入選短歌集

 

 

川柳とほぼ同時に始めた歌作りです。

ここでは、毎日歌壇,角川短歌、NHK歌壇,,その他の入選作などを随時ご紹介いたします。

 

 

やはりこの花は摘まずにこの場所で風の話を聴かせてあげよう

それぞれの星にもやはりこのように星の輝く空があるのか?

このバスに乗らずに子らと語り合い野原を通って歩いて帰ろう

ペダルこぐ足がふわりと風に乗りこのまま月まで行けそうな夜

干しぶどうむさぼりながらかつて見たドラマは「愛していると云ってくれ」

できるだけ遠回りして帰りたいそんな気になる今日の夕焼け

背景をひまわり畑にして立てばば「あたしは邪魔」だと思ってしまった。

物干し場に取り残されてただ一枚月を見ている夫のYシャツ

人居らぬ夜の野道をひたすらに月に向かって自転車をこぐ

もう少し乾かしてから話します今話すには湿っぽすぎて

蜜月の桃はあるかと和菓子屋の店主に尋ねるロマンスグレー

傷ひとつなくて甘えて見える桃 傷つきすぎて触れられぬ桃

うさぎならとおの昔に死んでいるようなさみしさ抱いて眠る 

さみしくて誰かを好きになったけどよけいさみしくなってしまった 

でもやはり自分の分のさみしさは自分ひとりで面倒みよう

もう少し乾かしてから話します今話すには湿っぽすぎて

ため息でくもらせた窓に指を当て「ぎざぎざはあと」の模様を描く

 

 

これ以上あなたを好きになるまいと赤いりんごを「まふたつ」に割る

お別れに沈む夕日が空を染める色とおんなじルージュをください

君のこと思い描けば切なくて一番赤い口紅をさす

 

完全にフリーズドライ化されていて湿っぽくなどならない想い出

もう君は思い出したりしないでしょうりんごを見ても私のことなど

この日記開けばいつも思い出す最後の二行が消されたわけを

西日入る部屋の片隅で君からの手紙の最後の一行を読む

縁日で救われるのを待っている金魚に似たる我の日常

 病室のベッドの上で窓ガラス一枚分の青空を見る

その部屋で私は日ざしを待っていたそれでも窓はどこにもなかった

点描画描くかのようにポツポツとアスファルトの上振り出した雨

 

三日分のやりきれなさもゴミと共に袋の中に押し込みたい朝

なぜこんな惨めなほどに荒れるまで気づかなかったと自分の手を見る

いやこれが私の手だほんとうの私の手だ生きてきた手だ

あの鬼の営業部長の二番目の引出しの中のドロップの缶

虹色のビー玉コロコロ転がっています私の想い出の坂

 

「おかあさんきょうボクはじめて聴いたんだ風に打たれて草が泣くのを!」

「おばあちゃん怒らないので好きだけど怒ってばかりのお母さんも 好き」

書きかけの途中で消されたその文字はまだ旧姓に戻る前の姓

海よりも空が好きだと云ったのは落下する夕方の華子

神様を読めば私の心までふはふはかるく透明になる

少しだけ開けた窓から真夜中の闇がこっそり忍び込んだよ

 

だけどもう心の中で錆びついたナイフがあえて研がずにおこう

 

真夜中に不意に目覚めてまだここは現世なのかと寝返りを打つ

 

面倒だ面倒だと言いながら結構一生懸命生きている

 

七色の蛍光ペンを陽にかざし机上に作る私だけの虹

 

この缶のオレンジ味のドロップの数だけ私の幸せがある