『くう・ねる・のぐそ』

1575円

09年01月23日


 近所の書店で探すが、なかなか見つからず、やむなく店員を捕まえて聞く。彼女はパソコンで検索し、幾つかの棚を廻り、他の店員にも訊ね、再度書架をチェックし、ついには店の奥の扉の向こうに消えてしまった。倉庫へ捜索に行ったのだろうか。ただ、それにしては長い。いいかげんシビレが切れ、半ば諦めかけた頃、ようやく彼女が戻って来た。驚いたことに、ちゃんと『くう・ねる‥』を手に持っていた。

 こういう場合、考えられる経緯は2つ。
 [その1] 店のメンツにかけて「ない」とは云えず、倉庫に行くと見せかけて裏口から抜け出し、大通りを渡ってトイメンのライバル書店で買って来た。時間が掛かったのは、一度私服に着替えたため。
 [その2] 倉庫で発見し、題名に引かれてチョイとページを開いたところ、あまりの面白さに時を忘れて読み耽ってしまった。
 
 彼女が息を切らせていないから、[その2]の可能性が高いと思われる。実際、それだけの磁力と魅力をこの本は秘めている。実はワタシも、いち早く入手した知り合いに頼んで回してもらい、既に読み終えているのだ。その後、別ルートでも1部が届いたが、こういう素敵な本は、ちゃんとお金を出して買い求め、敬意を表したくなった。そこで本屋さんを訪れた次第。

 著者で、著名なきのこ写真家でもある伊沢正名氏のお宅では、十数年前まで、10月最初の週末、きのこ狩り&料理の、それはそれは愉快なパーティが開かれていた。毎年その季節が近づくと、私も気もそぞろでカレンダーを眺めたものだ。そして宴を堪能して燃え尽きた翌朝、二日酔いのガンガンするアタマで眺める縁先に、散歩から戻った氏が「今朝もスッキリ出してきました」と、爽やかな笑顔で立たれるのも恒例だった。もっとも当時は、それが伊沢さんの体を張った思想体現であるとは知らず、私も「変わった趣味だな」くらいの認識だった。

 本書最大の「目玉」である一連の写真は、『袋とじ』になっている。「野生動物なら堂々と出すのに、ニンゲンのはダメだなんて‥」とご本人は糞懣やるかたない様子だったが、これはこれで面白い企てだと思う。今回購入した1冊は、今も綴じはそのままで、時々、天地の隙間から中を覗き見している。書名は、「くう・ねる・のぞく」じゃナイけれど。