質疑2

                                                       2000.09.23UP

 県民の声(koe@pref.shizuoka.jp)あて、一県民として以下のとおり質疑を行ったので公開する。

県に対する質問(2000.9.11)
県からの回答(2000.9.20)

公開質問状

1 県では3時になると体操の音楽が流れているが、誰に対するいかなる趣旨によるものか。

2 同時刻になると一部に組織的な体操の励行がなされているところがあるそうであるが、もし事実であれば、税を使って行うべき職務でない上、休息時間でも無いのであるから、違法な集団的怠業行為ではないのか。

上記に付き回答願いたい。

 御質問をお寄せいただいたことに、お答えいたします。

 まず、一点目の午後3時の放送についてです。体操音楽は、職務に支障のない範囲で、音楽に合わせて軽く体操することで、疲労感からの気分転換を図り、執務能率の向上を図ることを目的に、県が県職員を主な対象として放送しているものです。

 労働安全衛生法では、事業者は労働者の健康の保持増進を図るため便宜を供与する等必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととされており、この体操は、こうした法の規定の趣旨に沿うものであると認識しております。

 次に、二点目の服務についてです。体操に要する時間は、「職務に専念する義務の特例に関する条例」第2条第2号(厚生に関する計画の実施に参加する場合)に該当するものとして、職務に専念する義務が免除されたものとする取扱いを行っており、御指摘のような問題はないものと考えております。

担当室:人事給与室(054-221-2018)、健康指導室(054-221-2686)

1 質問の趣旨

 今回の質問は、3時の体操(3時から3時15分までに2回放送される。1回5分程度)を職務として位置付けようとする非常識な意見の出現や、総務室長が室員に体操の奨励をするなどの、最近の内部での不穏な動きに対し、県当局としての基本的な認識を確認することを目的としたものである。

2 県の回答に対する意見

 一点目の質問は二点目の質問の適法性を考察するためのものであり、これ単体ではあまり意味がないので二点目の質疑・応答について、(1)(2)で必要な基礎知識を明示した上で考察した。

(1) 職免

 まず、「職務に専念する義務の特例に関する条例」(いわゆる職免条例)について説明しておこう。
 これは、地方公務員法35条で「職員は、法律又は条例に特別の定めがある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」と規定されているのを受けた条例の一つである。
 すなわち、35条は、「法律又は条例に特別の定めがある場合は、服務に専念する義務が免除されることを明らかにした規定」であり、この法律の例としては労働基準法34条、35条、39条等々があり、条例としては休日・休暇を定めた「職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」や、くだんの「職務に専念する義務の特例に関する条例」があるのである。
 そして、この条例の細則(休暇や職免の手続方法や休憩・休息の具体的時間など)を定めた規則・規程が条例ごと定められているのである。
 「職務に専念する義務の特例に関する条例」第2条
  「職員は、次の各号の一つに該当する場合においては、あらかじめ又はそのつど任命権者又はその委任を受けた者の承認を得て、その職務に専念する義務を免除されることができる。」
 同第2号
  「厚生に関する計画の実施に参加する場合」
 「職務に専念する義務の特例に関する規程」第2条
  「職務に専念する義務の免除の承認を受けようとする者は、職務専念義務免除承認申請簿(様式第1号)により、あらかじめ又はそのつど前条の規定により委任を受けた者(以下「承認権者」という。)の承認を受けなければならない。」

(2) 休息時間

 次に、休息時間について説明しておかなければならないだろう。
 休息時間の趣旨は、「長時間にわたって継続して労働することは、勤労者の疲労を蓄積し、心身に有害な影響を及ぼし、かつ、労働の能率を阻害し、低下させるおそれがある。このような悪影響を防止するために、勤務時間の中途に休息時間を設けることが広くおこなわれている。休憩時間と休息時間は、前者は労働基準法に根拠を有し、後者はそうでない点が異なるが、それぞれの趣旨、目的は同じである。」(鹿児島重治「逐条地方公務員法」学陽書房)と解されており、ただ、休憩時間が労働から完全に開放され、自由に利用することが保障されるのに対し、休息時間は勤務時間として算入されるため、任命権者の指揮監督下での手休めの時間として職務専念義務が免除されているという違いがあるにすぎない。
 なお、休息時間について、本県では、次のように定められている。
 「職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」第7条
  「任命権者は、所定の勤務時間のうちに、人事委員会の定める基準に従い、休息時間を置くものとする。」
 「職員の勤務時間、休日、休暇等に関する規則」第5条第1項
  「条例第7条による休息時間は、4時間につき15分とする。」
 「職員の休憩時間及び休息時間に関する規程」第2条
  「職員の休息時間は、月曜日から金曜日までは午後5時から5時15分までとし、土曜日は午後零時15分から零時30分までとする。」

(3) 考察

 まず、(1)(2)のことから、休息時間は、任命権者や承認権者の変更があっても継続的かつ固定的に定められた職務専念義務を免除された時間であるのに対し、請求に基づく職免は、個別の具体的事案に応じてその時点における任命権者や承認権者の承認の下、認められるものであることが理解される。
 そして、3時の体操(以下、厚生計画という。)が後者の「請求に基づく職免」という形式の方で参加を奨励されていることが県の回答から確認できるのである。
 さて、県は、その回答の中で厚生計画の趣旨を「職務に支障のない範囲で、音楽に合わせて軽く体操することで、疲労感からの気分転換を図り、執務能率の向上を図ることを目的に」としているのであるが、これは、まさに休息時間の趣旨と同じものである。
 また、3時の体操は毎日行われることを前提にした厚生計画なのであり、かかる計画に、仮に全員が参加した場合、これこそまさに、休息時間と変わるところがないものとなってしまうのである。
 このような申請職免の運用が許されるものか、そもそも、かかる厚生計画自体が許されるのかは大きな問題である。
 考えるに、日々の継続的勤務に伴う疲労の除去は(休憩時間や)休息時間の目的とするものであり、これが継続的かつ固定的に設定される場合は、勤務条件条例主義の見地(@権利保障性A公明正大性)から、一般的勤務条件として「職員の休憩時間及び休息時間に関する規程」によって定められるべきであり、個別の具体的事案を想定した「職務に専念する義務の特例に関する条例」によって同様の効果をもたらそうとすることは、たとえ形式的に申請・承認の手続を経たとしても、実質的に条例の趣旨を逸脱又は潜脱したものというべきであり、返って係る厚生計画自体もその裁量権を著しく逸脱したものであり、違法な措置というべきである。
 すなわち、休息時間を条例で具体的に規定した以上、これと異なる趣旨の条例をもって事実上前記条例を潜脱することは認められないと解する。
 これは、「何らかの体裁さえ整っていれば公務」との安易な判断に基づき県議野球大会の公務性を主張した被告に対し「実態」に踏み込んだ上で公務性を否定し裁量権の逸脱を認定した判例の趣旨に沿った判断であり、当局は県民感覚に沿った実態に基づく是非判断によるべきである旨、ここに諫言したい。
 そこで、3時になぜ係る厚生計画が必要とされたのかを考えるに、これは、本来その目的をもった休息時間が勤務時間(8時半から17時15分)の終了時に置かれていることに起因しているのであって、これを改めることの必要性が導かれるのである。
 なぜならば、休息時間は、労働の能率回復という趣旨から、当然に勤務時間の間に置かれるべきであって、事実、国家公務員については「休息時間は、正規の勤務時間の始め又は終わりに置いてはならない。」との規定があるのにもかかわらず、(他の旅費日当などは国に準じて県独自では変えられないとの態度と異なり、)同文言は県の規則からは削除されているからである。
 もっとも、現状は、係る厚生計画に参加する職員は皆無に近く、一部の参加希望者も正規の手続を取っているものと思われることから、違法や実害は認められないが、今後、質問の趣旨で述べたように組織的な取り組みが行われすべての職員が参加し、実質的に休息時間と同様の意義を持つに至ったならば、これに対して該時間相当額の給与の返還を求める住民監査請求・住民訴訟が十分可能であり、今後の動向には注目していきたいと思っている。

(4) 補足

 今回の質疑の趣旨からは離れるが、現状の休息時間の規定には、職員の側(当局ではない)にも同情すべき事実もあるので以下参考に示す。

 世田谷行革110番の後藤雄一氏が平成11年7月29日に世田谷区職員の給与返還を求めた住民監査請求において明らかになった同区の勤務時間は次のとおりである。
 @ 正規の勤務時間
    正規の勤務時間は1日につき8時間とし(「職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」(以下「勤務時間条例」という。)第3条)、その割振りは午前8時から午後5時30分までの間で別に定める時限としている(「職員の勤務時間、休憩時間等に関する規程」(以下「勤務時間規程」という。)第2条)。これを受けて「職員の勤務時間制度の運用基準」(以下「運用基準」という。)において、基本の割振りは、午前8時30分から午後5時15分までとし、職務上の必要等でこれにより難い場合は、
(1)午前8時から午後4時45分まで
(2)午前8時15分から午後5時まで
(3)午前8時45分から午後5時30分まで
の時限で組み合わせを行うことができることとしている。
 A 休憩時間
   勤務時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間、継続して一昼夜にわたる場合は1時間30分の休憩時間を、それぞれ勤務時間の途中に置くこととし(勤務時間条例第6条)、正規の勤務時間における休憩時間は正午から午後0時45分までとしている(勤務時間規程第3条)。
 B 休息時間
  正規の勤務時間のうち、職務に支障がない限り、その勤務時間4時間について15分の休息時間を置くこととし(勤務時間条例第7条)、午前10時15分から午前10時30分まで及び午後3時から午後3時15分までとするが、職務の性質によりこれにより難い場合は、別に定める(勤務時間規程第4条)こととしている。これを受けて、運用基準において午前の休息時間は、休憩時間に連続して午後0時45分から午後1時までとし、午後の休息時間は午後3時から割振りの終了までの間における15分間としている。
(なお、休息時間を休憩時間に連続して割り振ることについては、人事院規則15−14第8条に違反するものではないとの見解が示されている(昭和33年2月7日管法−125人事院事務総長回答参照)。)

 これを本県職員と比較すれば、本県においては、世田谷区と同じく、勤務時間が8時間、休息時間も4時間につき15分と規定されているにもかかわらず、末端の規程では15分の休息時間が1回(しかも勤務時間の終了時に)しか与えられていない、すなわち、実質勤務時間途中の休息時間はないという気の毒な面もあることを指摘しておきたい。
 しかし、だからといって、脱法的手法が正当化されるものではなく、改める必要があるのならばあくまで法令に基づいた正規の手続をもって行うべきである。
 それにしても、これまでに私が改善を求めてきた公務上の必要から誤った事務慣例によらざるをえなかった事例に見られるように、不都合があれば本来組織として正規の対応策を講ずべきものに対し、問題が表面化しないならば職員の良心の犠牲の下、公務の運営を続けようとするような態度は強く批判されるべきであると思うのである。
 また、当局同様こういった事実を把握していながら改めようとしない職員団体も非難されるべきなのである。
 組織は容易に腐敗するものである。組織お任せではなく、ひとりひとりが自律的に判断し行動することを今後期待していきたい。

 (ちなみに、後藤氏は、この内午後0時45分から午後1時までの休息時間が実質、勤務時間に算入されない休憩時間であるとして「午前の休息時間」に見合う給与の返還を求めたものであるが、職員に休憩時間と休息時間の意識に境がないとの指摘に対し、当局は「平成8年2月の勤務時間制度の改正(出勤簿押印猶予時間の廃止、交替制勤務制度の導入及び本件休息時間の割振りの変更)に伴い、各所属長あてに通知するとともに、各所属事務担当者に対し説明会を実施するなど、午後0時45分までは休憩時間、午後0時45分から午後1時までは休息時間であることを職員に周知しているところである。」「午後0時45分を過ぎても食事等のため席を外していることもある」が「臨時的」なものであるなどと抗弁し、結果、請求は棄却されている。)

以上