9 176.5 △10.4 1 環境費 68.1 65.6 △2.5 減:自動車排出ガス対策事業費助成2億円 2 森林費 118.8 110.9 △7.9 減:治山事業費3億円 6 健康福祉費 1259.9 1374.1 114.2 1 健康福祉費 272.6 260.2 △12.4 減:生活保護費9億円 2 長寿健康費 508.2 668.7 160.5 増:国民健康保険費133億円 3 子育て・障害者支援費 324.1 289.3 △34.8 減:子育て支援施設整備費助成13億円 4 生活衛生費 8.0 6.5 △1.5 5 病院費 147.0 149.3 2.3 増:がんセンター11億 7 商工労働費 174.5 176.7 2.2 増:企業立地対策費17億円 8 農林水産費 525.6 487.5 △38.1 減:みかん園芸対策費18億円 9 土木費 1697.5 1512.6 △185.0 減:道路橋梁費147億円 減:市街地整備費10億円 10 警察費 810.5 822.1 11.6 11 教育費 3147.5 3152.8 5.2 1 教育委員会費 144.1 163.3 19.2 増:会計移管分19億円 3 中学校費 688.2 677.1 △11.1 4 高等学校費 654.8 644.6 △10.1 12 災害対策費 120.1 108.8 △11.3 13 公債費 1717.9 1650.5 △67.4 14 諸支出金 1094.1 1115.4 21.3 15 予備費 3.0 3.0 0.0 計 11,640.0 11,403.0 △237.0 H14年度以降の経理方法 借換分公債費(借換債のみ) 788.0 1,054.0 266.0 H14年度以降特会へ移管した分 総計 12,428.0 12,457.0 29.0 H13年度までの経理方法
注)増減額は各年度の千円単位までのものを比較増減した額で四捨五入したもの。
(億円)
(億円)
(億円)注
(億円未満四捨五入)
減:県税還付金32億円
(法人事業税予定納付額の還付等)
(協会への助成及び屋内外展示工事費)
増:空港建設費9億円
増:伊豆ブランド創生事業3億円
減:地域自然環境保全事業費1億円
減:県単独林道事業費2億円
減:県営林道整備事業費1億円
減:県営林事業費1億円
減:救急医療施設運営費等助成3億円
増:介護保険県負担金20億円
増:老人医療事業費負担金18億円
減:特別保育事業推進費助成3億円
減:児童扶養手当給付費4億円
減:障害者施設等整備費助成12億円
減:施設訓練等支援費負担金3億円
減:緊急地域雇用創出特別対策事業費助成18億円
増:上記未執行分の国への償還金5億円
(うち15億が花博での花の交流館などの維持管理等県の直接経費)
減:県営経営体育成樹園地再編成整備事業費6億円
減:畜産環境整備対策事業費5億円
減:県単独農林水産業推進事業費助成3億円
減:県営農道整備事業費3億円
減:街路整備費16億円
増:ガーデンパーク3億円
最後に継続して掲載している近年の大規模事業や目玉事業の事業費や箱物管理費の推移などをご紹介しておきます。
なお、箱もの管理費の多寡については、知事の詭弁に対する反論を当HPの「雑談7 B
箱もの行政を擁護する前に」に掲載しておりますので併せてご覧ください。
静岡空港 − − − − − 第二東名関連道路事業 − − − − − 小笠山総合運動公園 静岡県富士水泳場 − 参考:草薙総合運動場、遠州灘海浜公園、愛鷹広域公園を併せた管理運営費 参考:上記都市公園修繕・整備費 TSL「希望」 − − 県立総合武道館(藤枝) − グランシップ(会議・式典・イベント会場) 舞台芸術振興事業(SPAC、舞台芸術公園関係) − − 県立がんセンター − − 77億2千29万円 88億1千399万1千円 静岡文化芸術大学 浜名湖ガーデンパーク整備事業 − − − − − 国際園芸博(協会への補助含む) − − − − − 吉田公園(しずおか緑・花・祭会場) 富士山こどもの国 NEWわかふじ国体 − − − − − 参考:国体会場市町村施設整備事業費助成(補助金)→ − − ワールドカップサッカー − − − − − 東海道400年際 − − − − − 伊豆ブランド創生事業費 − − − − −
<管理等委託先>
(百億円未満四捨五入)
(平成13年度県負担分)
(平成14年度県負担分)
(平成15年度県負担分)
(平成16年度県負担分)
(平成17年度県負担分)
空港本体部は内560億円
(エコパ)
<(財)静岡県総合管理公社>
(人工芝グラウンド整備含む)
(国体会場)
<(財)静岡県総合管理公社>
(静岡県立水泳場(静岡市)含む)
(静岡県立水泳場(静岡市)含む)
(静岡県立水泳場(静岡市)含む)
(静岡県立水泳場(静岡市)含む)
(指定管理者:静岡<(財)静岡県体育協会>:富士<静岡ビル保全梶
<(財)静岡県総合管理公社>
<(財)静岡県総合管理公社>
<(財)静岡県総合管理公社>
<(財)静岡県体育協会>
<(財)静岡県文化財団>
<(財)静岡県舞台芸術センター>
(一般会計からの繰出)
(一般会計からの繰出)
(一般会計からの繰出)
(公設民営)
(備品整備費含む)
(備品整備費含む)
<吉田町>
(開園5周年セレモニー含む)
(指定管理者:小泉アフリカ・ライオン・サファリ梶j
(ソフト事業のみ)
(小笠山運動公園整備除く)
静岡県HP「静岡県の財政」・・・「静岡県の財政状況」はコンパクトに概要がまとまっており必見。「財政のあらまし」はより詳しく県財政の推移と現況を知りたい人には必読。ここまで公開している県は神奈川県などまだまだ少数。
(一連のプール金事件関連の情報隠蔽体質を見れば、情報公開県というよりも情報隠蔽県と評したほうがふさわしい本県にあって、財政に関する情報に関してはインターネット上での公開度はトップクラスだろう。情報公開をただ単に生の情報(数字)を出せばよしとするのではなく、県として加工し実際活用している成果品も含めて公開する姿勢は他部署でも参考としてほしいものである。)