子どもの心探検隊 「子どもの心・親の心」岡空輝夫(小児科医)

Vol.1 〜 三つ子の魂 百まで?〜 


「親の心子知らず」という言葉がありますが、逆に子どもの心を親は知っているのでしょうか?一緒に子ども達の心理状態について勉強してみましょう。

脳の発達は脳神経細胞から伸びる突起が互いに絡み合いを密にしていくことです。1歳半から2歳半の1年間は特に大切で、それまで逆らったことのない子が、ある時から急に親たちの言うことをきかなくなります。何でもかんでも「いや!いや!」の連続です。親としては、今からしつけておかないと、ということで力で抑えつけようとしますが、子どもはますます反抗的になります。さらに、「いやだ、いやだ〜」の連続になります。

これは何故おこるのでしょうか? それは、脳の発達によって子どもに自己認知能力が獲得された(自我の芽生え)のです。 子どもは芽生えた自我を周囲から否定されまい、抑えつけられまい、無視されまいと望んでいます。この時期、強く抑えれば、子どもはますます自我を守り反抗心が強くなります。親の願いとはさらに離れてしまいます。 このとき親は子どもに芽生えた自我を容認することが必要です。
 自我を容認したことを子どもにどうすればわかってもらうことができるでしょうか?

内藤寿七郎先生は、命令口調ではなく、子どもが自発的に言いつけられたことをやりたくなるように、「何々やれるよね、やろうね」と自我の擁護に夢中になっている子どもに優しく語りかけること、その際、きっと言うことをきいてくれると信頼しながら子どもの目を見つめることを強調されてます。 反抗心が強い方が良いという意見もありますが、それは自我が強いことと解釈されます。この時期は反抗心のほかに、自己中心的であるために嫉妬
心も湧きやすいのです。
下の子が産まれてからは、上の子には親、特に母親の『愛の目』を注ぐことが必要です。あなたはお兄ちゃんだから、お姉ちゃんだから辛抱しなさい!と一言で片づけてはいけません。下の赤ちゃんが寝ているときには、抱っこしてしっかりと甘えさせてやることも必要です。

三つ子の魂は本能的な働き(脳の旧皮質)とされており、知的な作用(脳の新皮質)は受けていないとされています。知的な作用をつかさどる新皮質は、満3歳ごろから活動しやすくなります。旧皮質の心の傷は、その後治ったように見えますが、思春期に再び燃え上がり、問題行動となってくることも少なくないと考えられます。
したがって、反抗心や嫉妬心などの心の傷を深くしないように細心の注意を払って育てることが大切です。要求に応じて、物だけを与えることはいけませんが、子どもとはいえ、一人の人格のある人間として、愛情をもって接することが大切と思います。
お金や物を与えるのではなく、時間を少し割いて、たっぷりの愛情を注いでください。きっと、すてきな子どもに育ちます。

Vol.2 〜 子どもの心が育つ時 〜 


大人もみんな昔は子どもでした。 昔を思い出しながら、子どもの心を探検してみましょう。
今回は2回目として、小中学生の子どもたちの心に迫ってみました。

幼児期は話しをしても十分には分かりませんが、小学校に入学する頃には、話せばある程度は分かる状態ができあがってきます。そうなると、愛情を求める欲求、自分の力を出したいという欲に加えて、人に勝りたい、人より力が強くなりたい、勉強の面でもっと優越した位置を占めたいといった欲が出てきます。 競争心というんでしょうか? でも、自分自身を向上させるという意味において、とっても大切なんですね。 結果はどうあれ、がんばったときには誉めてあげてください。 

4年生くらいになると、知識欲が出てきて、外の世界を知りたい、確かめたいという方向が出てきます。
いわゆる、知的好奇心の芽生えです。図書館に行って自分の興味にあう本を探し求め、夢中になることもあります。ところが、親や学校の先生は子どもが興味を持っていることよりも、学校で教える知識、つまり勉強を重視して、子ども自身の興味を圧迫しがちです。もちろん、学校の勉強も大切ですが、興味を持ったことを探求する姿勢を学ぶ絶好のチャンスです。詰め込みの知識を丸暗記するより、自らすすんで学ぶことを身につけることの方が大切ですね。 温かく見守ってやって下さい。 

中学2年生のころから、外を見たいという知識欲が、その視線を自分自身に切り替わってきます。
つまり、鏡を見る回数が増えてくる、服装を気にするようになります。ませてくるわけですね。度をすぎない程度のおしゃれは認めてやってください。 身体についての関心、心遣いは、同時に自分の能力、性格、態度、習慣などに広がり、悪いところを直して、よりよい生活を目指して努力しようという意欲が生まれてきます。向上心です
ね。人間が変わるという意味でこの年頃(中学校2年生ごろ)が、人の一生のうちで最も大切な時期と考えられます。子どもは親(大人)の真似をして育ちます。そのときに大切なことは、親なり、先生なり、子どもの手本になる人の存在が必要だと言うことです。子どもの手本は大人なのです。

それでは、子どもの心を育てるにはどうすればいいのでしょうか? 常に子どもと接していること、あるいは見守ってやることが大切です。いつもは無理だ!ということであれば、一つの手段として、何かしら、子ども達と話し合う機会を持って下さい。話すことがなければ、話しを聴いてあげてください。話しがないなら黙って、同じポットから注がれたお茶を飲みましょう。一緒にトランプをしたり、将棋や五目並べでもいいでしょう。特にトランプの「神経衰弱」は小学校低学年にも十分楽しめますし、大人が本気になっても、子ども達にまかされることもしばしばです。きっと、目を輝かせて、一生懸命になります。また、小学校高学年には、いろんな疑問や質問を投げかけてきます。是非とも面倒くさがらないで、真剣に答えてください。解らなければ、一緒に考えてあげましょう。また、中学生は親子で一緒にスポーツ、おしゃれ、料理などを楽しむなんていいと思いますよ。いずれにしろ、そんなちょっとのことで、子ども達の心は育っていくと思います。

Vol.3 〜子どもの心、健全な育て方〜


昨今、きれやすい少年たちとか17歳問題など色々言われていますが、その根本原因はどこにあるのでしょうか?子どもの心、健全な育て方なんて絶対的な方法はありませんが、少しでも良い方向にする方法を探ってみませんか?

今回のキーワードは、
(1)未来志向性、
(2)自己肯定視、
(3)言葉(話すこと、聞くこと)の発達、
(4)知的好奇心(知ることのおもしろさ)
(5)多くの人たちとの交流        です。さっそく子どもの心を探検してみましょう。

未来志向性とは未来に大きな夢を抱くことを指します。みなさん、昔を思い出してみて下さい。私達が子どもの頃の夢はプロ野球選手、パイロット、ケーキ屋さん、お嫁さんなどだったでしょうか? 子どもたちに将来の夢を尋ねてみてください。どんな返答が返ってくるでしょうか? 即座にサッカー選手!などと答える子どもは楽しそうでしょう。具体的な夢があることで、子ども自身やる気を持つことができます。逆に、わからないとか何もないでは困ります。将来の夢を抱ききれないのかもしれません。その時には、親自身の子どもの頃の遊びや夢などを話してあげてみませんか。

自己肯定視とは自分自身をポジテイブに(価値あるものとして)評価することです。前提として自分自身が周囲に愛されていると自覚することが大切ですが、自分自身やその行動に自信のある子ども、そして自尊心のある子どもをいいます。親はどうすればいいのでしょうか?達成感を体験させることです。家庭生活において、子どもの年齢に相応した体験、例えば、伝言、電話の取り次ぎ、お使い、風呂掃除や新聞とりなどをさせてみてはどうでしょうか? 親が全部やってはいけません。自分が何らかの役割を担うことで、家庭において、自分自身がなくてはならない存在であることが実感されることでしょう。

次にここでいう言葉の発達とは読み書きのことではありません。自分の話したいことを相手に伝える(話す)ことと、相手の話を理解する(聴く)ことを指します。学校での勉強では読み書きを重視しがちですが、本当は話すことと聴くことの方がもっと大切なんですね。きれやすい子は自己表現が不十分であり、周囲とのコミュニケーション不足が原因のひとつと考えられます。ポイントはここです。子どもが話したがっているときには、自分の手は休めて、面倒くさがらないで話し相手になることです。
あるノーベル賞受賞者のお母さんは、子どもの質問に真剣に答え、けっしてだれかに聞きなさいと言って逃げたりはしませんでした。親の真剣な対応は子ども心にもわかるのですね。真剣な親の態度に、知ることのおもしろさ、すなわち知的好奇心が育ちます。子どもの何気ない質問にも、やはり面倒くさがらないで丁寧に答えましょう。

最近の子ども達は人間関係が希薄になりがちです。交際範囲が狭いとそれだけ視野は狭くなります。逆に交際範囲が広がると考えも大きくなります。そのためには親自身が率先して、色々な人たちとの交流に心がけて下さい。忘新年会のシーズンですが、外でばかりしないで、お友達を招いて自宅でパーテイなんて、いいかもしれませんよ。
「うちもやろうよ! ねえ、かあさん!」

Vol.4 〜すてきなあなたになるために〜


不登校、学級崩壊など子どもたちの心の叫びが続く中で、県内でもとうとう悲しい少年事件が起きてしまいました。他人を攻撃したり、殻に閉じこもることでしか自分を守れない子ども、他人の痛みが理解できない子ども、相手のことなどおかまいなしで自分勝手にふるまう子ども、何か言いたいけど口を閉ざす子どもたちの増加がその根底にあると思います。 そんな現状を何とかしようと、鳥取県立赤碕高校ではコミュニケーションゲームを用いた体験学習を導入し、成果をあげています。 

その一端に触れるため、レク・リーダー養成講座に参加してきました。これは「鳥取県学校レクリエーション研究会」の主催の研修会です。本会の趣旨は、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、養護学校などの教職員をはじめ、子どもたちの「心の教育」に関心のある人を対象に、心を開き心を結ぶ人間関係作りに役立つ様々なレク財をテーマにした研修会です。様々な体験学習をしながら、子どもと向き合う私自身が気づき、学びながら人間性を高めるのが目的です。
講師はレクリエーションコーデイネーターの高塚人志さんと、ネイチャーゲーム中級指導員の小田享さんでした。高塚さんはご存じの方も多いかも知れませんが、鳥取県立赤碕高校教諭(保健体育)、文部大臣認定社会体育指導者レクリエーション・コーデイネーター、鳥取県レクリエーション協会理事長、鳥取県学校レクリエーション研究会会長などを兼任されてます。
小田さんは西部あおば幼稚園の主任保育士で、レク・インストラクター、キャンプデイレクター1級、ボーイスカウト日本連盟副リーダートレーナーなどの資格を持っておられます。
高塚さんには
1)参加者の緊張を解く数々のアイスブレーキング
2)すてきなあなたになるためにとして
  演習1「あいさつトレーニング」
  演習2「コミュニケーションのあり方を学ぶ」
  演習3「自分に気づく」、
3)クラフトに挑戦(びっくり箱を作ろう)
などを学ばせていただきました。
小田さんには、みんなでチョッと遊ぼうよ!と題して、楽しいコミュニケーションゲームやネイチャーゲームを体験させていただきました。2人とも参加者の心をぎゅ〜とつかみ、あっという間の楽しい研修でした。赤碕高校の生徒さんや西部あおば幼稚園の園児たちはきっと毎日が楽しいだろうなと、うらやましく思いました。夕食後は「子どもの瞳を輝かすために」と題して、事例報告(学校や幼稚園、保育所でのコミュニケーションゲームなどの実践)しながら、お互いを語り合いました。実際のコミュニケーションゲームについては高塚さんの著書(すてきなあなたになるために、富士書店、¥ 2,300)をご覧ください。この研修会に参加して、一方的に教えられる受動的学習と異なり、レク財を楽しみ、能動的に自分自身で気づく体験学習は21世紀の「新しい学習方法」じゃないだろうかと私自身強く感じました。教えられる授業は一時的に大脳皮質に記憶されたとしても、いずれ忘れてしまいます。体験して自分自身が気づく学習は、脳幹部にしっかりと刻まれ、その人の人格を形成する礎になると確信いたします。 
 子どもの心探検隊の冒険は今回で終わります。
最後に高塚さんの言葉で締めたいと思います。
 子どもに「こころを開け!」という前に私た
ち、親や大人がもっとこころを開かないといけ
ない。その方法の一つがコミュニケーションゲ
ームを題材とした体験学習などの取り組みです。

 すてきなあなたになるために、
 大人がこころを開き、
 子どもたちに正面から
 向き合いましょう。    
 「すてきなあなたになるために」 

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