オーイ

50バーツ

04年4月16日


 オーイは、じょうご形をしたブリキ製の道具。ただし、円筒部分がやたら太く、ビール缶ほどもある。「オーイ」という名前から、あるいはラッパに似ているから、といってメガフォンではない。やっぱり、じょうごの一種なのだ。

 これは、町のお惣菜屋さんなどが、品物をビニールの小袋に移す時に使う。先ず、空缶(底が抜いてある)にビニール袋をセット。袋の口は、缶の外側に折り返しておく。そこへオーイを差し込み、レードル風のお玉でカレーなどを注ぎ入れる。最後に袋の口を小さな輪ゴムで固く縛り、金属筒から抜き取れば、テイクアウト用のパッケージの一丁上がりだ。パンパンに空気を孕ませてあるから、お豆腐のような壊れやすい具が入っていても、持ち運びに問題はない。お昼時など、居並ぶお客さんを前に、目にも止まらぬハヤワザで次々とお持ち帰りセットを作ってゆくさまは、何度見てもタメ息が出る。

 オーイの名前は、行き付けのメシ屋で絵を描いて見せて教わった。その足で、不思議グッズの宝庫ワロロを訪ねる。

 ところで、タイ語の発音は非常に難しい。5声もあり、そのヒアリングができない我々には、すべて同音異義語としか聞こえないのだ。ワロロの雑貨屋の店先に立った私は、「おーい、ガ欲シイ」と繰り返した。しかし、店のオヤジはキョトンとしている。目の前の相手に向かって、「オーイ」「オーイ」と呼び掛けるのも妙な気分だが、全く通じないのだ。仕方なく、頭の上に吊り下げられている現物を指差す。何だ、それか。だったらサッサとそう言えよ。そんな表情で、オヤジが品物を降ろしにかかる。試しに「コレハ何トイイマスカ?」と尋ねてみると、返ってきたのは、やっぱり「オーイ」 だ。 その発音は、私のそれと寸分違わぬように聞こえたのだが。

 私は、仕事場にお弁当を持ってゆくことが多い。タイの惣菜屋さんの、この小道具とゴム縛りのワザを我が物にすれば、汁物のオカズも献立に加えることが出来る。残るは、輪ゴム緊縛術。が、これは相当難しい。宿で何度も練習したが、彼らの手並みには遠く及ばない。最後の部分が、どうしてもユルユルになってしまうのだ。ものごと、ハードを手に入れるのは容易でも、ソフトの入手は一筋縄ではゆかぬ、ということか。