負の資産「静岡空港」とは? 〜県庁が県民に示した虚偽の結末〜

     2008.3.30UP    

 静岡空港とは、「需要がある、採算性はあると嘘をつき強制収用という強権まで発動して作ったはいいが、需要なく、天下りポストの確保と航空会社撤退回避のため遊興・観光旅客にまで県民の税金をばら撒く赤字垂れ流し放蕩空港」である。

 平成8年に当時の運輸省から設置許可を得た静岡県(石川嘉延知事)は同年空港用地の買収を開始し、強制収用という手段を講じた末、平成19年3月用地所得を完了した。

 そしてついに、2度にわたる開港延期を経た平成21年3月の開港(予定)まで、残すところおよそ1年となった今、以下に静岡空港の虚と実を取りまとめたい。 

1 県が県民に示したばら色の虚偽予測

 まず確認しておきたいのが県が国土交通省所管の財団法人運輸政策研究機構に県民の税金2,609万円(委員報酬等除く)を投じて2003年に見込んだ最新・最終となる静岡空港の開港時の利用見込みだ。

静岡県による静岡空港の国内線需要予測(算出受託機関:財団法人運輸政策研究機構

静岡空港
開港初年度の利用者見込み
開港初年度の就航見込み
開港初年度の着陸料収入見込み

新千歳便

50万人
大型ジェット 1便
中型ジェット 2便
小型ジェット 2便

25,258万円/年

福岡便

24万人
小型ジェット 4便

10,950万円/年

鹿児島便

17万人
小型ジェット 3便

8,213万円/年

那覇便

15万人
小型ジェット 2便

5,475万円/年

106万人
14便

4億9,896万円/年

注)
静岡空港における費用便益分析時(最終)の着陸料収入見込みでは、神戸空港では考慮された那覇便の軽減1/6さえ考慮されていない。また、他路線の着陸料も各機材とも神戸より高額に設定している(L:神戸235,200静岡236,000、M:神戸146,600静岡153,000、S:神戸62,200静岡75,000)。
また、神戸空港の現実の着陸料は、需要予測時参考にした国の第2種空港が国交省の告示金額の2/3(那覇便は1/6)なのに対し、地方便は1/2、那覇便は1/6である。

 この需要予測について、石川嘉延知事は県議会で以下のとおり信頼性を強調するとともに、維持管理費に対する着陸料収入という意味での採算性が十二分に確保されるとまで答弁しているのである。

2003年6月27日(県議会)

正しい需要予測のため106万人予測を再々見直しすべきとの質問に対し、
企画部長「今回の需要予測は、より精度の高い、十分に信頼性のある予測結果と考えており、これを見直す必要はないものと考えております」
知事「需要予測については、先ほど企画部長が答弁したとおりであります」

新しい需要予測値に基づく収益性についてどのような見解を持っているのかとの質問に対し、
知事「私が申し上げます収益性は、維持管理費、それに対して空港着陸料。これが賄える収入があるかどうかと、そういう意味での収益性と、ご理解いただきたいのですけれども。先ず他空港の例から見ますと、静岡空港の場合、今のような利用実態を考えてまいりますと、国際便とか小型機の利用もありますが、そういう利用実態を考えていった場合に維持管理費としては5億2千万円程度と見込まれます。それに対して国際線、国内線合わせて6億7千万円程度の着陸料、これは、現状におきます他空港の着陸料を参考にはじいている訳ですが、それぐらいの収入が見込まれる。従って、そういう意味での採算性は確保されるのではないかと、十二分に確保されるというふうに踏んでいるわけでございます。」

さらに需要予測の正当性を強調するあまり、
知事「人口とか、経済活動に比例して航空需要というのは発生するものでありますよね。もしこれを否定するのだったら、そもそも需要予測は成り立ちませんね。否定する人があったら、堂々と名乗り出てきてもらいたいと思うのですね、私は。」「広島県の人口はといいますと288万人で、県内総生産が10兆8,170億円ある。本県はその1.3倍、1.4倍あるわけです。と考えていきますと、当然百万人くらいにはゆうに達するわけですね。」→(反論:
追加論点4(県勢と需要)

2003年9月30日(県議会)

106万人予測について、
知事「今回の需要予測は、より精度の高い、十分に信頼性のあるものと考えており、事業評価監視委員会(委員長:向坂達也)からも、予測結果は妥当との評価を頂いております。」

(参考)事業評価監視委員会(需要予測を特に評価していたのは委員長の向坂達也と木宮健二常葉学園理事長)

 もちろんこれだけではない。2003年の記者会見では次のようにも述べている。

海外便9路線について実現可能だと考えているかと問われ、
知事「わが国のアジア地域、あるいは、この飛行場を使って、飛行できる範囲内の航空需要動向、こういうものから想定して、可能性を我々は期待できると踏んでいる数字です。」


 さらに昨年2月には、

 知事(今年2月のNHKの特番):静岡空港の収支について「建設費は利用者で負担するような構造になっていないので採算性を考える必要はない。採算の対象となるのは空港の維持管理の経費のみ。着陸料などで維持管理費が賄えるかが議論の対象。需要予測どおりなら採算は取れることになっている」 「グランシップは8億円くらいの持ち出し(県の予算で埋めている)となっている。空港は着陸料が丸々入ってこないとしても、今の想定では5億円強で、グランシップの赤字に比べはるかに少ない。」

などと、無責任発言。

2 現実の需要と採算性

 以上、県の示したばら色の予測はどうなったのか。以下開港を1年前とした現在の状況を取りまとめる。

 平成20年3月30日現在の就航確保状況は

需 要 達 成 見 込 み(平成20年3月30日現在)

静岡空港
開港初年度の利用者見込み
開港初年度の就航見込み
開港初年度の着陸料収入見込み

新千歳便

14万3千人
ANA 小型ジェット160人 1便
JAL 小型ジェット150人 1便

5,475万円/年

福岡便

18万4千人
JAL 小型ジェット150人 2便
JAL 小型ジェット100人 1便

8,213万円/年

鹿児島便

0人

0万円/年

那覇便

7万4千人
ANA 小型ジェット160人 1便

2,737万円/年

40万人
6便

1億6,425万円/年

注)
・利用者見込み・着陸料見込みは需要予測時の県の設定搭乗率63%(=当時の全国日平均の実績搭乗率)と費用便益分析時の着陸料(L:236,000円、M:153,000円、S:75,000円)に従った。
・鈴与のリージョナル便は大手と競合しない小松や新潟、松山など地方空港との路線に特化する方針で夏までに就航先を決定する見込み。
・<参考>海外路線は需要予測9路線(着陸料見込み1億4,400万円)どころかアシアナ航空によるソウル便1日1便(県設定値SJ78,000円/回として2,847万円)のみ(ダイヤは早朝ソウル発昼前静岡着、午後静岡発)。


 106万人の予測に対して40万人。これは県の予測の38%に過ぎない結果だ。

 特に需要予測に疑問を持って反対してきた人々が大いに疑問があるとした「新千歳便」は50万人予測に対し14万人と、3割にも満たない。

 これでも需要予測の精度が高いといえるのか?十分に信頼性があるなどといえるのか?是非知事に答えてもらいたいものだ。

 採算性も、県の想定する「維持管理費」5億2千万円程度に対し、着陸料は2億円にも満たない。

 知事が「十二分に確保される」とした採算性の定義からしても採算性がないことは確実だ。

 その上、空港につぎ込む予算が半端ではない。

 わずか半月程度の開港期間の平成20年度予算に、建設費以外にも多くの予算が計上されている。
項         目
予 算 額
説  明

空港管理運営事業費

1億7,000万円

空港基本施設の管理運営に要する経費

富士山静岡空港推進費

 1億7,700万円

エアポートセールス、空港利活用促進支援、利用促進広報等を行う。

空港需要拡大事業費

  3,200万円

海外及び国内旅行事業者等との連携により航空利用者の確保、促進活動を行う。

重点広報事業費

 2億4,300万円

富士山静岡空港の開港等県政の重要施策について、国内外へ向けて効果的に広報を行う。

空港開港期観光マーケット開拓事業費

2億5,000万円

富士山静岡空港の開港に向けて、国内遠隔地や東アジア地域の新規マーケット開拓を行う。

富士山静岡空港利便性向上事業費

  31億8,600万円

旅客ターミナルビル整備資金の貸付、公的利活用スペースの整備等を行う。(うち、30億円が鈴与など12社が出資する運営会社への低利貸付)

静岡県ソウル事務所運営事業費

 5,100万円

静岡県ソウル駐在員事務所の運営を行う。

空港部企画調整費

2,500万円

空港施策の推進に必要な調査等を行う。


 これ以外にも胡散臭い予算として、空港整備推進事業費交付金2,000万円(地域と協力して空港整備の推進を図るための諸活動を行う地元市町への助成に要する経費)や生活生業・地元対策事業費3億7,800万円(空港建設により影響を受ける地権者の生活生業対策に要する経費)など、空港がなかったら支出されることのないものが予算計上され、開港後も続くおそれがあるのである。

 今年3月の議会では、パック旅行助成、団体利用送迎バスへの補助、旅行会社へのチャーター便運行支援・広報費補助、航空会社のナイトステイ便に係る乗務員宿泊料・交通費補助に加え、何とターミナルビルの使用料の補助までするということを公表した県。

 ターミナルビルは、リージョナル事業に参入予定の鈴与や古紙偽装で有名な東海パルプなど12社が出資する運営会社が建設し使用料も同社が言い値で設定する。県が自前で建設すれば県が使用料を同社に払う必要はもちろん無いが、わざわざ民間の効率経営を建前に民間に建設させたからくりが白日のものとなった格好だ。県は管理運営委託費とは別に、毎年公用スペース分の使用料と航空会社のスペース分の使用料補助金を払い続けなければならないのだ。

 結局、様々な負担増を被る県民の疲弊をよそに、県は私的に観光旅行する国内外の空港利用者の負担軽減のために、空港運営会社に出資した企業のために、その会社に天下りする県職員のために、県民の税金を使おうとしているのである。

 そして、このような結果となった責任はだれも取らない。県民の代表たる議会の承認を経て進めてきたからというが、その判断の前提たる需要予測に虚偽があったのである。

 県に責任がないのなら誰に責任があるのか?受託した国土交通省の財団法人運輸政策研究機構か?専門家として需要予測を導いた屋井鉄雄、兵藤哲朗、林山泰久らか?同じことを繰り返さないためにも、責任という言葉を死語としないためにも、明確にすべきである。

 負の資産「静岡空港」がわれわれに教えてくれた過ち、これをごまかすことなく素直に受け止め、学び生かすことだけが唯一の資産であることに全ての県民は今気づかなければならない。

2008.3.30