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製甲(アッパー)基本作業【専門実技】『1』

さて、今回より本格的な靴づくりに入ります。靴は、数多くの部品の組合わせで出来ていますが、その中でも最も大きい部品である「製甲」から作業を進めていきます。製甲はいわば「靴の顔」で有り、靴を買うときに、一番先に目を惹かれる部分です。

また、このページは、長くなりますので、「型入れ・裁断作業」→「漉き・折り込み作業」→「縫製作業」と随時ページを(連続で)開いてゆきます。宜敷くお付き合いください。

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型入れ・裁断作業編  


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『1』 型入れ・裁断作業


 型入れ・裁断作業に付いての基本知識

型入れ・裁断作業とは、靴(底材関係以外で、アッパーなど)に必要なあらゆる部品を、あらかじめ決められた甲材料から、裁断機と抜き型、あるいはカッターと型紙を使用して型入れし、裁断する事を言う。

裁断機の操作は割合に簡単であるが、カッターによる裁断は正確さの点で相当の熟練を必要とする。しかし、最近では試作品・特注品・あるいはごく少量の生産を行うとき以外にはあまり採用されなくなっている。

どちらの方法で作業を行うにしても、材料から必要な部品を裁断することは同じであり、「如何にして品質を維持し、材料の無駄をなくし、能率良く作業をする」ことである。


材料について

よりよい裁断作業を行うためには豊富な経験と、精密な材料の知識が必要であるが、ここではアッパーに使用する主な動物の革に付いて記してみます。

材料の種類

アッパーは主に動物の革を鞣したものが使用されるが、その種類は牛・山羊・羊・豚・カンガルー・馬・その他。また、爬虫類等ではヘビ・トカゲ・ワニ・などがあげられる。

適応性と弾性

靴におけるスタイルの美しさも品質価値として重要な要素であり、平面な革の部品が、接合、縫製、釣り込み等の作業の結果、出来上がった靴の靴型を抜いた後も、美しい立体型を維持出来るのは、革の適応性といえる。

さらに靴を履いて歩行中も違和感を与えず、靴を脱いた後も原型を留めているのは、革に弾性が有るためである。

したがって、適応性によって靴は「靴型」通りの形になり弾性によってその形が保持されているといえる。

吸・放湿性(通気性)

革靴を履いた場合比較的足の蒸れが少ないと言われている。それは、革の持つ独特の繊維構造が足の水分を吸収しさらに、外部に放出しているためで、つまり通気性が有るということである。このことは、人工皮革の靴を履いた場合に違いが良く判る。

強度と伸張

革は、破れる前に、大変強いひっぱり強度とよく伸びる伸張力という両性質を持っている。こうした性質は使用する動物の種類や製革法によって異なる。

表面の特徴

革の表面は、たいへん応用自在で、「染色が容易」で、いろんな「仕上げ」にすることもできる。

加工と繊維の容易さ

革は接着したり、縫ったり、漉いたり、切ったりすることが出来、非常に加工がしやすい。


材質

革は部分によって材質が異なり、一般的な判断の目安としては、動物が生きているときに、膨張や伸張を一番受けなかった箇所が「良い材料」の部分といえる。

一般的な区分を以下に示します

バット 

尻から背中に沿って、デリケートな内蔵器官を覆っているので、一番頑丈な部分である。表面(銀面)の毛穴の密度、なめらかさ、厚み等、最も品質の優れた部分である。

ミドル

厚みはやや薄くなるが、銀面も良く、良い品質の部分といえる。

ショルダー

銀面の細かさは維持されているが、血筋が多くなり、厚みも極端に薄くなるものがある。

ネック

成長の跡の縞模様(トラと言う)が入っている場合が多く、銀面も荒くなり主要な部分には向かない。

シャンク

銀面は思ったほど悪くはないが、厚みが無く血筋も太いものが多くなる。しかも、伸張度、強度の差が著しく、方向性の見極めが重要である。

ベリー

厚みが無く、傷跡・皮膚病の痕が多くみられ、銀面も荒い場合が多い。


伸張(伸び)について

革の種類や年齢、鞣し方、銀面処理の方法等にもよるが、革の伸張度が左右される。しかし、すべての革(牛・ゴード等)の伸張方向と、繊維の引き締まった強さの方向は、おおむね一致している。

下図は、「強さの方向」を示したものだが、「伸張方向は強さの方向に対して直角の向き」になる。

繊維組成の強さの方向


品質

革の品質の良否は、部分的には前記材質の区分と一致するが、一枚の革の品質を考えるとき、下記の要素も考慮すべきである。

(イ) 材質の程度は、動物の年齢(若いほど良質)による。銀面の細かさと柔軟性が重要。

(ロ) 材質の均一なこと(厚み・銀面・色などにムラが少ないこと)。

(ハ) 革の形が、四角に近いものほど型入れがしやすい。

(ニ) 銀面の傷が少ない(生きている間に受けた傷・焼き印・皮膚病等)ほど良い。


アッパーを裁断するための必要条件

基本的な各部品の名称を、内羽根(バルモラル)のデザインで、例示します。


各部品の品質条件及び伸び方向の適正

飾り革

アッパーの部品で最も目立つ場所であり、銀面の良さ、ツヤの出具合など外見の良さが最も重要。先芯で固められるため、厚み・伸びはあまり問題にはならない。

爪革

外見の良さと、丈夫さが要求される。歩くとき、屈曲による大きな圧迫と張力に耐えうると同時に、足の運動機能に適応した一定の伸張力必要とされる。したがって「バットとミドル」から裁断されることが望ましい。

(ただし、ミドルにトラが多い革を使用する場合、靴の前後方向にトラを入れることがあり、「伸びの原則に反する」ことになるが、その靴のレベルに合わせた判断が必要)

腰革

腰革は、前側で爪革と接合し、後側で内外の腰革同士を縫い合わせるので、飾り革、爪革の残りの革から裁断するとはいえ、接合部で大きな違和感を与えない工夫が必要である。

伸びの方向は重要な要素であるが、月型芯で補強される部分で、いかに薄い材質の部分を利用し得るかが、歩留まりの大きな要素にもなっている。また、靴は外側の本が目立つので外側をよりよい品質にするのが望ましい。

舌革・市革(棒市)

上記の部品を裁断した後に残った部分の使用可能な革から採るが、市革(棒市)は外見が重要であるが、舌革はそれほどでもない。


裁断作業

アッパーにとって第一の必要条件は、底付けされて、着用時にその形が保持されているということである。

従って最も大切なことは、裁断片の形状が靴の必要条件に必ず合うようにするため、裁断するとき、手裁断の場合は型紙にぴったり合う正確な線をまもることである。

また、、すべてのアッパー部品は、伸び方向と強さの方向が「爪先に対して合うように」、すなわち、<合わせる繊維の方向が踵から爪先に走るように裁断>されることが望ましい。

これを無視するのは特別な場合のみである。たとえば、張力が前部のストラップに働いているオープン・トウのサンダルを裁断するとき。または、緊密な繊維組成が脚を縦に上がることが必要な婦人用ファッション・ブーツの脚部を裁断するときである。

左右合わせ

一枚の革は、背筋を中心に左右対称に型入れ裁断するのが理想であるが、実際には革傷その他の要因でそのように行かない場合が多い。一足の靴が品質と材質だけでなく、外見上も調和するようにそれぞれ左右の部品の裁断には綿密な注意が必要である。

革の傷に付いて

材質についての原理は全ての革に共通しているが、銀面と色の違いは個々の革特有のものである。さらに、一枚一枚の革には、それぞれ注意し避けなければならない独自の欠点がある。

従って、靴になってから見えるところに傷が入らないように、裁断する作業者は型入れの配列を考えるとき注意深く革を調べる必要がある。

革には、不規則にハギ傷、引っ掻き傷、ダニなどの虫さされの痕、その他がある。比較的目立たないものでも、釣り込みの時に強く引かれたるすると、傷が開き「仕上げ」をしてもカバー出来ないものもある。そのような傷の場合、型入れして良いか悪いかは、その人の経験と勘に頼って判断しなければならない。

型入れの原則、革の節約

材質・品質の良い部分から、飾り革、爪革、腰革の順に裁断するが、爪先革を採った残りの革の形状に注意を払い、腰革が無駄なく入るスペースを考慮し、中途半端な形で革を残さないように型入れをする。

伸びについては、爪先革は出来るだけ約束ごとを守り、腰革は図示したように厳しく守る。

傷、皮膚病等の欠点などの絶対に見えてはいけないものは、釣り込み代・貼り込み代などの隠れる部分に、比較的軽度なものは爪革・腰革の内踏まず部及び底に近い部分に利用し、極力革の無駄を少なくすることを心がける。

ただし、そのために本来型入れすべき場所でない部分まで利用するのは、品質の低下を招き、良い裁断とはいえないので注意しましょう。


裏革についての型入れ作業

裏革については甲材料によって素材は変わってくるが、爪先側に使用する部品は足あたりが良く柔軟性の良いもの。腰裏部分は、裏革を使用する場合は比較的良質の部分を使うようにすると良い。


型入れ裁断作業は以上です。

次回は『漉き・折り込み作業』です、どうかご期待下さい。


★ この内容は、営利を目的とした無断転載・出版は、堅くお断り致します。  革靴職人 応言司

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