静岡空港、赤字毎年3億円超へ〜神戸空港の示す厳しい現実〜

     2005.12.04UP   2005.12.04更新 

 静岡空港と神戸空港は、平成14年4月に国の空港整備部会で示された新しい需要予測の手法に基づき、共に平成14年度に需要予測の見直しを行った。静岡空港は「静岡空港需要予測等検討委員会」、神戸空港は「神戸空港需要検討会」で審議され、両会ともに専門家・学識者によって構成され慎重に審議されたという。また、両需要予測ともその後の第三者機関による評価で国のガイドラインやマニュアルに沿って行われた最新の手法による需要予測であるとして「適切」と判断されている。ただ、大きく運命が異なった点といえば、神戸空港は平成18年2月の開港間近なのに対して、静岡空港は未だ用地取得もなされていない状況にあるということであろうか。

 今回は、この神戸空港の需要予測と現実のギャップを基に、以下に、静岡空港の開港時の現実を予測してみたい。

 神戸空港は開港を間近(2006.2.16)に控え、航空各社による定期便の運航ダイヤが出揃った。これを実績として需要予測と比較すれば次のとおりとなる。

神戸空港
平成14年度需要予測(平成17年度就航見込)
平成17年度実績(開港時就航予定)
基準機材(国交省基準)
機材・便数(往復)
着陸料収入
機材・便数(往復)
着陸料収入

Jサイズ(560人乗)

B747-400D(569人)

1便
14億4,400万円

就航予定なし

7億7,900万円

Lサイズ(410人乗)

B777-200(382人)

5便

B777-200(389人)

3便

Mサイズ(200人乗)

B767-200(235人)

12便

B767-200(260人)
B767-300(288人)

3便
3便

Sサイズ(100人乗)

B737-500(126人)

8便

B737-400(156人)
A320-200(166人)

11便
5便

PRサイズ(50人乗)

SAAB340B(36人)

1便

DHC8-400(74人)

2便
27便
27便

出典等)
基準機材:国土交通省「平成13年度航空需要予測手法に関する調査報告書」の「機材投入基準に基づく路線需要毎の機材別便数」
需要予測機材:神戸市「神戸空港整備事業の費用対効果分析について」
実績機材:各航空会社プレスリリース
着陸料収入:神戸新聞2005/11/30掲載の神戸市による試算

注)大型機は、東京1便、那覇2便のみ。
(沖縄便は、沖縄振興特別措置法により着陸料1/6の軽減があるため大型機でも他空港便の小型機より安価な着陸料となる)
また、国際便のため国に「税関、入国管理、検疫」の整備(予算措置)を求めているが、現在のところ海外の定期便の就航はなく、不定期チャーター便での運航となる見込み。


着陸料収入の減少の原因は、「使用航空機が着陸料の安い中小型機中心となり、市も独自の減額制度を導入するため」(共同通信11/29)であるが、便数は見込と同じ27便である。しかし、これとて、発着枠の取り合いとなっている羽田便とそれ以外の地方便に分けると明暗がはっきりする。

神戸空港
比較項目
平成14年度需要予測(平成17年就航見込)
平成17年度実績(開港時就航予定)

羽田便

路線数

1路線

1路線

便数(機材)

5便(J1、L2、M2)

11便(L1、M2、S8)

着陸料収入

4億円

5億円

利用者予測・推計

93万人(※210万人)

102万人

羽田便以外

路線数

10路線

6路線

便数(機材)

22便(L3、M10、S8、PR1)

16便(L2、M4、S16、PR2)

着陸料収入

10億円

3億円

利用者予測・推計

226万人(※370万人)

154万人

路線数

11路線

7路線

便数

27便

27便

着陸料収入

14億円

8億円

利用者予測・推計

319万人(※580万人)

256万人

注)
・ ※は静岡空港の需要予測予測に相当する神戸空港の需要予測値(なお、実数値は発着制限で実需として神戸が予測した需要)
・ 平成17年度実績(開港時就航予定)における利用者推計値は国内路線の平均搭乗率63.7%(JAL)で推計


羽田便以外では当初見込みの3割の収入に過ぎない。

ここで静岡空港と神戸空港の需要予測を比べてみよう。

 

神戸空港
静岡空港

 

平成14年度需要予測
(平成17年度開港時)
発着回数制限後予測
(平成17年度開港時)
平成17年度実績
(開港時就航予定)
平成14年度需要予測
(平成18年度開港時)
発着回数制限後予測
平成?年度実績
(開港時就航予定)

羽田便

210万人

93万人

102万人

なし

制限なしのため
同左
就航未定

新千歳便

67万人

42万人

32万人

50万人

福岡便

66万人

41万人

就航なし

24万人

鹿児島便

39万人

25万人

30万人

17万人

那覇便

67万人

41万人

63万人

15万人

その他

131万人

77万人

29万人

なし

580万人

319万人

256万人

106万人

注)
・ 発着回数制限後予測とは、神戸空港の能力を1日60回(5回/時間)の離発着を上限と見込んで制限した需要であり、静岡空港の需要予測では能力制限をしていない(する必要もない需要)。
・ 平成17年度実績(開港時就航予定)は国内路線の平均搭乗率63.7%(JAL)で就航機材定員から推計


この神戸の現実を基に静岡空港の実績を推計すれば、

静岡空港
平成14年度需要予測
(平成18年度開港時)
実績推計
推計就航便数

新千歳便

50万人
(L 1便、M 2便、S 2便)

31万人

Mサイズ(2便)Sサイズ(1便)

福岡便

24万人
(S 4便)

15万人

Sサイズ(2便)

鹿児島便

17万人
(S 3便)

10万人

Sサイズ(2便)〜最小:就航なし

那覇便

15万人
(S 2便)

14万人

Sサイズ(2便)

106万人

70万人

Mサイズ(2便)Sサイズ(7便〜5便)

注)
・ 実績推計とは神戸空港での需要予測に基づき現実に就航の決まった路線(羽田除く)における「※実績計(77万人)/需要予測計(126万人)」を静岡空港における需要予測に乗じた推計値。ただし、沖縄便は沖縄振興特別措置法により着陸料等の軽減があるため個別に計算。
(※実績計は国内路線の平均搭乗率63.7%(JAL)で就航機材定員から推計したもの)


この推計及び神戸空港における航空会社の就航のために減免した着陸料設定を用いて静岡空港の着陸料を推計すれば、

静岡空港
需要予測時の着陸料収入見込み
推計就航便数による着陸料見込み

新千歳便

254百万円/年

98百万円/年

福岡便

105百万円/年

43百万円/年

鹿児島便

79百万円/年

43百万円/年〜0百万円/年

那覇便

53百万円/年

14百万円/年

491百万円/年

198百万円/年〜155百万円/年

注)
・ 静岡空港における需要予測時の着陸料収入見込みでは、神戸空港では考慮された那覇便の軽減1/6さえ考慮されていない。また、他路線の着陸料も各機材とも神戸より高額に設定している(L:神戸235,200静岡239,000、M:神戸146,600静岡157,000、S:神戸62,200静岡72,000)。
・ 神戸空港の現実の着陸料は、需要予測時参考にした国の第2種空港が国交省の告示金額の2/3(那覇便は1/6)なのに対し、地方便は1/2、那覇便は1/6と定めた。


一方、静岡県が「他県の空港の実績などを参考に試算」した年間の維持管理費は

項         目
金  額

滑走路等の管理

147.5百万円

照明施設の保守管理

 84.0百万円

航空保安施設定期検査等手数料

  1.2百万円

消火・救護施設の維持管理、車両管理

 47.5百万円

管理事務所経費

179.0百万円

駐車場維持管理

  7.7百万円

周囲部管理

 53.3百万円
520.2百万円

であり、県の需要予測が神戸空港並に正しく計算されていようとも、現実には、3億円以上(3.2〜3.7億円)の赤字は必至な状況である。しかも、神戸も同じであるが、赤字に参入されない空港利用の促進名目の公費支出は広報宣伝始め多岐・多額となるであろうことは想像に難くないのだ。

 しかも、静岡県の需要予測は、基となる航空旅客流動量の2倍近い水増し改ざんや羽田空港や中部国際空港よりも安いという矛盾した運賃設定など不合理な点が多く、より厳しい現実も確実である。

 さらに、静岡空港運営会社の運営にも厳しい現実が待っている。
 県はターミナルビルの管理・運営に加えビルの建設、滑走路などの基本施設の管理・運営も民間の運営会社に委託する意向を示し、収支予測として国内線106万人国際線32万人を前提に年間収入が6億7千万円(うち着陸料6億3500万円)、支出が5億2千万円と試算。空港の基本施設だけで年間1億5千万円の黒字が確保できるとの見込みを、静岡空港運営会社参加の意向の10社に提示した。(10社とは、静岡銀行、スズキ、時之栖、東芝機械、富士テクニカ、鈴与、静岡鉄道、スター精密、ヤマハ、ハマキョウレックス)
 また、知事は2004/3/2の産経新聞上で、空港施設運営会社への出資等について、「県に出資を求めようという動きは出ていません」「そんなことを考えるような柔な経営者の皆さんではないと思います」と述べていたが、神戸空港の厳しい現実を目の当たりにして、早くも一部企業が「運営会社の役割などが明確でない以上、県にも応分の負担を求めたい」(2005/12/2日本経済新聞)などと言い出し、県は正式に要請があれば応じる方針であるという。
 地方空港初の民間運営会社のはずが、結局、「第3セクター」となる可能性が高くなってきたのだ。これは、企業が例えば航空燃料の納入などで収益を得る中で、運営の赤字は県民が被るという悪しき時代の定型パターンの再来である。このような状況を容認して参加するならば、静岡空港運営会社参加の意向の10社は県民を食い物にする企業のそしりを免れまい。違法な公道実験を行っていたスズキや、違法に路線バスの運行を途中で止め補助金を得ていた静岡鉄道など、参加資格を疑うような企業も参加している。企業として社会的責任を自覚するのなら、県税に頼らず運営する覚悟をもって参加すべきであろう。まして、役所の予測を鵜呑みにせず自立した判断のできない企業は、後に赤字債務の応分の負担をなすべきは当然というべきである。

 そしてなによりも、本当に静岡空港が必要なのか?近隣空港とのアクセス向上の方が優先されるべきではないのか?2500m滑走路を必要不可欠としての強制収用がどうして可能なのか?再度、皆々に問いかけたい。

2005.12.4