科学読み物  ホーホー村教育研究所

 

地球は,青かった!2005.1

 「地球は,青かった」は,1961年4月12日、世界最初のソビエトの有人宇宙船に乗ったカガーリンの言葉です。今でも,「青い地球」という言葉が時々使われたりします。
 宇宙から見た地球は,青く見えるのです。そのことは,自分が宇宙飛行士になって,宇宙まで行かなくても,いろいろな写真や映像でも間接的に確かめることができます。
 では,なぜ地球が青く見えるのでしょう。あなたはどう思いますか? 「それは,海のためじゃない? 海が青いのだから,地球が青く見えるのは,当然」という声が聞こえてきそうです。 そうです。地球の表面は,ほとんどが海で,その割合は陸30%に対して海が70%です。海が青いのだから,地球が青く見えるのは当然です。
 しかし,ある時宇宙から撮った地球の写真をよく見ていると,青く写っているところは,海だけではないことがわかりました。地球は,陸地のところでさえ青いのです。
 写真で見る地球は,青い海,白い雲が大部分ですが,雲の間から見える陸地を良く見てみると,砂漠を除くほとんどの部分が青く写っているのです。私は,その時まで, 陸地まで青いとは,考えもしませんでした。良く見ると,青く見える陸地の部分は,緑の森林・草地で覆われた地域です。そこは,本当は緑のはずです。それが宇宙から見ると,青く見えるのです。
 なぜでしょうか? 最初,なかなかその原因がわかりませんでした。

いろいろと考えて,「それは,地球をとりまく大気,その大気が青いからだということに違いない」と思えてきました。
 地球をとりまいた大気を地上から見ると青空となって見えます。その青空は,地上から見た場合だけでなく,宇宙から地球を見た場合も,地球の大気は,青く見える。それで,本当は緑である森林の緑が青に変わって見えるのではないでしょうか?

青空の原因
 空気は窒素が78%,酸素が21%,アルゴン1%と他微量の気体との混合ガスです。空気の主成分である窒素や酸素は,フラスコなどに入れて見ると無色でが,量がとても多くなると,その色が見えてくるというわけです。
 ものの色というものは,その物自体が特定の色を持っているものではなく,そこに当たる光や,反射・吸収の仕方が変わると変わるものです。 街灯などで使われている黄色いナトリウム灯の下では,顔色などがとても変になることに気づいた方もいるかもしれません。 青空が青いのは,空気に太陽光線があたり,太陽光線の中の青い光がたくさん散らされて,その青い光が私たちの目に届くためです。 太陽光線は,いろいろな波長の光が混じっており,プリズムで分けると,赤・オレンジ・黄色・黄緑・緑・青・紫などの色に分かれます。 光は,極小さな物質にあたると,その散乱の仕方が,色(光の波長)によって違います。これをレイリー散乱といいます。空気の主成分の窒素分子や酸素分子に太陽光線があたると,このレイリー散乱が起こります。そして,光の波長の長い赤い光より,波長の短い青い光の方がたくさん散乱されます。本当は,青よりも波長がより短い紫の方がもっと散乱されのですが,人間の目は,紫の光よりも青の光の方が10倍も良く見えるために,紫ではなく青に見えるのだそうです。

山も青く見える
 網走から見る知床連峰の山々,斜里岳,藻琴山なども青く見えます。実は,これも空気の色が見えているのです。 空気は,どこにでもあるのになぜ山の部分だけ空気の色が見えるのでしょうか?
 それは,空気が散乱する青の光が,それほど強いものでないからです。空気が散乱した青い光は,その光よりも強い光が混じってしまうと,わからなくなってしまうのです。
 山の上の空や,雪が積もり白く光ったところなどは,その光が強いため,空気が散乱する弱い青の光は,見えません。青く見える部分は,緑に覆われた部分や暗い日陰の部分です。そこは,弱い光しか放っていないために,山の手前にある<空気が散乱する青い光>がはっきりと見えるのです。

空気の厚さと青み
 この<空気が散乱する青い光>は,空気の厚さがどのくらいあれば,私たちの目に感じられるでしょうか。近くの山や遠くの山を実際に見てみると,だいたい山までの距離が1q以上あれば,私には,山が青味がかって見えてきますが,みなさんは,どうでしょうか? 
 水墨画では,近くの山々,遠くの山々が墨の濃淡で描かれ,その奥行きを感じさます。
 遠近法では,手前になるにしたがって,線路や道路,電柱などが,1点から放射状の線にそって大きくなるように描かれる「透視図法」がありますが,その他にも「空気遠近法」というのがあるそうです。
 それは,遠くの景色をかすませたり,青味がかせて描くのだそうです。それは,霞や空気の青さを描いているに他なりません。
画家は,「さすがに色をよく見ているな」と感心すると同時に,<地球の空気の青さ>がすばらしい地球の風景を作り出したりしていることに驚いています。

補足

 私は,子どものころ(中学生のころ?)のころから「空の青さと夕焼け」の説明が納得できませんでした。本などに載っている説明では「空気の主成分の窒素分子や酸素分子に太陽光線があたると,このレイリー散乱が起こり,光の波長の長い赤い光より,波長の短い青い光の方がたくさん散乱される。夕陽は,青い光が散乱された残りの赤い光が届くので赤く見える」というのです。これは,一見正しそうですが,林少年は考えました。「うそだー! それにら遠くの山も赤く見えるはずでしょ。でも遠くの山は青く見えるよ。わからないよ〜。…」

それから,数十年。ある時,「遠くの山が青く見えるのは,山の光が届いているのではなくて,空気の色が見えているのではないか」というインスピレーションが起こりました。「山は,光としてみると,後ろの空の明るさを覆うもの=シルエットの役目をしているにすぎないのではないか」というわけです。そして,「海がなぜ青く見えるか」などの研究(これは,また書いていませんが,いつか書き上げたい)でも,空気の青さがクローズアップされました。そして,「宇宙夕から見た地球の青さ」を発見したときに,これらの研究が1つのものとして結びついたというわけです。

こうして出来た「科学読み物」ですが,こういう展開がよいかどうかは,わかりません。読んだ感想など聞かせてくださると嬉しいです。

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ブタンガスの爆発限界

前回、(下記)に続いて《燃焼》ネタです。《燃焼》で最後が、「付録」の〔研究問題〕を除くと、お話だけで終わっているので、ぼくには物足りなく思います。それで、ブタンの爆発の〔問題〕を加えては、どうかということです。そのために、ブタンについて研究しました。まず、〔問題〕です。

ブタン C4H10

 

[研究問題]


 ブタンと酸素とを混ぜ合わせて,爆発させることができるでしょうか?

予想
ア.爆発させることができる。
イ.爆発させることができない。
討論
 みんなの考えをだしあって,討論しましょう。

実験のやり方


 ブタンの分子1個は,炭素原子4個と,水素原子が10個でできています。それが,全部燃えると,4個の二酸化炭素と,5個の水分子ができます。そのためには,13個の酸素原子が必要です。
 酸素は,2つずつくっついてるので,ブタンガス1に対して,酸素が6くらい必要だということになります。
小さなビニール袋(5cm×10cmくらい)に

    ブタン1: 酸素6

の割合で,それぞれのガスをいれて点火してみましょう。

実験の結果
┌─────────────────────┐
│                               │
└─────────────────────┘


この実験についての解説

この答えを知っている人には、当たり前のことかもしれません。でも、ホントかな? と、ぼくは、実験してみました。結果は、見事に爆発しました。

ブタンの爆発限界

水素は、空気との混合で、4〜75%(容積) (『理科年表』調べ)という広い範囲の割合も爆発するので危険なのですが、ブタンの爆発限界は、どのくらいなのでしょう。ブタンについては、『理科年表』にも載っていないので次の様な装置で、自分で調べることにしました。

装置は、次の写真の通りです。50mlの注射器と、ガスボンベをつなぎ、容積を測りながら、ビニール袋に入れて、圧電素子の点火装置で点火します。この「気体爆発セット」は、ゴム栓の真ん中にガラス管を通し、圧電素子用の電極(ピアノ線)をつけたもので、1993年の全道教研 理科部会 で、札幌の河端さんが売っていたモノです。とても手軽で重宝しています。(このセットと同じようにものを作って、今回の《燃焼》の講座を受講してくれた方にプレゼントしました。圧電素子の点火装置は、今ならチヤッカマンの大きめの物が100円ショップで売っているので、それを分解し、ワニ口クリップを付けると簡単に作れます。わに口クリップを半田付けするのがちょっと難しい人がいるかも知れませんが、学校に2〜3人は、半田付けのできる人は、いるでしょうから頼む手は、あります)。
 

水素−酸素の場合は、2分子と1分子で、できる水は、2分子。熱膨張をかんがえなければ、体積は、減です。それでも、あれだけの爆発です。ブタンの場合は、ブタン1分子に酸素6分子で出来る分子は、二酸化炭素4分子、水分子5で、会わせて9分子で、体積増です。同量の体積でも、水素−酸素より激しい可能性もあります。

用心して、混合で110mlで実験することにしました。

@完全混合の比 ブタン20ml  酸素90ml (体積比18%) 爆発!

Aブタン40ml  酸素70ml (体積比36%)

パチパチパチと圧電素子で点火しょうとしたが、点火せず。もう一度パチっとすると、ボーッと燃えてビニール袋がススで黒くなる(上の写真のビニール袋がそれ)

Bブタン30ml  酸素80ml (体積比27%) 爆発!

Cブタン10ml  酸素100ml (体積比9%) 爆発!

Dブタン5ml  酸素105ml (体積比4.8%) 爆発せず

Eブタン15ml  酸素105ml (体積比13%) 爆発せず

Cで爆発しているのに変? この時は、Dにブタンを足したので、「うまく混合されてないからかもしれない」と予想をつけ、手でビニール袋をもんで、攪拌後点火。爆発。

結論

一連の実験から、ブタン−酸素で、10%〜30%程度でやるブタンは爆発する。

 

どちらの爆発力が強いか

続けて、水素−酸素とブタン−酸素では、どちらの爆発力が強いか、実験してみました。ブタンの爆発が大きいかもしれないので、用心して、混合体積が220mlになるようにして実験しました。家族にも聞いてもらいましたが、結論としては、耳で聞くには、大差なしです。ただ、ブタンでやると、ゴム栓につけたビニール袋の付け口が、2回とも少し吹っ飛びました。そのことを考えると、ブタンの方が爆発力が強いのかもしれません。

2003.2.10

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《燃焼》でのお話アボガドロ数の話 

2003年、冬休みに板倉さんにも来ていただいて、「北海道たのしい授業体験・入門講座」がありました。ぼくは、《燃焼》の講座を受け持たせてもらいました。その時に、「アボガドロ数の話」というお話を書いてみたくなりました。授業書の45ぺの後に入れてはどうかと思っています。内容的にもまだ見当すべきところがあるかもしれませんが、読んだ感想などを聞かせていただけるとうれしいです。


【質問】
 ビニール袋に水素と,酸素とを同じくらい入れます。ビニール袋に入っている分子は,どちらが多く入っているでしょうか?

 予想
ア.水素分子の方がずっと多い
イ.酸素分子の方がずっと多い
ウ.ほとんど同じ
エ.そんなの予想もつかない

 いろいろ意見を出し合あって,次のお話を読みましょう。

「アボガドロ数」の話
 目に見えない原子・分子の数を数えようというのですから,これは,多くの科学者たちも頭を悩まし,いろいろ議論した問題です。ところが科学者たちは,いろいろな失敗を重ねながら,おもしろい事に気がつきました。それは,水素1体積と酸素2体積を混ぜて爆発さると一番大きな音がするというのです。本当でしょうか? やってみましょう。


水素の爆発の実験
 
@水素100cm
と,酸素200cmをビニール袋に入れたもの

A水素200cm
と,酸素100cmをビニール袋に入れたもの

上の二つで,爆発の様子がどう変わるでしょうか。
 全体の気体の体積は同じ300cm
なのに,Aの方がずっと大きい爆発になりました。
 水素も酸素も普通は2個ずつくっついた分子になって飛び回っていますから,それを図に書くと次のようになります。
この図では,水素も酸素も同じ体積に,同じ数の分子があるように書いていますが,それで良いのでしょうか。
 実は,それで良いのです。水素2体積には,酸素1体積の2倍の分子あるために,全部が完全に合体し,大きな爆発になるのです。おどろいたことにその後の研究で,同じ体積にある気体の分子の数は、押し縮めたり、温度を変えたりしなければ、どの気体でもほぼ同じであることがわかったのです。

同じ体積の分子の数(1気圧, 0°C )

気  体

1cm の数

重さ

秒速

水  素

2690,0000,0000,0000,0000 個

2

1839m

窒  素

2690,0000,0000,0000,0000 個

28

493m

酸  素

2690,0000,0000,0000,0000 個

32

461m

アンモニア

2720,0000,0000,0000,0000 個

17

630m

二酸化炭素

2720,0000,0000,0000,0000 個

44

394m

重さは,1億倍の分模型の体積分、本物の分子を集めた時の重さ


 これは,とても不思議なことにも思えますが,水素のように軽い分子は,すばやく飛び回り,重い分子は,その分ゆっくり飛び回るために同じ数の分子で同じ体積を占めるのです。
 

1億倍の原子模型の大きさになるだけの分子を集めて,それを気体にすると,どの気体も,ほぼ22.4リットル の体積(縦30cm,横30p,高さ25cmの箱の大きさ)となります。
 そこには,
6000,0000,0000,0000,0000,0000個( 0が23個 = 6×10の23乗)の分子があることが分かっています。

 「同じ体積の気体には,同じ数の分子が含まれる」ということに最初に気付いて研究したのは,イタリアの科学者アボガドロ(1776〜1856)です。
 けれども,彼の考えは,彼が生きている間には,他の科学者たちに受け入れられませんでした。
 1860年にドイツでヨーロッパの化学者が140人も集まった国際化学会議が開かれました。イタリアの科学者カニッツァロ(1826〜1910)は,アボガドロの仮説の重要性に気付き,この会議で「アボガドロの考えを使うと今まで,化学者がわからなくて,いろいろと論議してきたことが,簡単に矛盾なく説明できること」を主張しました。しかし,30代半ばの若い化学者の言うことを真剣に,聞いてくれる人はほとんどいませんでした。がっかりして,カニッツァロは,会場を去りました。
ところが,その直後,カニッツァロの主張は,多くの化学者に認められることになったのです。
 彼の友人の化学者が,<1858年にカニッツァロよって,学生向けやさしく書かれた論文>をこの会議の参加者全員に配ったのです。そして,この論文を読んだ化学者のすべてが,かれの主張(アボガドロの仮説)が正しいことを理解したのです。

22.4リットル にふくまれる分子の数
6000,0000,0000,0000,0000,0000個( 0が23個 = 6×10の23乗)

 この数は,彼の名をとって,「アボガドロ数」と呼ばれています。


1)1モルの分子を集めたら1億倍分子模型くらいの大きさになるというのは、千葉の塩野さんの研究によります。

2)最後の部分、「ところが,その直後,カニッツァロの主張は,多くの化学者に認められることになったのです。
 彼の友人の化学者が,<1858年にカニッツァロよって,学生向けやさしく書かれた論文>をこの会議の参加者全員に配ったのです。そして,この論文を読んだ化学者のすべてが,かれの主張(アボガドロの仮説)が正しいことを理解したのです。」は、調べた本によって、かなり内容がちがっています。もう少し、調べたいと思っています。

3)インターネットで調べましたら、Cannizzaro.htmlというホーム・ページがあって、これはアメリカのもので英文すが、カニッツァロの1858年の論文の英語版のようなのです。それは、Il Nuovo Cimento, vol. vii. (1858), pp. 321-366 と、なっていて、45ページになるものでしたす。これは、電子コピーもない時代、謄写印刷機の時代、参加者に簡単に配られるようなものではないと思います。上の話は、・竹内均監修『世界の科学者100人』を元にしたものですが、非常に怪しいです。谷崎義衛『気体の話』では、「この会議でカニッツァーロは,アホガドロの仮説の意義を論理的に説明し,これを原則とした原子量と分子量を採用するよう訴えたが.賛否両論があり,結果として受け入れられなかった。幸運にもただ一人,その理論の重大さを認識した化学者がいた。その人はドイツの物理学者・化学者であるマイヤー(1830-1895)で,彼は1864年に『化学の近代理論』を出版し,その中で,アホガドロの仮説をもとに理論化学を展開した。このおかげで,初めてアホガドロの仮説の正しさが一般に認められるようになった。こうして化学は.実験と概念の上で,正しい方向へとその体制を整え,現代化学への確実なあゆみを進めることになった。」とあります。この方が信用できる気がします。 マイヤーについても調べなきゃ。(2003.2.8)


◇参考文献 
・竹内敬人『化学の基本6法則』(1981 岩波ジュニア新書)
・谷崎義衛『気体の話』(1983 倍風館)
・竹内均監修『世界の科学者100人』(1990 Newtonスペシャル 教育社)
・板倉聖宣『科学者伝記小辞典』(2000 仮説社)

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ロケットで,地球を飛び出すと,そこには,「太陽が出ているのに,星が輝いている」宇宙があると言われます。それでは,地上で見える青空は,どの高さまでひろがっているのでしょうか? 

 その前に,どうして空は,青くみえるのでしょう。「境界はワンダ−ランド TDK Science Information Vol.V 『青空の秘密』」 http://www.tdk.co.jp/tjdab01/dab00047.pdf に、ていねいな説明がありましたので,それを引用することにします。

 空の青さの本当の原因が判明したのは、19世紀末になってからのことです。それまでは、大気中のチリや水蒸気などの粒子が、太陽光のうち波長の短い青色の光を散乱するためと信じられていました。これは一見もっともらしい説明ですが正しくはありません。たとえばヒマラヤなどの高山では、空の色は黒みを帯びた青色となります。空気が澄んでいるほど、空の青が深まるのはなぜでしょう。チリや水蒸気を含まない液体空気も、青みがかって見えます。この問題を理論的に解明し、かつ巧みな実験によって証明したのは、物理学者レイリ−です。彼は散乱を起こす粒子が、光の波長よりも十分に小さく、かつ漂う粒子が不規則にゆらいでいる場合、波長の4乗に反比例する散乱が起きることを明らかにしました。これをレイリ−散乱といいます。青色の波長は約400nm 、赤色の波長は約700nm です。散乱の強さは波長の4 乗に反比例するので、青色の散乱は赤色の約10 倍にもなります。このため太陽の方角に関係なく、青色の散乱光が地上に届き、空は一様に青く見えることになるのです。無色透明の水もある程度の深さがあれば青みがかって見えます。これも水分子の不規則なゆらぎを原因とするレイリ−散乱によるものです。
 レイリ−(1842〜1919)は,イギリスの物理学者で,アルゴンの発見よって 1904年ノ−ベル物理学賞を受賞し,「レイリ−効果」他にも彼の名前の付いた物理現象が7個もあるほどの著名な科学者です。
 太陽の光が大気によって散乱させられることによって,青空が生じるということですが,地上何qになると,真っ暗になるのでしょうか。仮説実験授業の授業書《宇宙への道》では,「青空が見られるのは,せいぜい地表から50qまでの高さなのです」と書いてあります。この授業書には,ぼくも改訂に深く関わっています。しかし,この記述がどの程度あっているのか,確認するデ−タ−をぼくは,もっていませんでした。地球の大気の濃さは,約9qの高さのチョモランマ(エベレスト山)の頂上で,地上の1/3程度となり,呼吸が困難になってしまいます。高さ50qでは,
1/1000。 100qでは,1/100万0000 となりますが,だんだんうすくなっているものの境目を決めるというのは,難しいことです。 でも,量から質への変化というものがあります。ピタッと決まらなくても,およそこの高度になると,青空ではなくて,星空が見られるという高さがあるはずです。一番良い方法は,宇宙飛行士に聞くと良いのですが,そのことについてふれている記事を見たことが、私はありません。この時は,ロケットが上昇の時ですから,宇宙飛行士にとって,そんなことを観察している余裕がないのかもしれません。
 ひつとの方法として,人工衛星から撮した地球の写真から,そこに青く写っている空気の厚さを推定するという方法があります。写真に写っている地球の曲率から,地球の大きさを推定できれば,空気の厚さも推定でき、そこに写っている空気が青空の限界と考えて良いでしょう。しかし,地球が丸く映っている写真は,かなりの広角レンズで写したものであることが確実です。国際宇宙スティ−ションやスペ−スシャトルの飛んでいる高さは,300〜400qくらいなものです。この距離は,直線距離で、網走から函館くらいなもので,それを立てたくらいの高さを飛んでいるのです。そこは,ほぼ完全な真空(地上の1/1000,0000,0000くらい)で,太陽を遮ると星も見えるのですが,地球儀で考えると,地表すれすれのところを飛んでいるといって良いのです。それで、スペ−スシャトルや国際宇宙スティ−ションは、<空気のないところを飛んでいる高々度の飛行機のようなものだ>とぼくは,思っています。そこから,地表を広く撮るとすると,広角レンズを使うほかありません。広角レンズは,画像のゆがみをさけられません。また、薄い明かりというのは、カメラの露出によって写り方が全然ちがいます。そのためこの方法は,あまり良い方法だとは,言えません。

「薄明」を使う方法
 ふとしたことから,別の方法で,この青空の高さを推定する方法を思いつきました。それは,「薄明」を使う方法です。薄明は,太陽光線があたって,大気が光っているわけですから、大気によって、太陽光線が散乱される限界が青空の限界と考えても良いだろうというアイデアです。太陽高度が地平線下18°になると,「天文薄明終」といって,完全に薄明がなくなります。日没の時を考えると,「天文薄明終」の時,西の空のある高さより上の大気は,太陽光線が当たっても,ほとんど光っていないことになります。それは,地上何qでしょう。
それは,左の図のようにして考えると,計算することができます。(大気の厚さは,すごく厚く書いています)
図1において,Cに自分がいるとすると、
西の空に薄明がぎりぎり残っているのは、Aのところの大気が光っていると考えられます。
太陽光線は、平行光線と考えて良いですから、
C地点で太陽高度が−18°ということは、角BAEが18°ということになります。
すると、角BACは、180°−18°で、
角OACは、その1/2で、81°
したがって、角AOCは、三角形の内角の和が180°ですから、
180°−90°−81°= 9°になります。
したがって、地表Dと、大気の光っている限界の距離は、次の計算になります。
COS 9°=CO/AO    
COは、地球の半径ですから、これを1として、
AO=1/COS 9°関数計算機(技術者用に SIN とか COS とかが計算できる電卓があります)で、計算すると、
AO=1.012465
AD=AO−CO   CO=1なので、
AD=0.12465
地球の半径6370kmを乗じると、79.4kmと出ました。
これより上は、完全に真っ暗なのです。

 ただこれは、天体観測をしても明るさが問題にならないほど暗さで、実際に観測してみると、太陽高度−12°でも、西の空には、明るさが残っていますが、西の空にも星が見えるほどの暗さになります。これで、計算すると、35km程度となります。

シュチエ−ションをしてみましょう。
ロケットが発射されました。上昇するロケットの窓から見える景色は,眼下には太陽に照らされた白い雲が覆っている地球が広く見え,上を見ると,青空がとんどん濃い紺色に変わっていきます。そして,太陽がギラギラと輝いた後ろの宇宙は,真っ黒に見えます。目を凝らしてみましたが,星は見えません。…といった,感じだと思います。
 これは,ちょうど明るい白昼の外から,映画館に入ったような状態で,,しばらく目がなれないと,星は見えないのです。ロケットが80kmの高度に達するのは,発射から,ほんの数分もたっていないので,星を見ようと思ったら,地上にいる時から,暗さに目を慣らせておく必要があります。
 ロケットが人工衛星となって,地球の影の方に回り込むと,眼下には,真っ暗な地球が見え,都会の明かりがキラキラと見え,ここに来て,やっと地上では見られないほどの星々が見えるということになります。

結論 

地上から飛びたったロケットに乗って、青空がなくなり、真っ暗な宇宙についたと思う高度は、35〜80kmで、目の慣れなどを考慮すると、仮説実験授業の授業書《宇宙への道》に書いてある、50kmというのが妥当な高度といえましょう。(2003.1)

◇参考文献 :『理科年表』「標準大気の高さと気圧、気温の関係」 (丸善 2000年版 )
        鈴木敬信『天も学通論』「薄明その他」(地人書簡 1983)

 

追記 今回のスペースシャトルの事故の時は、起きていて、朝2時過ぎまで見ていました。私は、博物館で「星見会」などを開いているので、ときどき「宇宙に行きたいですか?」と聞いてくる人がいます。私は、「う〜ん。行きたいけど、宇宙船は、まだかなり危険な乗り物だからねェ〜」と答えていました。ちゃんと数えていませんが、宇宙飛行士は400人くらいで、20人くらい死んでいるんじゃないかな?
 でも、ショックです。「大きくなったら、なんになりたい?」の答えに「宇宙飛行士 ! 」というのがあってほしいな、というのが私の思いです。
火星への有人宇宙船の計画も、これでずーっと、遅れることになるでしょう。

 今回の事故が起きたのが、高度60q付近です。やはり、連続しているとはいえ、このあたりが「地球と宇宙の境目」と考えるのが妥当であるということが、確認できた事故でもありました。7人の冥福を祈ります。

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地球ってほんとにまあるいの?

「「海岸に立って,沖に向かう船を見てると,地球がまるいため下の方から見えなくなる」という話があります。しかし,板倉さんの著書『地球ってほんとにまあるいの?』(仮説社1983)20〜21ぺでは,


「そうそう〈海岸に立って沖のむこうから来る船をみると,帆柱だけがみえて,船が近づいてくると,だんだん下のほうまでみえてくる〉っておそわったわ。」お母さんがいいました。

そんなに遠いところまでみえるの?」「それに,下のほうは高い波にかくされてみえないかもしれないじゃない。」「そうそう,じっさいには見えません。じつは古代ギリシャの学者たちの説明は,すこしちがうんです。」「えっ,どうちがうの?」


「〈船が陸地に近づくとき,まず高い山の項上だけがみえる。それから船がもっと近づくと,山の中腹までみえるようになる。そしてうんと近づいてはじめて,ふもとの町までみえるようになる〉っていうんです。」
「船から山をみるのかあー それなら,よくみえるね。」「山だったら,うんと遠くからも見えますね。」「このほうがわかりやすいわ。」

と、書いています。


たしかに,古代ギリシャの学者たちの説明は,わかりやすいです。でも,ぼくは,結構見えるのではないかとずーと思い続けていました。

【質問1】波のあまり無い海岸の波打ち際に立った時,その人が見える水平線までの距離は,どのくらいでしょう。

予想

ア,50qより近い

イ,50qくらい

ウ,50qより遠い

 

実は,これは思いのほか近いのです。水平線までの距離(q)は, L=3.8√h   (hは,メートル) で計算でき,実際その程度しか見えません。

目の高さが160pだとすると,水平線までの距離は,4.8qです。立ったり座ったりすることで,水平線近くに見える船の下の部分が見えたり,見えなくなったりすることは,確認していました。

それで,船が近づいたり遠のいたりすることで,どう見えるか,実際に,確かめてみたのです。それが,上の写真です船が,左から右に動いているのをコンピュータで合成した連続写真です。この写真は,300mm望遠レンズで写しています。肉眼ではこんなにはっきりとはわかりませんが,それでも船が下から見えなくなっていることは,はっきりとわかりました。(カメラと人間の目は,すごく違います。普通のカメラでは,焦点距離が50mmくらいのレンズを使うことが普通です。しかし,50mmレンズでは,月でさえ,とてもとても小さくしか写りません。夜景で月を写したときに意外に小さいことに驚かれた人もいると思います。普通のサイズにプリントすると,月の大きさは2mmにもならないのです。野鳥などを撮るのも,目では結構大きく見えているのに写真ではゴマ粒程度にしか写らないのです。逆に広いところは,カメラにはひどく狭い範囲しか写りません。ぼくは,これを「肉眼の望遠・広角効果」と呼んでいますが,人間の目は,遠くの小さいものは大きく,広いところは,広く見えるのです。月は,手を伸ばして見た5円玉の中に入りますが,印象としては,5円玉の穴よりずっと大きく見えると思っている人がほとんどです。

 それで,小さなものを普通の人の印象に近いように写真にするには,200〜300mmの望遠レンズを使った方が,良いと考えています。上の写真は,さらに,はっきりわかるように,コンピュータに取り込んで拡大し,4枚の写真を合成したものです。よく見ると,船の煙突が最後まで見えていることがわかるでしょう。ここまではっきりとは肉眼では見えませんが,普通の視力の人ならはっきりこの形の変化がわかります。そして,双眼鏡を使うと,ほぼこの写真のように細かな様子がはっきりわかりました。

 もう少しの地球の丸みについては,研究を続けたいと思っています。研究の続きをお楽しみに!(2002.9)

 

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