【黒潮とは何か?】(その1)

 「黒瀬川」とも呼ばれ、川の流れにも例えられる黒潮ですが、川の流れとの一番の違いは、流れの方向に落差が無いことです。(しかし、水面高の高低差は、流れと直角方向にはあります!)「落差のない流れ」とは、水を掻き回した時に出来る渦流に他なりませんから、海流の本質は大きな渦の一部とも言えます。
黒潮は北太平洋の低緯度から中緯度にかけての海域を還流する海流の一部であり、北赤道海流・黒潮・北太平洋海流・カリフォルニア海流・北赤道海流と循環する巨大な渦の複合の一部なのです。

 海流は大気の循環とともに、地球表面の熱交換の働きをしています。黒潮本流自体は、水温と透明度が高いだけの栄養分に乏しい海水です。しかし、海流の流れの強さが海域によっては深層水との混合を引き起こし、豊かな漁場を生み出します
 本州の外房以南の沿岸について、「黒潮洗う岸辺」という慣用句が用いられます。しかし、文字通り黒潮本流の流れが岸辺を洗ってしまうと、海の中に海藻は育たず、本州南岸は珊瑚の海になってしまう筈です。
 正確に言うと、九州、四国、東海道及び外房の沿岸を洗うのは、黒潮本流の影響を受けた混合水の作る渦の流れです。それは一般的には黒潮分流とか黒潮分岐流と呼ばれています。渦というのは同じところをグルグルと廻り続けているように見えますが、実は少しずつ交じり合い、入れ替わっているものです。

 この海域の海流の特徴はその流路とともに、水温水質の変動の大きさにあります。黒潮本流の北側に生じる反時計回りの渦は「冷水渦」と呼ばれ、親潮の影響を受けた深層水との混合を引き起こし低水温で富栄養な水塊を造り出します。
 黒潮本流のは流軸は常に変動しています。伊豆の国の海域で黒潮本流が洗う事のある海域は、八丈島南方から式根島(新島南端)までの間です。昨年の情報では、黒潮の勢いが強いときに蛇行する傾向が強いそうです。「黒潮の勢いが強い」とは、「黒潮の流量が多い」を意味します。黒潮が蛇行しているときには、局地的には冷水渦の影響で水温が下降する海域もありますが、全般的には沿岸の水温は高めになる傾向があるようです。

(注、1999.10/14付けの海況速報では黒潮本流が新島北端まで呑込んで流れていた。そのため、伊豆半島沿岸に流入する黒潮分流の勢いが非常に強く、神子元島海域では急潮によるダイバーの遭難事故が連続した。)


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