民主主義の長所と短所

 現代人は、「進歩」の最先端にいると思うのが常であろう。しかしながら歴史を調べると分かる通り、この世の中に完全と言うものは無く、技術も制度も時代と共に変化していくものである。民主主義という制度も同様であって、決して完全なものではなく、時代にそぐわない部分は修正し改善していく必要がある。また、民度によっても最適な統治ルールは異なるというのが実相であろう。改善の程度が小さいのであればそれ程問題にはならないであろうが、改善の程度が大きい場合は、そう簡単にはいかないであろう。

 かつて韓非子はその著作の中で孔子の徳治主義を批判したことがある。それは、次のようなことである。「英邁な君主がいればそれに越した事はないが、そのような君主が滅多にいないからこのように国が乱れているのではないか。英邁な君主がいなければ成り立たないような政治のあり方を説いても仕方が無いではないか」というのである。これは、ある面での真理を突いていると私は思う。理想を目指して努力することは必要であるが、与えられた情況を踏まえ、それを与件とし、前提条件として物事を考えることが現実問題として有効であり、重要であると思うからである。

 さて、上記のことを念頭において頂いた上で民主主義を考えてみたい。先にも述べた通り、現代の民主主義は決して完成されたものではない。後世の人が見れば、非常に不完全なものであることを当然のこととするであろう。

 民主主義は、ヨーロッパの市民革命を経て市民が「獲得」したものである。それは、自由主義ということとも密接に関連し合っているだろう。国民主権というこの思想は、国家の本は人民であるので、ごく自然でありこのことは誰も異存はないであろう。そして、この国民主権に基づく民主主義や選挙制度は、暴虐な専制君主を出す可能性を消してしまったと言う面で、非常に良い制度である。だからこそ、多くの国が受け入れ発展してきたのだと思う。

 しかしながら、この民主主義はある前提の上に成り立っている。それはとりも直さず、人間中心主義というものである。人間が云々する主義(制度)なので、人間中心主義になるのは、極めて当然であるが、現代の環境問題の視点から考えると、この人間中心主義は最早受け入れられないと「地球」は言うであろう。持続可能という観点からみても、民主主義ではなくて、地球主義というレベルで論議・検討されなければならない時代になってきているのだと思う。

 もうひとつ。民主主義は「法のもとには万民が平等で、意思決定に際しては選挙権を全ての成人が持つと同時に、その選択の結果についての責任も併せ持つ」という考え方のもとに成り立っている。しかしながら、現代社会においては次のような問題点が出ていると私は考えるが如何であろうか。

 (1)現代は専門分化された社会になってきており、価値観が多様化してきている。
 (2)社会変化のスピードが激しく、世代間での価値観のギャップが大きくなってきている。
 (3)社会が巨大化してきており、問題や問題意識の共有が困難になってきている。
 (4)金権と衆愚政治の現象が出てきている。
 (5)政治家は選挙のための人気取りに注力する結果、長期的ビジョンに基づく政策を立案・実行しにくくなっている。
 (6)中央集権にて課題解決を図るので、国家としての課題解決能力が状況が求める課題解決能力に比べて弱い。
 (7)これらの結果、根本的な問題は後回しにされる傾向がある。


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中西 寛

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