ガラクタ屋<後編>ガス缶×3・ブランデー

578円

06年09月05日


  カセットボンベの中身が残り少なになったので、久々の晴天の下、駅南側のガラクタ屋まで足を伸ばす。入口左手の棚に、早くも1本発見。缶の錆加減を観察していると、ご主人が現れて挨拶し、私の手元に視線を落とした。そして、「お客さん、お目が高い!」とは云わず、「それなら、中にもありますよ」とクルリ背を向け、ずんずん店の奥へ入っていってしまった。仕方なく、私もその後に続く。
 先日と同じ場所で埃を被っている、錆だらけの缶を引っ張り出す。おや、この1本は中身3分の1ってトコか。ま、後は満タンのようだから、まとめて貰っておこう。顔を挙げ、御主人に訊ねる。

「これ、幾ら?」
「1本50円です」

 来る途中のスーパーマーケットのキッチン用品コーナーでは、新品が3本セットで298円だった。ってことは100円以上の得か。よし、買った! 私は、こういう時の計算だけは素早い。
 レジに、品物を持ち込む。精算を済ませ、なおも店内を物色しながら、ご主人と雑談に興じる。「それにしても色んな物がありますねぇ」と私。彼は仕入れたばかりの品物を選別しているらしく、ボロ布で軽く拭いたボトルをCD棚の上に置いた。

「なんですか、それ」
「ブランデーですね」

 そう云いつつ、彼はブツを持ち上げ、こちらに差し出した。早速、検品する。ラベルはところどころ擦り切れているものの、開封はされていないようだ。ただ、中身の量が気になった。チと少ないのではないか。古い樽詰の場合、自然揮発して中身が減るとは聞くが、ボトルでも同じ現象が起きるのか。元来、ブランデーなどに縁のない私には、判断がつかなかった。

「これって、有名な銘柄なんですか?」
「私も詳しくないんですよ」
「アルコール分が蒸発して、減っちゃったのかな?」
「どうなんでしょうねぇ」

 私は一旦その場を離れ、他のガラクタ類を眺めながら、思案する。晩酌用には「難アリ」だが、料理には使えそうだ。最近、魚介類が多いから、ちょうどよい。霧吹きに入れ、生ゴミに一吹きすれば、腐敗を遅らせることも出来はしまいか。居候先は、生ゴミを取って置き、週イチくらいの割で、借りている市民農園に持ってって埋め込む主義だ。野菜だけならともかく、煮干でダシを引いたり、料理に魚介類を使うと、そのカスが結構におってしまう。値段次第では買ってもいいな。そう決意してCD棚に戻る。

 ヒトの良くないワタシだが、さすがに今回は、「試飲して、安全確認しました?」「なに、やってないんですか。それは不安だなぁ」とは迫れないので、「栓がユルいなぁ」などと、マイナス材料の軽いジャブを繰り出しにかかる。気のせいか、ご主人の表情にまるで変化はない。400円なら、万一、ただの消毒液で終わったとしても諦めがつくな。私は腹を決め、さり気なく切り出した。

「これで、幾らくらい付けて出すんですか?」
「5、600円ですね」

 う〜む。オヤジ、客の腹を読んだな。もう一声、と迫れば、さらに100円くらい下がりそうだ。この素性不明のブランデーに、云い値通りの出費はシャクだ。ご主人の提示に私は「400円!」と返し、「いいでしょう」の即答でメデタく商談が成立した。

 帰りがけ、駅前の大手スーパーマーケットにも立ち寄らず、まっすぐ居候先に戻る。夜が耽るのを待って(別にその必要はなかったが)、開栓。ややっ、封印の細紐を外さずとも、栓が抜けてしまうではないか。やっぱり呑み残しだったとみえる。まさか、アジ化ナトウムとか、ヘンなもの投入してないよな。不安を抱えつつ呑んだ所為か、だんだん気分まで悪くなってくる。


■本日の教訓:酒を買うなら、未開封に限る。
■お詫び:ブランデー悪酔いの後遺症で、書き手のシッピツ意欲が減退しており、「後編」は「前編」のペースト&手直し、と相成りました。申し訳ありません。しかし、全て事実に基づいたレポートですので、安心してお読みください。