人吉旅情

◇人吉城址の球磨川に面した城壁の上に(グラウンドの横)、訪れる人も少ない次ぎのような歌碑があります。

かわちどり  鳴けば見下ろす
球磨川の  瀬の音たかし

霧のそこよ李

哀浪   

 この短歌の中の「かわちどり」が実は水辺の野鳥イカルチドリだと謂われています。この歌は昭和26年3月に、人吉短歌会(遠山 隆等)の招きで佐賀から人吉やって来た中島哀浪が詠んだ歌だそうです。私には文学的な背景は何も分かりませんが、球磨川の情景がよく凝縮され表現されていると、こんな見方しか出来ません。中島哀浪はその後、人吉歌壇に大きな影響を与えた様で「球磨川の歌と歌人」(昭和46年4月発行、松尾忠風著)に書かれています。
中島哀浪(明治16.7.30〜昭和41.10.29)歌人、本名秀連(ひでつら)。前田夕暮の「詩歌」の同人。平明穏健な作風に特色があった。大正11年から「ひのくに」を創刊主宰した。「中島哀浪全集」全2巻がある。春日小学校並びに基山小学校校歌作詞。




イカルチドリ(桑鳫千鳥)鳴き声
 Long-billed Plover
 
チドリ目チドリ科 L21p 留鳥又は漂鳥。

球磨・人吉で観察されているチドリと名のつく野鳥はこの他にコチドリ(小千鳥)がいます。こちらは夏鳥ですが越冬するもいるようです。コチドリイカルチドリによく似ていて、眼の回りと首の黒い輪の部分が識別のポイントのようて゜す。イカルチドリはピォ、ピォ、ピォとよく鳴き、夜中にも鳴いています。体色が河原の石の色に似て保護色になっているので、動くか、鳴かないと見つけるのは至難の業です。水際によくいますが、黒い首輪をしているように見えます。巣の近くに人が近づくと、そこを中心に円を描くように石原の上を大きな声を出しながら走り回ります。時々、立ち止まり石の間にじっとして身をかがめては、また走り出します。飛ばずに走り回るのが滑稽です。巣の近くから離れようとしません。子育ての時期になると、可愛い仕種が見られます。複数の子供達は勝手に親から離れあそんでいますが、時折、親のところにやつて来て、親の羽の下に抱かれじっとしています。実際は何をしているのかはっきり分かりませんが、大変微笑ましい風景です。デパートなどの風景の中で、幼い子供が同じような行動しているのをみかけることがあります。スキンシップというところでしょうか。私はそのように感じました。皆さんも球磨川で鳴く千鳥の鳴き声を1度聞いてみたら如何ですか?










◇中島哀浪が郷里の佐賀で詠んだ歌がありますのでご紹介しましょう。


くすの木のわか枝ゆすりてこのあしたこゑあけやまぬかちからすあり
 《S41.1.吉  佐賀市神園4-1-3 神野公園内》

かきもくと木にのほりたる日和なりはろとしてせふり山みゆ
 《S23.10.24  同   久保泉町川久保4365 妙福寺門前》

ふるさとの帯隈山のうくひすはいまも鳴くなりそのたかむらに
 《S42.10    同     同           墓地哀浪墓裏面》

庭くまのいはよりこけのにほひつゝおのつからなる山のしつけさ
 《碑陰不明  同 八戸溝3-6-1 杵島商会裏 馬渡二郎氏宅庭内》

あけてまつ愛のもろてにさしそめし平和の光やかてあふれむ
 《S39.3     同 城内2丁目 城内公園内 図書館前庭 平和の像台石》

たなそこを合せてをれば十方にみちあふれたるみ佛のこゑ
 《碑陰なし   同  東佐賀町8-8 長専寺本堂裏》

あはずしてかへる松浦の浜松のかたむくこころとどめかねつも