影と死神の物語

    死の床にて、永遠を誓う二人。ああ、ロマンティック!!(いい加減にしろ瀬名)

    私はこのとき初めてキルのからだに直に触れた。
    完膚なきまでの冷たさが、私の手を焼く。
    固く瞼を閉じたキルの死に顔を見守りつつ、
    そのままゆっくり手を滑らせていくと、
    今にも彼の囁きが聞こえてくるような気がした。
    それは、生前は彼につれなかった私への恨み言だったり、
    死してなお憎くてならないあの男への罵言だったり、
    石にされたまことの主君ヴェルザーへのいたわりの言葉だったり。
    「常に動いていなければ死んでしまうような、精力的なあの方が、
    あんなおぞましい場所で身動きとれずにいるなんて、お気の毒な限りだよ」
    私がバーン様を思うのとは、多少趣きが違う。
    しかし、彼もまた主君を愛していた。

    魔界の王者、その自信が素敵!

    私もヴェルザーには何度か会ったことがある。豪放な父親の顔と、
    柔媚な母親の顔との両面を併せもつ、風変わりな魔界の竜王。
    「真竜の闘い」の折、ボリクスが断末魔の代わりに放った呪いによって、
    魔力の大半を封じ込まれた。もはやバーン様の敵ではなくなったが、
    「あやつのような者がいてくれたほうが、世の中は面白うなる。
    どんなことをしでかしてくれるか、楽しみなことよ」
    そう笑っておられた。

    今、外の世界では何が起こっているのだろう。
    ヒュンケルの足音が近づいてくる。
    光明の中の世界で、きっと私を笑っているに違いない彼ではなく、
    地獄に落ちることは私に劣らず確実な、あの小僧だ。
    おぞましい光で、今度こそ跡形も無く私を焼きに来たのだ。
    怒りとも悲しみともつかぬ激情に侵されて、
    覚えずこの身が震え出す。
    そんな私をキルはやさしく宥めてくれた。
    「恐れることはないよ。君もボクも、神々によって創られたものではない。
    何者の裁きも受けるいわれはない。
    ふたりで灰になろう」

    神は天にあり。世はすべて善し…と言ったのは誰だったか。
    今なら私も、そう信じられる。
    バーン様、もうすぐ御許に参ります。

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