醤油さし

1890円

購入日失念


 形状からすると、「醤油さし」ではなく「醤油スプレー」と云うべきか。容器のテッペンを押せば、底から中味が霧状に吹き出す。元々は減塩目的の小道具らしい。けれど、チョコッと醤油味が欲しい時にも重宝する。
 
 この商品、某消費者グループが出している月刊誌の古い号を、実家で眺めていて発見した。メーカーに問い合わせたところ、「小売店に出してはいないが、在庫ならある」とのこと。早速、注文する。
 
 

 実は、こういった道具を前々から探していた。はかせ鍋(註:『博士鍋』ではなく「スカートを履かせた鍋」からの命名)を長年使っているうちに、ますます薄味志向が進み、最近、かそけき塩味の世界に踏み込みつつあるのだ。塩分の僅かな差は、保温調理で引き出した絶妙な旨みを、活かしもすれば殺しもする。例えば蒸し魚など、うっすらと全体に掛かっているかいないかの醤油加減が、素材の持ち味を引き立てる。
 
 ただ、そんな風に掛け回すなんて不可能に近い。そこで、香水用アトマイザーなどを流用してみた。けれど、醤油によるスプリングの腐蝕や、結晶化した塩分で目詰まりを起こす心配があり、毎回、残りを抜いて洗わねばならない。薄味追求とは云え、なんとも厄介な話である。メーカーもその辺は承知しているだろうから、製品は、それらをクリアした造りになっている筈だ。そう期待して、現物も見ずにオーダーしたのだった。
 
 届いた品物は、成る程、よく考えられていた。使い心地も良く、目玉焼きなどにサッと一刷きすると結構な塩梅である。そこでこのオモチャを手に、あれこれ試してみる。
 その結果、意外な事実にも気付いた。料理によっては、味が平板になってしまう。これは道具の責任ではなく、醤油をポタポタ落とした方が味に濃淡や変化が出て、舌に楽しい場合もあるためだ。
 
 我々が日頃、単に「美味い!」と感じるものも、実は背後で働いている、様々な味の生理的メカニズムの結果なのだろう。それを再認識させてくれた点でも、買ってソンのない道具だった。