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        ランボォの主より…

 樋口一葉生誕120年を記念して制定されましたやまなし文学賞。今年度の小説部門は全国から323編の応募がありました。平成20年2月27日、三浦哲郎、坂上弘、津島佑子三氏による最終選考の会が開かれました。

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 「家族ごっこ」
 山梨日日新聞社  \900(税込)





選評
  
  近来まれな秀作     三浦哲郎


 「家族ごっこ」の秋元朔さんには、数年前にも佳作になった「父の外套」があり、今回の作品がそれを越えるものであるかどうかが注目されたが、選考委員会全員が一致して前作をはるかに超えた秀作であると判断した。八ヶ岳南麓清里高原の旧開拓村に住む八十三歳の勇吉と、孫娘に突然押しつけられたに等しい曾孫翔太との暮らし、をれに翔太を可愛がって入り浸り、半同棲を公言してはばからない近所の女友達のお恵さんを交えた、あたかも本当の家族であるかのような心暖まる暮らしのさまが描かれている。なによりも味わい深く達意の文章が素晴らしい。ところどころに挿入される方言も正確で過不足ない。一読しただけでは汲み取れない余剰に富んだ作品である。
   
  感想     坂上 弘


 秋元朔氏の「家族ごっこ」は皮肉にも取れる題だが決してごっこではない。開拓地の四世代が一つの額におさまっていて、くりかえし読みたくなる作だ。ケレン味のなさに舌をまく。ジョン・ディアーというトラクターはアイオワ州に本社を持つアメリカ農業発展を象徴する鹿マークのついたもので、戦後の日本もお世話になった代物だが、うごけなくなった八十三歳の勇吉との対比が鮮やかだ。が、何よりも、勇吉の内面を外側からえがく、作者の意志と暖かさが感じられた。
  
  土地に流れる時間      津島 佑子


 今回の受賞作となった秋元氏の『家族ごっこ』は、八ヶ岳山麓の清里が舞台になっている。清里はもともと厳しい風土のところで、酪農のために移り住んだ開拓民の苦労も相当なものだったらしい。その開拓民の「生き残り」は、現在、観光客で華やかににぎわうペンション村とは谷をはさんで、ほそぼそと生活を続けている。
 作品の主人公はひとり暮らしをつづける八十三歳の勇吉だが、事情で曾孫に当たる三歳の幼児を預かる羽目になる。その幼児かわいさにお恵さんという七十八歳の女性が、勇吉のもとに頻繁に通い、幼児の世話を手伝う。そのお恵さんもふとした事故で死んでしまうが、勇吉はあいかわらず、曾孫の世話をつづけなければならない。
 清里という土地に今まで確かな感触で流れてきた時間と、これからもつづくはずの時間のあてどのなさが、磨き抜かれた文章で過不足なく、しかもユーモアをたたえつつ描かれている。地方の問題はこれからどんどん、小説で描かれるべきなのだし、その動きはすでにはじまっているらしい、と痛切に感じさせられた。


 第16回やまなし文学賞を受賞しました!!!


 私のペンネームは「秋元朔」です。