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テクテク歩いて、下町の喫茶店を訪ねる。ちょうどランチタイムだったが、他に客はおらず、コーヒーを飲み終わって暫くすると、心地よい睡魔が襲ってきた。そしてそのまま、少々まどろんだものとみえる。いつの間にか客が入り、その声で目が覚めた。常連らしき彼は、オーダーを告げ、「カメラ持った男が、この辺、ウロついとるな」と続けた。そう云えば、店に入る直前、三脚を担いだ女をワタシも見かけた。さては、他にもお仲間が徘徊していたのか。
ああ、という感じで、「××の取材でっしゃろ」とご主人が返す。「近所の人に訊いて回ってるんですわ」 この一言で、世情に疎いワタシも合点がいった。どうやらここは、いま世間を騒がせている、『どつき合い3兄弟』のご町内らしい。ご主人と客も彼ら一家をよく知ってるとみえ、その思い出をひとしきり語り合った。
店主の方は、話題の人物が子供の頃、何か武術を教えていたようだ。「あの頃は、すぐにメソメソ泣く弱い子でねぇ‥。そやけど、『もっとシバいたって下さい』って、お父さんが云わはるんですわ」 そう云って遠くを見る目になり、フッと我に返って、「今は、こっちが逃げんとアキマせんな」と笑った。客の男も、「地元で××を応援するモンは、もう誰もおらんやろ」と嘆息した。
ワタシは、ジワ〜っと温かな彼らの心根を感じた。それに背を向け、あの一家は増長を続けたのではないか。もし本気で出直したいと願うなら、世間の反応云々ではなく、まず地元に戻って再出発し、ここの人々に認めて貰うことを目指すべきだろう。
常連客が去り、ワタシも代金を支払って外に出た。もはやウサン臭い人たちも姿を消し、通りに昼下がりの光が溢れていた。